再び天使達を呼び出す。
いま、職員さん達は、天空の城にある、僕の部屋の撮影をしている。
支店長は、ベランダに出て外を見ながら溜め息を付く。
今回の調査で報告する事が盛り沢山で、本部に提出する書類だけでも数日かかるらしい。
僕の部屋の撮影が終われば、今回の調査も終了だ。
美鈴さんが僕の部屋に入ってきた。
「拓哉さん、荷物整理は終わった?」
「うん。いまさっき終わったところ」僕は答える。
支店長が背負うリュックサックに保管してくれていた僕の荷物を、部屋のテーブルの上に出してもらい、僕はアイテム別に部屋の収納スペースにしまった。
「それじゃあ、休憩しよう!」
そう言って、美鈴さんがお茶の準備を始めようとする。
そこで俺は閃く。
執事さんやメイドさんに頼めば良いのでは?
アニメ番組で、執事さんが懐中時計で蒸らし時間を見ながら、お茶を入れている場面を見た記憶がある。
それに、ご用があれば何なりとお申し付け下さいって、執事のバッハが言っていた。
「美鈴さん。執事さん達に頼んでみれば?」
「…大丈夫かな?」
「駄目なら召喚を解除すれば良いし、それにきっと美鈴さんの役に立ちたいと思っているかも知れないよ」
「…うん。そうしてみる」
美鈴さんは、巾着袋から召喚カードを取り出す。
そして、カードを右手で持ち「召喚」と言う。
カードが光りの粒子になって消える。
そして美鈴さんの前に光りの粒子が集まる。
光りが収まると、4人の天使達が現れた。
バッハが1歩前に出て「お呼びですか美鈴様」と言う。
美鈴さんが「休憩したいんですが、お茶を入れてもらったり出来ますか?」
「はい。もちろんで御座います」
それを聞いたアリアの前に、黒い雲のような空間が現れる。
アリアが、その黒い雲みたいな空間に手を突っ込み、そして引き抜くと手にはテーブルクロスが握られていた。
その場面を見た僕達は、全員が固まる。
何が起きたんだ?
僕が、そう考えていると、バッハが「空間魔法を見るのは初めてですか?」と聞いてくる。
僕達は、全員で首を縦に振る。
「そうですか。我々は異次元空間に物を収納する事が出来るのです」
そう言って、バッハは自分の前に出来た黒い雲みたいな場所に手を突っ込み、ポットやティーカップを取り出した。
コックのチャイコフスキーが「調理場を確認しても良いですか?」と聞いてきた。
僕は「この城は、風の上位精霊が支配している城で、僕と美鈴さんは、このフロアーだけ借りているんです」と話す。
するとバッハが「精霊に挨拶が必要ですな。では、お茶を入れたら挨拶に行って参ります」と言った。
僕達は、バッハが入れてくれたお茶を飲む。
うん。
香りも良くて、とても美味しい。
美鈴さんの斜め後ろにアリアが立ち。
アリア以外の3人が「それでは、精霊に挨拶に行って参ります。何かご用があればアリアにお申し付け下さい」
そう言って、3人は部屋から退出して行った。
暫くして、3人が戻ってきた。
「美鈴様。精霊と話し合い、精霊達が使っていないスペースは、我々が使って良いと許可を頂きました」
「代わりに、この城が攻められた場合は、我々も城の防衛に協力する事になりました」
「また、何時でも、美鈴様が快適に過ごして頂ける様、準備を致したく」
「付きましては、我々にダンジョン内の魔物を討伐し、素材を売却。そして、売却で得た資金を使い、必要な物資の調達をしたいのですが、よろしいですか?」
美鈴さんが僕を見る。
僕が首を縦に振る。
すると美鈴さんが「許可します」と答えた。
僕が補足説明をする。
「ダンジョンの浅い階層は、新人探索者が魔物を倒す訓練をしています。だから、狩り過ぎないで欲しいです」
「それから、ダンジョン地下3階に水精霊が支配している湖があります。定期的にそこへ行って、水精霊が倒した魔物の魔石を回収しています」
「その回収した魔石を探索者協会に売却しているので、もし良かったら、その売却益を使っても良いですよ」
「承知しました。他の探索者に迷惑を掛けない様に、資金調達を致します」バッハが言った。
そして、その話を聞いていた支店長が、探索者カードを作ってくれる事になった。
支店長も、人間以外にカードを作るのは始めてだが、人間以外にカードを作ってはいけないと言う規定は無い。
だから、大丈夫だ。
多分…
バレなければ良いんだ。
魔物?には見えない。
どう見ても、人間にしか見えないし…
ぶつぶつと、一人言を言っていた。




