引っ越し。
春休みになった。
健太さん達は、高校を卒業して、引っ越し準備中だ。
まず、僕の母達が東京から引っ越してくる。
午前中に東京の家の荷物をトラックに載せる。
そして翌日の午前中に、僕の隣の家に荷物を搬入する。
母達の引っ越し荷物の搬入が終わったら、その日の午後に中森家に行き、今度は健太さんの引っ越し荷物を積み込む。
引っ越し荷物の積み込みが終わったら、東京に向けてトラックが出発するそうだ。
帰りの荷物が確保出来き、トラックが何も積まず、空荷で帰らないから効率が良い。
だから母が、引っ越し屋さんと交渉して、引っ越し代金を値引きしてもらったと、妹の瑞穂が言っていた。
健太さんも、母さんが交渉したから、引っ越し屋さんに手配を頼む手間もかからず、代金を割引してもらって助かったと言っていた。
母達は、午前中に荷物を搬出したら、電車でこちらに向かい、駅からタクシーで我が家に来るそうだ。
そしてその日の夜は、我が家に泊まり、翌日の午前中に引っ越し荷物の搬入だ。
今回は、ちゃんと僕に連絡が来た。
それと、メールで買い物リストが…
夕食は母が作るらしい。
そこで僕は、自転車に乗ってスーパーで買い出しをした。
買い出しが終わり、僕が家で待っていると、母と瑞穂が到着した。
夕食は、野菜のかき揚げをのせた蕎麦だった。
久し振りに3人でお喋りをしながら夕食を食べる。
翌朝、瑞穂が僕を起こしにきた。
「お兄ちゃん!弓の練習するって言ったでしょ!早く起きてよ!」
「お兄ちゃんが居ないと、裏山ダンジョンに入れないの!」
学校が春休みなのに、朝早く起こされてしまった。
僕は仕方なく、瑞穂を連れて裏山ダンジョンに向かう。
ダンジョン入口をアンバーに開けてもらった。
バッハが用意し、美鈴さんと瑞穂にあげようと相談していた、ウエストポーチ型の収納袋を瑞穂に渡す。
「この中に、瑞穂の装備一式と、弓が入ってる」
「後で、ちゃんと美鈴さんにお礼を言っとくんだぞ!」
「うん!分かった!」
「スクロールは美鈴さんが、説明してから渡すので、この中には入れていない」
瑞穂は、収納袋から弓を取り出す。
「JOBのお陰かな?何となく使い方が分かる!」
そう言って、瑞穂はスライムに向かって弓を構える。
すると…あら不思議!自動的に魔法の矢が具現化する。
最初は上手く命中しなかったが、5匹…6匹とスライムを倒して行くと、段々命中率が上がって行く。
そして、最後の1匹は、1発でスライムに命中!
「やったよ!お兄ちゃん!」
瑞穂が嬉しそうで何よりだ。
僕はアンバーに「これから毎朝、瑞穂がスライムを倒すから、瑞穂が来たらダンジョン入口を開けてね!」と言う。
するとアンバーが、うんうんと頷いた。
「さあ、これから部屋で装備を着けなくっちゃ!」
「瑞穂。探索者登録するまで、ダンジョン探索は出来ないぞ?」
「そんな事、分かってるよ!美鈴さんが着てるの見て、格好いいな~と思ってたんだよ~」
「だから部屋で着てみて、自分の姿を鏡でチェックするの!」
「そーなんだ」
瑞穂が嬉しそうで、何よりだ。
別に、今日すぐに着る必要は無い気がするが、瑞穂にあげた物だし、瑞穂の好きにさせる事にした。
朝食を食べ終わり、暫くすると引っ越し屋さんがやって来た。
何か?手伝う事があるかも知れない。
だから僕も隣の家に向かった。
しかし…すべて引っ越し屋さんがやってくれるので、やる事が無い。
母から邪魔だと言われた僕は、一人で自分の家に戻り時間を潰す。
昼前に引っ越しが終わったらしく、トラックが走り去るのが見えた。
母が作る昼食を食べた僕は、自転車で中森家に向かい、東京に旅立つ健太さんを美鈴さんと一緒に見送った。




