中森さんと初めてのダンジョン①
支店長室から出た僕達は、ダンジョン入口に向かう。
僕が先頭で、次が中森さん。
そして、中森さんの後をスノーがついてくる。
ダンジョン入口で探索者カードを出し、中に入れてもらう。
「君達は、その格好でダンジョンに入るのか?」
係員さんが聞いてくる。
うん。
何時も通りの会話だ。
「そうです。1階の草原しか行きません」
僕は答える。
「そうか、ダンジョンは何が起こるか分からないから、気を付けて行くんだよ!」
係員さんが、ゲートを開けてくれる。
僕達はゲートを抜けて、1階の草原に出た。
そして、道を逸れて、右側の小高い丘に向かって歩く。
スノーが走りまわっている。
広い場所で思い切り走れて嬉しそうだ。
丘を越えた、いつもの場所に到着する。
いつもと言っても、今日で2回目だけど…
「中森さん、JOBを得たとき、召喚魔法を覚えた?」
僕が聞くと中森さんが頷く。
「まず、召喚が出来るか?やってみよう。僕の精霊と違い、中森さんの獣魔を学校に連れて行けないから、いざと言う時に召喚が出来ないと困る。だから練習してみよう。最近は物騒な事件もあるし」
中森さんは「分かった」と言い、スノーに少し離れた場所に行くよう指示を出す。
そして「召喚」と唱える。
まず、スノーが居る場所に魔法陣が現れ、スノーが魔法陣に吸い込まれる。
そして、中森さんの近くに魔法陣が現れ、魔法陣の中からスノーが飛び出して来て、中森さんのところに走って行き、体を中森さんに擦り付ける。
どうやら実験は成功だ!
僕の精霊達は、基本的に僕から離れないから、僕も召喚をしたことが無い。
精霊達も興味津々で、ずっと見ていた。
次に、白玉の実験だ。
まずは、結界を張ってもらう。
支店長は防衛が得意だと言っていたが、攻撃の話はしていなかった。
白玉が張った結界の中に入ろうと、スライムが結界に当たっては弾かれる。
僕が「結界を2枚張り、結界でスライムをサンドイッチに出来ないか?」と言う。
中森さんが白玉に指示を出す。
すると、新たにもう1枚の結界が現れ、結界が移動しスライムが潰れて魔石になった。
今度も成功だ!
実験も終わり、僕達はレジャーシートを地面に広げてそこに座り、水筒のお茶を飲む。
精霊達とスノーはスライム狩り。
まだ、下位精霊のビオラが、今日は張り切っている。
やはり、アネモネとフリージアが中位精霊に進化したから、気にしてるのかな?
スライムが木の影に入ると、下から影の刃がスライムを倒す。
いつもは精霊1体は、必ず僕の側にいる。
3体のうちの誰かが僕を守る。
でも今日は、防衛のスペシャリストの白玉がいるから、精霊達は僕から離れた場所で狩りをしている。
お腹が空いたので、昼食を食べることにする。
中森さんのお母さんが、サンドイッチを作ってくれた。
レジャーシートの上にサンドイッチと水筒のお茶。
美女と2人切りで食べる。
何だかカップルみたいだ。
うん。
今日も中森さんは美人だ。
2人でのんびりしてると、誰か来るとアネモネから伝わってくる。
人が動けば風が揺らぐ。
アネモネは風の動きを敏感にキャッチする。
それから少し時間が経って、スノーが道路側を見る。
スノーも犬?だから?音や気配に敏感みたいだ。
「何だ?ここはピクニック会場か?」
健太さんが笑う。
今日はここでスライム狩りをすると、伝えておいたから、健太さんが迎えに来てくれた。
荷物を片付け、魔石をリュックサックに入れて、健太さん達のパーティーと一緒にダンジョンの出口に向かう。




