拓哉は魔剣を手に入れる。
僕達は、スノーが引っ張るロープに掴まり、先に進んで行く。
暫く進むと、広い場所に到着した。
部屋の奥に祭壇みたいな場所があり、宝箱が鎮座していた。
美鈴ちゃんが「見て!宝箱があるよ!」と嬉しそうに言う。
バッハが祭壇に向かって歩き出す。
そして、宝箱の前で立ち止まる。
罠が無いかな?調べてくれているんだろう。
バッハが振り返り「美鈴様。罠は無い様です」と言う。
僕が隣にいる美鈴さんを見ると、嬉しそうに笑った。
僕達は宝箱に向かって歩き出した。
そして、宝箱の前まで進む。
美鈴さんが宝箱を開けた。
僕も一緒に宝箱の中を覗き込む。
宝箱の中に剣が入っているのが見えた。
美鈴さんが、宝箱から剣を取り出そうとしたが、手が剣から弾かれた。
何だか剣が美鈴さんを拒否しているみたいだ。
剣を扱うJOBが無いから手が弾かれたのかな?
そこで「僕が取り出すよ!」と言って、僕が宝箱の中から剣を取り出した。
聖剣フラガラッハの時とは違い、ちゃんと鞘の中に収まっている。
僕は鑑定をしてもらう為、剣を鞘から抜く。
バッハが「魔剣です!」と言う声が聞こえた。
バッハの声が聞こえた瞬間、急に目の前の景色が変わった。
僕は荒れ果てた荒野に立っていた。
そして、僕の目の前に美人がいる。
黒い髪に黒い瞳。
真っ黒い服を着た美人さんだ。
西洋人かな?
でも、黒目・黒髪の西洋人って珍しいな。
僕がそう思っていると、その美人さんが話し出した。
「私の姿を見ても平然としている…お前は何者だ!」
「そう言われても困るけど…僕の名前は白石拓哉」
「君の名前は?」
「あっはっは…これは愉快」
すると、美人さんが笑い始めた。
僕は黙って様子を見る。
「我の名はティルフィングと言う」
「人は我の事を魔剣と呼ぶ」
「そなたは、土精霊の加護を受けているな?」
「加護?そんな物を受けた記憶は無いけど…でも、土精霊と契約しているよ!」
「そうか…我には土精霊の呪いが掛けられておる。3度願いを叶えると死ぬ呪いだ。しかし、そなたには呪いが効かない様だ」
「土精霊と契約しているからか?はははっ…面白い。それにそなたから聖なる気配はを感じる」
「勇者のJOBがあるからかな?」僕は言う。
「良かろう。そなたなら、我を使いこなせるに違いない!主人と認めようぞ!」
目の前の美人さんがそう言うと同時に、僕の目の前から消えた。
「拓哉さん!大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ!」
僕が答えると美鈴さんが、安心した顔になる。
美鈴さんが剣を鑑定する。
そして「この剣は魔剣のティルフィングって言うみたい」
「土精霊を脅して、無理やり創らされた剣だから、土精霊の呪いが付与されてる」
「だから、絶対に使ったらダメだよ!」
「何処かに封印しよう!」
「あ~それなんだけど…僕は土精霊と契約してるから、呪いは効かないらしいんだ…」
「だから、心配しないで!」
「そうなの?」
僕は、先ほどの美人さんとの間に起こった話を美鈴さんに話した。
するとバッハが「なるほど…拓哉様は土精霊のアンバー殿と契約しており、アンバー殿は拓哉様が大好きなのですな~」
「だから、土精霊の加護を拓哉様に与えた。更に拓哉様は、勇者のJOBもお持ちです」
「勇者は邪を払う存在。従って心配は無用と思われます」
バッハがそう言うと、美鈴さんが安心した表情になった。
僕は手に持っていた魔剣ティルフィングをポーチ型の収納袋にしまう。
さて、戻ろうか?
僕が言うと、バッハが転移門を開いてくれた。
僕達は、転移門を抜けて、岩壁の穴の前に戻った。
僕が精霊達に「まだ、何かある?」と聞くと、精霊達が首を横に振る。
「よし、もう何も無いみたいだから、10階の入口まで行ってから、戻ろうか?」
僕がそう言うと美鈴さんが頷く。
「黒蜜ちゃん、お願いね!」
僕達は、黒蜜の背中に乗って、ダンジョン地下9階の入口付近まで戻り、そこから通路を抜けて、ダンジョン地下10階の入口に足を踏み入れる。
これで、次回の探索は、ここからスタート出来る。
「さあ、もどろうか」
僕がそう言うと、バッハが転移門を開く。
僕達は、ダンジョン地下1階の天空の城に戻った。
僕は聖剣に続いて魔剣まで手に入れてしまった。
聖剣は勇者JOBをもつ人しか持てないし、魔剣の方は僕以外の人が持つと呪われる。
間違えて他の人が触れたりしない様に、ウエストポーチ型の収納袋に入れて、僕がしっかり管理する事にした。




