ダンジョン地下8階の探索を終える。
カマキリの魔物を倒した僕達は、バッハの転移門で黒蜜が居る広い場所に戻る。
「黒蜜ちゃん。外に出たら、また、召喚するからお願いね!」
美鈴さんが言うと、黒蜜が頭を下げる。
美鈴さんが黒蜜の頭を撫でた。
「それでは、外への転移門を開きます」
バッハが魔法を発動し、目の前の空間に門が現れた。
僕達は門を抜けて外に出る。
地面から1m位飛び出した岩の前だった。
美鈴さんが黒蜜を召喚する。
魔法陣の中から黒蜜が現れた。
僕は精霊達に「まだ何かある?」と聞くと、精霊達は首を振る。
「美鈴さん。もうこの階層には何も無いみたいだよ」
僕が言うと「じゃあ、今日の探索は終わりにして戻ろうか?」と美鈴さんが言う。
僕達は、ダンジョン8階を抜けて、9階の入口まで行くことにした。
9階の入口まで行っておけば、次回はバッハ達の転移門で直ぐに行く事が出来るからだ。
美鈴さんが「黒蜜ちゃん。お願いね!」そう言うと、黒蜜が背中を向ける。
僕達は、黒蜜の背中に乗る。
僕達を乗せた黒蜜が、ゆっくりと上昇して行った。
黒蜜がゆっくりと空を飛ぶ。
赤茶けた大地が続く。
暫く進むと、草が少しだけ生えた場所に魔牛の大群がいるのが見える。
うん?あれは…
「美鈴さん。あそこに居るのは、健太さん達じゃない?」
美鈴さんが上空から見下ろす。
「本当だ!お兄ちゃん達だ!」
「黒蜜ちゃん!暫く上空で待機して!」美鈴さんが言うと、少し離れた場所を黒蜜が旋回する。
健太さん達の魔牛狩りの邪魔をしない様に、黒蜜が気を使っているみたいだ。
黒蜜は、本当に頭が良い。
健太さん達は、どうやって狩りをするのか?僕も興味がある。
上空の特等席で見学だ。
健太さん達は、体を低くしながら、ゆっくりと近付いて行く。
そして、メンバーの人が、群れの外側にいる1頭に狙いを定める。
手に持っているのは西洋風の弓だ。
そして矢を放つ。
矢は魔牛のお尻に突き刺さった。
すると、お尻が痛かったのか?魔牛の頭がゆっくりと後ろを向いた。
するとメンバーの1人が立ち上がり、魔牛を挑発した。
怒った魔牛が挑発したメンバーを追いかける。
なるほど…ああやって1頭だけを群れから引き離すのか…
魔牛に追われたメンバーが、ジャンプした。
魔牛はそのまま突き進む。
魔牛の前足が地面に落ちる。
落とし穴を掘っていたみたいだ。
両前足が落とし穴に落ちた魔牛が、必死に立ち上がろうともがくが、穴に前足が落ちていて、支える物が無いなら立ち上がれない。
隠れていた健太さんが走り出す。
そして、魔牛の大きな体に連打を浴びせる。
何発も健太さんのパンチを受けた魔牛が、光の粒子になって消えた。
無事に討伐したみたいで一安心だ。
黒蜜が魔牛を刺激しない様に、少し離れた場所に着地した。
「お兄ちゃん!無事に魔牛が倒せて良かったね!」
「なんだ。美鈴か。こんなところで何やってんだ?」
「8階の探索を終えて、拓哉さん達と戻るところ」
「そうか。じゃあ、先に戻っていてくれ。俺達はもう少し狩りをして行くから」
「うん。分かった!」
「あっ!お兄ちゃん!良い物があるんだ」
「さっき手に入れたの。拓哉さんと相談して、お兄ちゃんにあげようってなったの」
「はい。どうぞ!」
「何だ?グローブか?」
「そうだよ!攻撃力が上がるグローブだよ!使ってね!」
美鈴さんがグローブを渡す。
「おお!ありがとう。早速使わせてもらうよ!」
健太さんが嬉しそうだ。
健太さんと別れた僕達は、ダンジョン8階の入口付近に到着した。
「美鈴様。拓哉様。私が転移門を開きますので、先に戻りましょう」
バッハがアリアに「アリア。さっきの話を聞いていましたね」
「私は美鈴様達と先に戻ります。アリアはダンジョン地下9階の入口まで行き、転移門を開ける状態にしてから戻ってきなさい」
「はい。承知しました」アリアが頭を下げた。
バッハは伯爵級の悪魔で、アリアは男爵級悪魔だった。
やはり、階級が違うからか?それとも執事とメイドだからか?バッハの方が偉いみたいだ。
「それでは、天空の城へ転移門を開きます」
僕達は、バッハが作った転移門を抜けて、一瞬で天空の城に戻ったのだった。




