中森さんのJOBはテイマーだった④
支店長は、タメ息をついてから話し出した。
「その魔獣はフェンリルと言う。討伐記録も世界で2件しか報告されていない、希少で強力な魔獣だ」
「そーなんですね!スノーは強いんだ!」
中森さんは、嬉しそうだ。
支店長は、机の上に手を置いて、人差し指がコツコツと机を叩いてる。
リズムを取ってるのかな?
そう思っていると、支店長が僕を見る。
「おい、拓哉。お前卵を2個持ってたよな?」
支店長が聞いてくる。
僕は2個とも彼女に預けたと答える。
すると支店長の顔が彼女の方に向く。
「もう1匹は、この子です!凄く臆病な子で、知らない人の前だと、すぐに隠れちゃうんです」
と言って、ボストンバッグのファスナーを開ける。
すると、白玉はボストンバッグから顔だけ出す。
「この額の宝石が綺麗なんですよねー」
中森さんが言う。
それを見た支店長は、またこめかみを押さえた。
暫く沈黙が続く…
「その魔獣はカーバンクルだ。魔獣なのに聖魔法(光魔法)が使えて、傷を治したとの報告例もある。それから、強力な結界が使える。ドイツの探索者パーティーが討伐を試みて、何度も攻撃したが、結界を破れず、討伐を断念した」
支店長は、カーバンクルの写真も撮りたいと言う。
中森さんは、白玉をボストンバッグの中から出し、自分の膝の上に座らせる。
支店長は、写真から中森さんは消し、白玉だけに加工すると言って写真を撮影した。
「お前達、この後どうするんだ?」
支店長が聞いてくる。
「彼女の魔獣達を連れ、ダンジョン1階の草原でスライム狩りをする」と答える。
「そうか…」と支店長は言い、天井を見上げた。
何か、悩みがあるのかな?
僕達はそっと部屋を出て、ダンジョン入口に向かった。




