拓哉と美鈴は獣魔の登録に行く。
土曜日になり、僕達は健太さんの車に乗り、探索者協会にやってきた。
まず、支店長に報告して、獣魔登録をしてもらう。
それが終わったら、ダンジョン地下1階にある、天空の城へ行き、風の上位精霊に黒蜜を紹介する予定だ。
支店に到着し、健太さん達と別れた僕達は、支店長に会いに行く。
受付の人に支店長に会いたいと言うと「どうぞ~」と言って通される。
部屋の扉をノックして支店長室に入り、ソファーに座ると支店長が「今日は何だ?」と要件を聞いてくる。
美鈴さんが「新しい獣魔が生まれたから、登録に来ました!」と言う。
すると支店長が「この前の卵が孵化したのか?見せてみろ」
美鈴さんが持つバッグに2匹の獣魔が入っている。
白色と黒色だ。
白は白玉で、黒が黒蜜。
美鈴さんはバッグの中から黒蜜を両手で持ち上げる。
そして支店長に見せながら「ブラックドラゴンの黒蜜ちゃんです!」と言う。
「はぁ?」そう言って支店長が固まる。
初めて支店長のアホ面を見た僕は、思わずにやけてしまう。
いかん、いかん。
支店長に、にやけた顔を見られたら怒られる。
僕は必死に我慢する。
そして僕がにやけない様に必死に我慢していると、暫く固まっていた支店長が動き出す。
「…聞き間違いかも知れない…もう一度言ってくれるか?」
「だから、ブラックドラゴンの黒蜜ちゃんです!」美鈴さんが言う。
「…聞き間違いじゃ…ないんだよな?美鈴が鑑定のスキルを持っている事は知っている。だが確認の為、支店所属の鑑定士に鑑定させても良いか?」
「はい!大丈夫です!」
支店長が内線電話で鑑定士さんを呼んだ。
鑑定士さんが支店長室に入ってきた。
支店長が鑑定士さんに「この黒い獣魔の鑑定をしてくれるか?」
「はい。分かりました!」
そして鑑定士さんが黒蜜を見る。
だんだん驚愕した顔になってくる。
「ブ…ブラックドラゴンです!」
鑑定士さんが、震えながら言う。
「そうか…分かった。もう良いぞ」
そう言うと鑑定士さんは退出する。
「それで、これからどうするつもりなんだ?今は小さいから良いが、大きくなったら家で飼えないだろう」
「はい。だから、ダンジョン地下1階の天空の城で飼おうと思ってます!」僕が答える。
すると支店長が「良い判断だ。精霊が許可してくれるならな。ダンジョン内で揉め事を起こされたら困る。ブラックドラゴンと精霊の戦いが起こったら、大惨事が起こるからな」
「もう風の上位精霊には、話をしてあるから大丈夫です!」僕が言うと、美鈴さんが「この子は、頭が良くて人の話も理解出来るから、大丈夫です!」そう言った。
「ドラゴンの小型種ワイバーンを使役しているテイマーが世界に数人いる。そのテイマーがワイバーンをテイムした時だって大変な騒ぎになった」
「ブラックドラゴンをテイムしたなんて話は聞いた事が無い。もし知れると自宅にマスコミが押し掛けてきて大騒ぎになる」
「それに、周り近所の人達も怖がるし、警察が24時間体制で監視しないといけなくなる」
「だから、問題さえ起こさなければ、ダンジョン内が一番良いかも知れないな~探索者か、探索者協会の関係者しか中に入れないからな」
遠い目をしながら支店長はそう言った。
黒蜜の獣魔登録は、支店長がしておいてくれる事になった。
支店長室を出た僕達は、ダンジョンゲートに向かう。
入口を入って、ダンジョン地下1階の草原の1本道を歩く。
途中で道をそれて右に進み、丘を抜けて何時もの大きな木の所へやってきた。
アネモネの風魔法で天空の城へ登る。
雲の大地を歩き、城門を抜けて城内へと入る。
廊下を進み謁見の間に到着した。
玉座に風の上位精霊が座っている。
僕がブラックドラゴンの黒蜜を紹介し「ここで飼いたいんだけど良いかな?」と言うと風の上位精霊は、妖精達に危害を与えなければ良いと言ってくれた。
僕が美鈴さんにその事を伝えると、美鈴さんが「精霊さんや妖精さん達に迷惑をかけたらダメだよ!」と黒蜜に言った。
すると黒蜜が、うんうんと頭を縦に振る。
美鈴さんが言う様に、人間の言葉を理解している様で安心した。
その後、僕達は城にある自分達の部屋に移動する。
美鈴さんの部屋も広いし、バルコニーも凄く広いから、ここなら黒蜜が大きくなっても大丈夫そうだ。
精霊にお礼を言ってから、僕達はダンジョンを出て帰宅した。




