バッハは、支店長達を地下8階へ案内する。
私の名前はバッハ。
先日、美鈴様と拓哉様がダンジョン地下8階の探索をなさいました。
探索が終わると、探索者協会の支店長にダンジョン地下8階の報告に向かわれたのです。
報告を聞いた支店長が「調査したいから連れて行ってくれないか?」と言いました。
現地の案内等の為に、美鈴様を2度も同じ場所に行かせるなど、あってはなりません。
美鈴様は、まだ、学生であり、土曜日しかダンジョンにやって来られないのです。
美鈴様の貴重な時間が潰されてしまいます。
美鈴様には、新たな場所を探索して頂き、宝箱を開けて頂かなくてはなりません。
美鈴様は、宝箱を開けるのが大好きなご様子。
臣下として、主人の手足となって働く事は当然の事です。
そこで、私が支店長達をダンジョン地下8階へ案内する事になったのです。
支店長室で待ち合わせをした私は、探索メンバーが揃っているのを確認して、転移門を開きます。
転移門を見るのが初めてだったらしく、支店長達が驚いていました。
しかし、転移門は撮影しないそうです。
今まで確認されていないスキルを撮影すると、研究所の人達がやって来て、ややこしい事になるからだそうです。
それに、私が人間では無い事が知れると、もっと面倒になるそうです。
だから支店長が撮影禁止にしました。
正直、私にはどうでも良い事です。
ダンジョン地下8階へ転移すると、ワニの魔物が守っていた池に行きたいと言われます。
宝箱が開けられて、あの場所にはもう無い事を確認したいそうです。
ダンジョンの地図に記載された内容と違う場合は、書き直しが必要だそうです。
そこで私は、再び転移門を開き池の近くに案内します。
不思議な事に、あれほど汚れていた池の水が、透き通る程の綺麗な水に代わっていました。
恐らく宝箱を守るワニの魔物を隠す為に、濁った水になっていたのかも知れません。
しかし、今は宝箱は無く、従って宝箱を守るワニの魔物もいません。
私は池の畔へ向かい、池を覗き込むと、池の中に魚の魔物が見えました。
15cm程の大きさの魚の魔物です。
支店長達が、ドローンと言う機械を操作し、上空から撮影をしています。
そして、宝箱が無くなった事を確認した支店長が「戻ったら、大至急、地図を書き直そう」と言っていました。
暫くして、調査が終わった支店長が、次の場所まで案内して欲しいと言います。
そこで私は、転移門を開きます。
門を出ると、目の前に岩があります。
私が「この岩を押すと、地下への通路が現れます」と告げます。
すると、支店長の部下の人が、再びドローンを操作して、辺り一面の撮影を行います。
それが終わると次は岩です。
支店長が岩を押すところを職員が撮影します。
そして、岩の下から出てきた通路を進んで行きます。
暫く進むと広い空間に出ました。
ここから3方向に道が別れます。
支店長達は、美鈴様達と同様に左の通路から調査をする様です。
カメラを持ち、撮影しながら進みます。
ドローンが上空から撮影します。
通路を進むと拓哉様が付けた、罠の目印が確認出来ました。
支店長達は、罠を避けて進んで行きます。
そして、ボス部屋へ到着しました。
しかし、ボス戦は行わないそうです。
「それは、探索者の仕事」と支店長が言っておりました。
この場所の撮影が終わったので、私は転移門を開きます。
そして、広い空間に戻りました。
支店長は、明確な目的を持って行動しているのが分かります。
次に支店長達は、まん中の通路を進みます。
しかし、途中で沢山の蟻地獄に行く手を阻まれました。
すると支店長は、無理に進むのを断念しました。
ドローンからの撮影だけにしたのです。
支店長の目的は、ダンジョンクリアではありません。
自身の目的を達成する事を優先する。
やはり、優秀な人の様です。
ドローンは蟻地獄を抜け、ボス部屋の中を無事に撮影出来ました。
次は右側の通路です。
通路を進むと、左右に蛙の石像が見えます。
毒蛙です。
拓哉様の報告をしっかり聞いていた支店長は、それ以上先に進まず、ドローンを使って奥のボス部屋の撮影をさせました。
私もドローンから撮影された画像を見せて頂きましたが、この場所は一定の時間を空ければ、また、ボスが現れる様です。
宝箱が大好きな美鈴様に報告しなければなりませんね!
こうして、ダンジョン地下8階の調査が終了したのです。




