拓哉の召喚カード
美鈴さんは、気持ちを落ち着けるため、深呼吸をしていた。
落ち着いたのを見計らって、美鈴さんに僕が選んだ召喚カードの鑑定を頼んだ。
「拓哉さん。このカードは12人の騎士を召喚するみたい」
「まず召喚したら、隊長と副隊長に名前を付けて眷属化する」
「それ以外の騎士は、隊長と副隊長の眷属になっているから、隊長と副隊長だけに名前を付ければ良いみたい」
なるほど。
僕は召喚カードを手に持ち、そして「召喚」と唱えた。
僕が手に持つカードが光り、そして粒子になって消える。
すると今度は、目の前に光が集まり出す。
光が収まると、美鈴さんが言った通りに、12人の甲冑を着た騎士が立っていた。
兜を被っているから、顔は見えない。
隊長と副隊長だけがマントを羽織っている。
裏地の色が違い、隊長のマントの裏地は赤色。
副隊長のマントの裏地は青色だった。
騎士達が一斉に片膝を付いて頭を下げた。
《隊長と副隊長に名前を付いて下さい》
僕の頭の中に機械的な声が響く。
美鈴さんは、作曲家から名前を付けていた。
そこで僕は、ピアニストから名前を付ける事にした。
隊長はルービンシュタイン。
副隊長はブーニンだ。
騎士達を見ていた美鈴さんが「拓哉さん。騎士さん達の甲冑も、剣も盾も、ミスリル製で魔法が付与されてる」そう言った。
剣に魔力を込めると物理攻撃以外に、魔法の斬撃を飛ばしたり、魔法攻撃も可能な様だ。
そして「隊長と副隊長だけは、ミスリルとアマダンタイト?と言う金属の合金製らしい」
聞いた事のない金属だ。
僕が契約している精霊達は、魔法攻撃オンリーで、物理攻撃が出来ない。
だから、今までそれが弱点だった。
僕がチェンジのスキルを使って、何とか対応していた。
物理攻撃も魔法攻撃も、両方とも出来るなら大助かりだ。
僕は相性の良いカードが引けたみたいだ。
やったね!
暫く待っていると、支店長達の調査も終わったみたいだ。
支店長達によると、僕達が通って来た砂の滝ルートは、隠し通路らしい。
本来のルートは、このダンジョンの最下層に居ると思われるダンジョンボスを倒す。
何故?思われるかと言うと、今まで誰も、このダンジョンボス部屋まで辿り着いていないからだ。
そしてダンジョンボスを倒すと、ボス部屋に設置してある魔法陣が動き出す。
その魔法陣の中に入ると、この部屋にある魔法陣の中に移転される。
そして、この部屋の中にダンジョン裏ボスが召喚され、裏ボスを倒すと、この部屋の1番奥にある魔法陣が動き始める。
今はこの段階だ。
そして、裏ボス初回討伐特典があると言う事は、正規のルートを通ると、また、裏ボスが召喚されてくるだろうと話していた。
その後、皆で話し合い、魔法陣の中に入ってみる事になった。
職員さん達が録画機材等をリュックサックにしまう。
全員で魔法陣の中に入る。
一瞬で景色が変わった。
…うん…見た事のある景色だ。
「何処だ?ここは?」
「下の方に草原が見えるぞ!」
「随分、高い場所みたいだ」
「おい!あそこを見ろ!城があるぞ!」
職員さん達が言う。
僕は支店長に「ここはダンジョン地下1階にある天空の城です」と説明した。
「ここが、風の上位精霊が占領している天空の城か!」
支店長も驚いていた。
美鈴さんが、黒蜜を召喚する。
魔法陣の中から黒蜜が出てきた。
美鈴さんが「黒蜜ちゃん!ご苦労様」
そう言って、黒蜜の頭を撫で撫でする。
支店長が「拓哉。この天空の城は、まだ、調査が出来てない。だから、このまま調査出来ないか?」
「僕が風の上位精霊に聞いてみます」
そう言って、歩き出そとすると、職員さんが「待って下さい!まだ、撮影の準備が出来ていません!」と言う。
「美鈴さん。僕は先に行って、風の上位精霊に会ってくるから、後から皆を連れて、城の正門まで来てくれる?」
「うん。分かった!」
「支店長。ここは城の真裏です。この反対側に正門があります」
「僕は先に行くので、後から美鈴さんと一緒に正門前で待っていて下さい」
「僕と美鈴さんは、城内の立ち入り許可をもらっていますが、支店長達は許可が無いので、勝手に入ると精霊から攻撃される恐れがあります」
「だから、僕が呼びに行くまで、入らないで下さいね!」
僕は支店長に、そう声を掛けてから、雲の大地を歩き出した。