巨大なミミズ?
精霊達が先頭を飛ぶ。
スノーや白玉と同様に、黒蜜にも精霊が見えている様だ。
黒蜜は、精霊達の後を付いて飛ぶ。
僕が下を見る。
地面に黒蜜の影が映っていた。
でも、精霊達の影は無い。
精霊は、普通の人には見えず、日に当たっても影も出来ない様だ。
黒蜜がゆっくりと飛んで行く。
顔に暑い風が来ないから、黒蜜が魔法を発動しているのかな?僕がそんな事を考えていると、美鈴さんが持つバッグから白玉が出てきた。
白玉が外に出てくるなんて珍しいな~
僕がそう思っていると、白玉が鳴いた。
白玉が出て来るのも珍しいが、鳴くのはもっと珍しい。
珍しい事もあるな~と僕が思っていると、黒蜜が急に上昇する。
どんどん高度が上がって行く。
精霊達が下を見ている。
何か?あるのか?
僕も下を見る。
すると、黒蜜の影の中から巨大なミミズが飛び出して来たのが見えた。
巨大なミミズは、口を開けていて、鋭い歯がびっしりと生えている。
そして、体中がネバネバしていた。
それを見た美鈴さんが「キモい!」と言い顔を背ける。
どうやら、地面の中に隠れていて、獲物が通り掛かるのを待ち伏せしていたみたいだ。
僕達も空を飛ばず、地上を歩いていたら、危なかったかも知れない。
あの巨大な口で丸飲みされていたかも知れないと思うと、ゾッとする。
水精霊のルピナスは、魔法で水を生成する。
逆にあの巨大なミミズから、水分を抜き取ったり出来るのかな?
僕がルピナスに聞くと、ルピナスは、うんうんと首を縦に振り、巨大なミミズに向かって飛んで行った。
そして、ルピナスが魔法を発動する。
ルピナスが魔法を発動すると、巨大なミミズは、くねくね曲がりながら大暴れ。
頭や尻尾?を地面に打ち付ける。
その度にドカン!ドカン!と凄い音がして、砂煙が上がり、何も見えなくなる。
黒蜜が上空で待機していると、ルピナスが戻ってきた。
ルピナスが一回り大きくなっていた。
すると頭の中に《水精霊ルピナスが中位精霊に進化しました》と言う機械的な声が響いた。
巨大なミミズを討伐したから、レベルアップしたみたいだ!
これで、アンバー以外はすべて中位精霊になった。
音も静まり、上空から下を見る。
暫くして、砂煙が収まる。
黒蜜が高度を下げると、砂の上に宝箱が見えた。
それ以外にキラキラと何かが光に反射する。
美鈴さんが「見て!拓哉さん。宝箱があるよ!」と言う。
美鈴さんの指示で、黒蜜が高度を下げて、やがて地面に着地した。
アネモネが宝箱の確認に行く。
うんうんと言っている。
罠は無いみたいだ。
僕が「罠は無いから開けても大丈夫だよ!」と言うと、美鈴さんが「分かった!開けてみるね!」そう言って笑った。
美鈴さんは、本当に宝箱が好きらしい。
美鈴さんが宝箱を開ける。
宝箱の中から、表彰状位の大きさの紙が見える。
スクロールって言ったっけ?
スキルを覚えるやつだ。
美鈴さんがスクロールを眺めている。
鑑定をしているのかな?
美鈴さんが僕の方を振り返り「看破と言うスキルが覚えられるみたい」そう言った。
僕が「看破?看破って何だ?」と言う。
すると美鈴さんが「嘘や偽装を見破るスキルらしいよ!」と言った。
それなら、美鈴さんが持つ鑑定と相性が良さそうだ。
僕が「美鈴さんが使って!」そう言うと、美鈴さんが「分かった!」と言って、宝箱から丸まっている、スクロールを取り出して魔法陣を見る。
やがてスクロールは、光の粒子になって消えた。
無事に看破のスキルを取得したみたいだ。
宝箱の近くに魔石が落ちている。
リッチと言ったっけ?
あの魔物の魔石と同じ位の大きさだ。
でも、リッチの魔石は黒色だったけど、この巨大なミミズ?の魔石は茶色だった。
僕は魔石を巾着袋に仕舞う。
次に、キラキラした物の確認だ。
僕がアンバーに指示を出すと、アンバーが土魔法で1ヵ所に集めてくれる。
地面の中にある物まですべてを。
砂の中を探して、掘り出す手間が省けて大助かりだ。
本当に魔法は便利だな~
僕と美鈴さんは、アンバーが集めてくれた物のところに移動する。
キラキラの正体は、剣や矢の金属部分が光に反射していた様だ。
それ以外に盾とか、探索者カードもあった。
僕は、探索者カードを拾い巾着袋にしまった。
剣や防具は量が多すぎて、とても巾着袋には入り切れない。
僕は持って帰るのを断念して、アンバーに地面の中に隠しておいて欲しいとお願いする。
アンバーの土魔法が発動した。
土で四角い入れ物が出来上がり、武器や防具がその中に入っている。
そして、土の蓋が被さる。
アンバーが作った土の箱が、ゆっくり地面の中に沈んで行った。
「美鈴さん。支店長に報告に戻りたいんだけど、良いかな?」
「うん。そうしよう!」
美鈴さんも賛同してくれたので、僕達は地下7階の探索を中断して、報告に戻る事にした。




