正木君VSスライム。
僕は今日、1人でダンジョンに来ている。
理由は簡単だ。
スライムに復讐する為だ。
見てろよ!スライム!!
毛根の怨みをはらしてやる!
僕がロッカールームで装備を身に付けていると、他の探索者達の話し声が聞こえてきた。
「おい!聞いたか?カッパの勇者の話を…」
カッパの勇者?
何の話だ?
僕は聞き耳を立てる。
「何でも、勇者パーティーのリーダーの頭が、カッパみたいにハゲてるらしいぞ!」
「そうなのか?」
「ああ、何でもスライムを頭の上に乗せてて…髪の毛どころか、毛根まで溶かされたらしい…」
「だから皆が、カッパの勇者って呼んでるんだ!」
「じゃあ、頭の上にズラ被ってるのか!?」
「マジか!はっはっはー!」
「笑い過ぎて、お腹が痛いぜ!」
…誰だ?僕の秘密をばらしたのは…
トップシークレットだぞ!!
何で知ってるんだ?
…チキショー!!
僕は、こっそりとロッカールームを出た。
そして、ダンジョンゲートへ向かう。
怒りで頭が沸騰しそうだ。
ゲートを抜けて、ダンジョン地下1階にやってきた。
スライムめ~!
みんな奴らのせいだ!
皆殺しにしてやる!!
★★★★★
その日、1日中スライム狩りをした。
広い草原地帯を歩き回り、狩って狩って、狩りまくった。
そして、僕は最後の1匹を刈る。
ふふふ。
遂にやったぞ~!
僕は憎っくきスライムを遂に殲滅した。
皆殺しだ!
これで、このダンジョンに来ても、2度とスライムを見る事は無い!
僕は遂にやり遂げたのだ。
ふふふ。
自然と笑みが溢れる。
麻袋を見ると、かなりの魔石が貯まっていた。
1日掛けて、ダンジョン地下1階のスライムをすべて殲滅した。
今日の僕の成果だ!
…カツラ代の足しにでもするか…
ダンジョンゲートを出た僕は、他の探索者達に見付からない様、こっそりとロッカールームに駆け込む。
私服に着替えた僕は、帽子を深く被り家路に付いた。
★★★★★
正木君は忘れている。
ダンジョンは午前零時になると、討伐された分だけ、新たに魔物が産み出される事を…
正木君は忘れている。
探索者協会の新人研修に参加し、説明を受けていた事を…
そして、正木君は知らない。
光の精霊なら、失われた毛根を元通りに復活出来る事を…
正木君は知らない。
拓哉が契約している精霊の中に、光精霊フリージアがいる事を…
★★★★★
翌日、僕は学校を休んだ。
誰も居ない公園のベンチに座る。
ヤバい…このままでは、パーティーメンバーに、僕がハゲた事がバレてしまう。
どうする?
ダンジョンの場所を変えるか?
でも、それでは、美鈴さんに会えなくなってしまう…
それに、闇精霊使いの白石を倒すのは、女神様から与えられた僕の試練だし…
僕は、どうすれば良いんだー!
僕は、あてもなく歩く。
ここは…
辿り付いた場所は、美鈴さんが通う高校の正門だった。
美鈴さんは、授業を受けているのかな?
そんな事を考えていると、背中に冷たいものが走る。
何だ?
僕が後ろを振り返ると、老紳士が立っていた。
この人は…確か…美鈴さんの執事さんだ。
先日も美鈴さんと一緒にいた。
「この学校に御用ですか?」
言葉遣いは優しいが目が怖い。
この人は、怒らせてはいけない人だ。
僕の直感がそう告げている。
「何でも無いです…」
僕は、そう答えて、また、歩き始めた。
歩きながら考える。
僕がハゲた事は何れメンバーにバレる。
だから正直に話すか?
いや…正直者が馬鹿を見ると言う言葉もあるし…
僕は、どうすれば良いんだー!!
ふと気付くと、近くに教会が見えた。
そうだ!
僕は今まで1度も祈りを捧げた事が無い。
だから、女神様が怒っているのかも知れない。
うん。
きっとそうだ。
そうに違いない!
ここは主人公が、神に感謝を伝える場面だな。
僕は初めて教会の敷地に足を踏み入れる。
教会には、牧師さんがいた。
僕が祈りを捧げたいと話すと、心良く中に入れてくれる。
そして僕は、神に祈りを捧げた。
ふふふ。
これで大丈夫だ。
女神様が僕に救いの手を差し伸べてくれるに違いない!
ヤル気が漲る。
白石拓哉…
お前を倒すのは、この僕だ!
そしてヒロインを救い出すのも、この僕だ!
今にみてろよ!!




