精霊?それとも魔物?
精霊達が指を差した方向を見ると、手入れをされていない森だから、木々が邪魔で、とても歩けそうに無い。
そこで美鈴さんが黒蜜を召喚する。
魔法陣の中から黒蜜が出てくる。
黒蜜が美鈴さんの前までゆっくり進み、頭を下げる。
美鈴さんが黒蜜の頭を撫でながら「黒蜜ちゃん、お願いね!」と声を掛けた。
黒蜜がゆっくりと体を動かし背中を向ける。
僕達は黒蜜の背中に乗った。
僕は騎士達に「現地に着いたら召喚するから、そのまま待機してて!」と言うと、騎士達は片膝を地面に付けて、頭を下げた。
この森の中を騎士達と一緒に歩いて行くと、相当時間がかかるから、現地に着いたら召喚する。
その方が、効率が良い。
黒蜜が音も無く、ゆっくりと上昇する。
そして精霊の後を飛んで行く。
暫く飛んで行くと、精霊達が下を見ながら、何だか慌てている。
何かあるのか?
僕は精霊達が見ている方向に顔を向ける。
小さな岩が何個かあり、その岩の周りをウルフ達が取り囲んでいる。
獲物が岩の間に逃げ込んだのかな?
でも、何で精霊達があんなに気にしてるんだ?
うん。
きっと何か理由があるハズだ。
さて、どうするか?
開けた場所が狭くて、黒蜜は降りられない。
まあ、無理に降りて、木々を薙ぎ倒しても誰からも、誰からも怒られない気がするが…
「美鈴さん!ちょっと僕は、下に降りてみる」
僕がそう言うと、美鈴さんが「気を付けてね!」と言う。
僕がアネモネに「アネモネ!お願い!」と言って、黒蜜の背中から飛び降りる。
すると、僕の体がアネモネの風魔法でゆっくりと地面に向かって降りて行く。
スノーが「ワン!」と鳴き、僕に向かってジャンプ!
僕は、慌ててスノーを抱きしめた。
そしてスノーをもふる。
僕が、もふもふしていると、僕の体が地面に着地する。
スノーが僕の手から飛び出して、地面に着地。
そして小型化のスキルを解くと、みるみるうちに巨大化する。
そして「ワォーン!!」と大きな声で鳴いた。
すると、岩を取り囲んでいたウルフ達が一斉に地面にお腹を付けて、伏せをした。
僕のすぐ後ろにバッハが着地する。
美鈴さんの騎士ドヴォルザークとアリアは、上空で美鈴さんと一緒に付近を警戒している。
精霊達が岩に近付き一斉に指差す。
うん…やはり何かあるみたいだ。
僕はウルフの横を抜けて、岩に近付き目を凝らす。
あれは…
小さな人形みたいな者?がうずくまっていた。
妹が子供の頃、遊んでいたリ○ちゃん人形みたいだった。
瞳も髪が薄く透き通る様なグリーンだ。
僕が眺めていると、バッハがやって来る。
そして「お~!これは珍しい。ドライアドですな」
「ドライアド?」
「はい。植物の精霊と言う人もいれば、魔物だと言う人もいる。そう言う存在です」
精霊?なら契約出来るかな?
僕は精霊使いのJOBを持ってる。
今までも、妖精と何度も契約してるし…
僕は試してみる事にする。
「僕と契約してくれる?」
すると、ドライアドがうんうんと頷く。
人間の言葉が分かるみたいで良かった!
「君の名前はヨモギだよ!」
僕がそう言うと頭の中に機械的な声が響く。
《ドライアドヨモギとの契約が成立しました》
その声が響くと同時にヨモギが光り出す。
そして光が収まると、ヨモギが大きくなっていた。
小学生位かな?
人間そっくりな女の子になっていた。
バッハがアリアを呼ぶ。
「アリア。ヨモギ殿を天空の城にお連れし、身嗜みを整えてなさい」
「はい。承知しました」
「では、ヨモギ様、こちらへどうぞ」
アリアが転移門を開く。
ヨモギが僕を見る。
「ヨモギ。行っておいで」
僕がそう言うとヨモギは頷き、アリアの後を付いて転移門の中に入って行った。
何も着てない小さな女の子をこのまま連れて行く訳には行かない。
誰かに見られたら、僕が変態かと思われてしまう。
アリアさんなら、きっと似合う服を用意してくれるハズだ。
魔石を売ったお金もまだあるはずだ。
さて、後はウルフ達だ。
僕達はお金に困っていない。
無理に討伐する必要もない。
だからウルフは討伐しない事にした。
僕が小型化したスノーを抱くと、アネモネの風魔法で、体がゆっくり上昇して行く。
バッハも僕と一緒に飛行魔法で上昇する。
僕が黒蜜の背中に乗ると、美鈴さんが「新しい精霊?と契約出来たんだね!」と喜んでくれた。
そして黒蜜は、また、精霊達の後を飛び始めた。




