アイドル誕生!?
今日は、学校が休みだ。
季節外れの風邪が流行り、学級閉鎖だと学校から連絡があった。
裏山ダンジョンのスライム狩りは、毎日、妹の瑞穂が討伐してくれる。
探索者になる為の訓練だ。
先日、様子を見に行った。
1度に3本の矢を産み出し、3ヵ所の別々の目標に命中させる程の腕前になっていた。
これなら、来年、探索者デビューして、僕達のパーティー入りしても、問題無く連れて行けそうだ。
それにサンライズは、間違いなく過剰戦力だ。
瑞穂が危険なめに合う事も無いだろう。
暇をもて余した僕は、縁側で寝転び日向ぼっこをする。
精霊達が畑作業をする様子が見える。
畑作業の指示役はヨモギだ。
毎朝、アリアが移転門で、天空の城から連れて来る。
植物の精霊?だからか、植物の事が良く分かる。
ヨモギの指示で、土精霊のアンバーが畑から雑草を抜き取る。
どちらかと言うと、地面から根っこごと押し出す感じだ。
次に風精霊のアネモネが、畑の角に雑草を吹き飛ばす。
光精霊のフリージアが光を当てて、乾燥させる。
火精霊のダリアが乾燥した雑草を燃やす。
風精霊のアネモネが、風で灰を吹き飛ばす。
そして土精霊のアンバーが、畑の中に灰を隙き込む。
最後はルピナスが、畑の水撒いた。
先日は、母がホームセンターで買ってきた、石灰を畑に撒いていた。
惜しい…あれだけ畑をやる気満々だった、母の姿が見当たらない。
先日、僕が「母さん、畑をやるって言ってなかった?」と聞いたら「料理の下拵えで忙しいの!」と言い返されてしまった。
1ヶ月ほど前に、母が念願の古民家食堂をオープンさせた。
母によると、昼しか営業していないのに、大盛況だと言っていた。
僕は普段、学校に行ってしまうから、営業している所を見た事が無い。
こんな田舎の辺鄙な場所で、お客が来るものなのか?
丁度良い機会なので、今日の昼食は母が経営する古民家食堂で食べる事にした。
★★★★★
昼前になり、僕は隣の古民家食堂に向かった。
何だ?
これは、いったいどう言う事だ?
食堂の入口にお客が行列していた。
僕はお客を観察する。
6割りは地元のお爺ちゃん・お祖母ちゃん達みたいだ。
残りの4割りは、若い男達だった。
何処かで見た事のある男が数人いた。
確か…ダンジョンで見た気がする。
多分、探索者達だ。
男達が食堂の中を覗き込み「アリアさん、可愛いな!」とか「クール美人だ!」とか「俺と付き合ってくれないかな~」
「お前じゃ無理だ!釣り合わない」とか、いろいろ言っていた。
成る程…この男達は、アリア目当てで来ているのか…
アリアが元悪魔だと知っている人間は、僕と美鈴さん。
それと、一部の探索者協会の職員さん達だけだ。
確か…美鈴さんが、女神のJOBを授かった時、悪魔から天使に変わったハズだ。
でも、アリア達は、美鈴さんにしか忠誠を誓っていない。
余計な事はしない方が良いが、何があっても自己責任だ。
それに、知らぬが仏と言う言葉もある。
僕は、彼等の夢を壊さない為、余計な事は言わない事にした。
少しだけ空いてきたので、僕は入口から店の中を覗き込む。
接客をしているのは、ヨモギだった。
「いらっしゃいませ!」
水を持って行き、注文を取る。
「ヨモギちゃん!今日もお手伝いかい。偉いな~」と言って、お爺ちゃんがヨモギの頭を撫でる。
「ヨモギちゃん、飴あげる!」
ヨモギは、お祖母ちゃんから飴を貰っていた。
僕が知らないうちに、ヨモギはお爺ちゃん・お祖母ちゃん達のアイドルになっていた!
次に僕は、店の裏口に回り、静かにドアを開けて中を見る。
母が一生懸命に料理を作っていた。
アリアが料理の材料を準備したり、ヨモギが下げてきた皿を洗ったり、会計をしている。
アリアが小さな声で、ひとり言を言っていた。
何を言っているんだろう?
やはり、母から手伝わされて、怒っているのかな?
僕が、そんな事を考えていると、僕の気持ちを察したのか?
アネモネが風魔法で、アリアの声を僕の耳まで運んでくれた。
「探索者の男達…マジでウザイ!」
「早く死ねば良いのに!」
「死んだら魂を地獄に投げ込んでやる!」
…僕は、静かにドアを閉めた。
自宅に戻った僕は、戸棚から非常食として備蓄していた、カップ麺を取り出す。
僕がヤカンを手に取ると、ルピナスが水を入れるくれる。
レンガで囲んだ場所にヤカンを置く。
ダリアが火魔法でヤカンを温めて、お湯を沸かしてくれる。
そして僕は、1人でカップ麺を食べた。




