ダンジョンスタンピード
暫くすると、支店長が探索者達を引き連れて走って来る。
「拓哉!スタンピード発生って本当か?」
「はい!支店長。僕の精霊達が右側のダンジョンから、魔物が来ると言ってます!」
魔物が動けば風が揺らぐ、風精霊のアネモネは風の動きを敏感にキャッチする。
多くの魔物が移動すれば地面が揺れる。
土精霊のアンバーは、地面の揺れに気付く。
魔物が動けば影も動く。
多くの影が1度に動けば、闇精霊のビオラが必ず気付く。
3体の精霊が言っているから間違いない!
支店長は「そうか!おい、お前達!大量の魔物が来るから準備しろ!」
「Sランクパーティーのサンライズが魔物を討伐する!お前達は、その撃ち漏らしの対処を頼む」
「いいか!絶対にサンライズの前には出るなよ!サンライズが魔物を殲滅するから、その邪魔だけはするな!」
「みんな!よろしく頼む!!」支店長が大声で叫ぶ。
支店長がヘルメットを被っているのを久しぶりに見たな~
そんな事を考えていると、勇者君が「チッ!」舌打ちしたのが聞こえた。
「僕が活躍出来ないじゃ無いか!…女神様の…」
何か?ぶつぶつと一人言を言っていた。
彼は、自分の事を「僕は勇者だ!」と連呼するので、僕は彼の事を【勇者君!】と呼んでいる。
おっと!いけない。
そんな事より、作戦を伝えなければ。
僕は美鈴さんに作戦を伝える。
まあ、作戦と言っても陣形を決めるだけだけど…
「美鈴さん!魔物が来たら僕の精霊達と騎士達を半分づつ左右に展開する」
「バッハ達には正面を担当して貰いたい。なるべく魔物が中央に密集する様にして欲しい。そこを黒蜜のブレスで攻撃!この作戦でどうかな?」
すると美鈴さんが「分かった!拓哉さんの言う通りにするね!」と笑った。
うん。
笑った顔も可愛いな~って、そんな場合じゃ無かった!
僕がバッハ達を見ると彼らも頷く。
「スノーと白玉。それとヨモギは僕達の護衛を頼むね!」
「はい!マスター任せて下さい!」ヨモギもやる気満々の様だ。
それから僕は、アネモネに天空の城へ行き、風の上位精霊にも伝える様に頼む。
まあ…絶対に気付いていると思うけど、念の為だ。
それに事前に話しておけば、援護も期待出来る。
僕達が打ち合わせをしていると、後ろから声がした。
「魔物なんて来ないじゃないか!」
勇者君が、いちいち文句を言ってくる。
僕は無視して、ダンジョン右側に意識を集中させた。
★★★★★
それから暫くすると、地響きが聞こて来る。
支店長が大声で「来るぞー!」と叫ぶ。
僕は騎士達を召喚する。
「ルービンシュタイン達は右に。ブーニン達は左に展開!精霊達と一緒に、魔物が中央付近に密集する様にしむけてくれ!」
「黒蜜のブレスで攻撃の予定だ!だから巻き込まれない様に注意してね!」
僕達そう言うと、騎士達と精霊達が左右に別れて進んで行く。
騎士達が剣で魔物を倒し、撃ち漏らしを精霊が倒す。
なかなか良いコンビネーションだ。
魔物の大群が、だんだん僕達に近付いてくる。
バッハ達が僕達の前に立つ。
バッハが空間魔法を展開し、中から大剣を取り出した。
アリアも大鎌を出す。
アニメ番組で、死神が手にしていた大鎌に、そっくりなやつだった。
魔物の魂でも刈り取るのだろうか?
ドヴォルザークやチャイコフスキーも、剣を手にしていた。
スノーも巨大化する。
…スノー!こんなに大きくなっていたのか!
僕はビックリした!!
知らないうちにスノーが成長し、更に大きくなっていた。
僕は気配を感じて上を見る。
天空の城から、風の精霊達が出撃しているところだった。
風の精霊達が空高く飛び、飛行系の魔物を殲滅して行く。
空から魔石が降ってくる。
それを見た美鈴さんが「キラキラして綺麗だね!」と言った。
風精霊達が味方してくれているから、制空権はこちらにある。
うん。
良い感じだ。
僕が草原を見ると、だんだん魔物が中央付近に密集して行く。
僕は美鈴さんに声を掛ける。
「美鈴さん!そろそろだよ!」
美鈴さんは頷き「黒蜜ちゃん!」と叫ぶ。
すると天空の城から黒蜜が出撃した。
美鈴さんが「黒蜜ちゃん!ブレスで攻撃!!」
ゴ~!ゴ~!!
黒蜜の口からブレスが吹き出す。
黒蜜も成長し、ブレスの攻撃力が上がったみたいだ。
辺り一面が炎で包まれた。
何も見えない。
やがて、地面に放たれた炎がだんだん下火になり、視界が良くなってくる。
辺り一面が魔石だらけだった。
僅かに残った魔物も、騎士や精霊が倒し、やがて魔物は居なくなった。
「お~!やったぞ~!!」後ろから歓声が響き渡った。
僕達が居る丘を下った大きな木が生えている木陰に、次々に魔石が現れては積まれて行く。
昔、美鈴さんと2人でピクニックした場所だ。
闇精霊のビオラが魔石を集めてくれていた。
「ビオラ!ありがとう」僕はお礼を言う。
バッハが「拓哉様・美鈴様。魔石は我々が換金しておきます。お疲れでしょうから、美鈴様と一緒に天空の城でお休み下さい」と言う。
今回は支店長が一緒だから、報告に行く必要もない。
僕達はバッハの言う通り、天空の城で一休みする事にした。
美鈴さんが黒蜜を呼ぶ。
「黒蜜ちゃん!おいで~」
僕達が黒蜜に乗って、天空の城へ向かおうとしたタイミングで勇者君が「何で!何も無い場所に魔石が現れてんだ?」と疑問を口にする。
普通の人間には精霊が見えない。
だから、不思議だったみたいだ。
それと僕の方が年上だけど、どうやら僕に敬語を使う気は無いみたいだ。
僕は「闇精霊が影魔法を使って魔石を集めてくれたんだよ!」と簡素に話す。
勇者君は何か考えている様で、それ以上は何も言って来なかった。
僕達と美鈴さんは、黒蜜の背中に乗って天空の城に飛んで行った。




