支店長は胃が痛い①
俺が仕事をしていると、職員が俺の部屋に駆け込んできた。
「どうした?何があった?」
職員によると、若手の有力パーティーがダンジョンで魔物と戦い、何とか魔物を倒したが、パーティーリーダーが重傷。
他のメンバーも、かなりの深傷を負っていると説明を受けた。
これは不味い。
俺はロビーに向かって走った。
重傷を負ったリーダーは担架に載せられ、血だらけだ。
しかも、左腕を切断されていた。
それ以外のメンバーも血だらけで、かなりの深傷を負っていた。
「医者を連れて来い!」
支店に隣接した場所に設置されている診療所には、医者が常駐している。
すると、若い男が俺に切断された腕を持てと言う。
こいつは、何を言ってるんだ?
だが、その男は、腕の骨同士をくっ付けて何か一人言を言った。
すると、左腕を光が包み込み、次の瞬間、切断されていた腕が元どおりになっていた。
俺は夢を見ているのか?
その後も、その男は怪我を治してゆく。
俺はその光景を呆然と眺めた。
そして、全員の怪我を治し終わり、何処かへ行こうとするその男を捕まえて、支店長室に連れて言った。
その男は、白石と言うFランク探索者だった。
自分は精霊使いで、精霊の力で怪我を治したと言う。
精霊使い?探索者協会では、正式に認められていないJOBだった。
俺は本部に連絡を入れる。
しかし、精霊なんて存在しないと言って、誰も信じてくれない。
俺だって、自分の目であの光景を見なければ、信じなかった。
でも、実際に怪我が治っている。
医者がレントゲンを撮ったり、診察したりしたが、怪我を負った形跡が確認出来ないと言っている。
俺は、その場にいた探索者一人づつに聞き取りを行い調書を作成。
本部に提出した。
本部の常務から電話があった。
俺が書いた報告書が常務に回覧されたらしい。
常務は、精霊なんて存在していない。
君は働き過ぎだ。
暫く仕事を休んだらどうだ。
そう言って、まったく聞く耳を持たない。
それでも、俺は諦めず説得を続けた。
証人が何人もいると。
最終的に「光の精霊である可能性があるもの」と言う文言で決着した。
拓哉は、光以外に闇と風の精霊も使役してると言っていた。
目に見えない物を証明するのは、困難だ。
どうすれば、あの天下りの常務を納得させられるんだ?
あ~胃が痛い。




