美鈴には見えている②
私と拓哉さんは、久しぶりにピクニックをする事にした。
ピクニックと言っても、遠くに出掛ける訳では無い。
いま、私達が住んでいる天空の城から下に降りるだけだ。
ダンジョンスタンピードが、何時起こるか分からない。
だから遠出は出来ないのだ。
私達が城の下の草原に降りる。
すると拓哉さんが「見通しの良い丘のところへ行こう」と言って私の手を握る。
そして2人で歩き始める。
丘の上に着くと拓哉さんが「アンバーお願い!」と言う。
するとアンバーが土魔法を発動して、丘の上を平らにしてくれる。
私達は収納袋からレジャーシートを取り出し、草の上に敷いた。
暫く2人でのんびりしていると、人が近付く気配がした。
私がスノーを見ると、寝たままで、耳だけピクピク動いていた。
どうやら危険は無い様だ。
私達は後ろを振り返える。
男性3人と女性2人の5人組だった。
リーダーらしい若い男性が「勇者パーティージャスティスだ!」と名乗る。
そして、この場所を明け渡せと言う。
何て傲慢で偉そうな人なんだろう。
私は嫌な気分になる。
私は、正木と名乗るリーダーを見る。
すると、黒いオーラを発しているのが見えた。
私が黒いオーラもあるんだ?と思い、彼の事を観察すると、顔や体の一部を黒いベタベタした物が付いていて、背筋に冷たいものが走った。
拓哉さんがジャスティスのメンバーと話をして、一緒にスタンピードを見張る事になった。
私は追加でレジャーシートを敷く。
そして私の横に女性2人が座った。
女性達とお喋りが始まった。
静香さんは私と同じ年でJOBがシーフ。
そして梓さんは1つ年下で、付与魔法師さんだそうだ。
3人でお喋りしていると、私の体に異変が起こる。
急に鳥肌が立ったのだ!
ビックリした私は、嫌な気配がする方を見ると、そこには正木君がいて、私と目が逢う。
正木君が慌てて視線を外すと、私の鳥肌が治まる。
やはり、あの黒いベタベタものが関係しているのだろうか?
それとも黒いオーラ?
後でバッハに聞いてみよう。
私がそんな事を考えていると、大慌てでアネモネが拓哉さんのところに飛んで来る。
そして新しく繋がったダンジョンの方を指差した。
何かが来るのかな?
そう思っていると、ビオラとアンバーも同じ方向を指差した。
何か異変が発生したみたいだ。
私は念話でバッハに伝えると「既に控えております」と言う。
私が振り返ると、何時の間にかバッハ達が私達の後方に控えていた。
ヨモギもバッハ達と一緒に来たみたいだ。
拓哉さんがヨモギに「ダンジョンスタンピードが発生するから、支店長に伝えて来て!」と言う。
ヨモギは「分かりました!」と言って、ダンジョンゲートに向かって走って行った。
★★★★★
拓哉さんの指示を受けて、私達だけでダンジョンスタンピードを抑え込む事に成功した!
黒蜜ちゃんが大活躍だった!
後でいっぱい撫でよう!
ビオラが大きな木の影に討伐した魔物の魔石やドロップアイテムを集めてくれる。
本当に拓哉さんの精霊達は優秀だ。
後の処理は、バッハがやってくれると言うので、私と拓哉さんはアネモネの風魔法で天空の城へ戻り、一休みする事にした。
アリアがお茶とシュークリームを出してくれた。
暫くすると、バッハが戻って来る。
拓哉さんはソファーに寝転び、スノーをもふっている。
私は正木君の事をバッハに話す。
するとバッハが「その黒いものは邪気ですな…邪気が固まったのだと思われます」
「邪気?」
「はい。拓哉様は光。正木様は闇の存在で、2人は相反する関係です。きっと正木様は、心の中に大きな闇を抱えているのでしょう」
「光の気を放つ拓哉様は、彼の事を何とも思っていない様子ですが、邪気を放つ正木様は、拓哉様に良い感情を懐かず、敵対心を懐く事でしよう。闇は光が苦手ですから…」
「しかし拓哉様には精霊達がいますから心配はないでしょう。それより美鈴様の事が心配です。女神のJOBをお持ちですから…」
「どう言う事?」私はバッハに尋ねる。
「今までの私の経験では、そう言う人間は、自分を救って欲しいと、無意識のうちに縋るものなのです」
「美鈴様は女神のJOBをお持ちですから、そのJOBに引かれてしつこく付きまとってくる可能性が御座います。この世界では何と言いましたか…確か…ストーカーでしたか?」
「でも、私は女神のJOBを得ただけの、ただの人間だから、私には正木君を救う事なんて出来ないよ?」
「はい。その通りです。しかし彼にはそんな事は関係無いのです。本人が無意識のうちに女神のJOBに執着するのですから…」
「そして自分のとって都合の良い理論を用いて、自身の正統性を主張するのです。周りの人達が聞いて、理論破綻していようと、本人には関係ありません。だから厄介なのです」
「我々も注意を払いますが、美鈴様もご用心下さい」
★★★★★
先日、仲良くなった梓ちゃんから、1度で良いから探索に同行させて欲しいとお願いされた。
なんでも、正木君が良い気になってるから、ギャフンと言わせたいらしい。
支店長からも、同じ様な事を言われいたのを思い出した。
私は拓哉さんに相談する。
本当は正木君には会いたくないけど、梓ちゃんや静香さんの為に、1度だけと条件を付けて私達の探索に同行させる事にしたのだった。




