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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

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下心しかない

「成程、スタンピードか」

「はい。申し訳ございません、事前に気が付くことができませんでした」

「え、え、ちょっと待って欲しい、え、ええ?」

生徒会長が取り乱しているが、それが普通の反応だ。マティ様が落ち着いているのがおかしい。


「で、スタンピードを抑えることはできるよな?」

「もちろんです」

「いや、スタンピードだよ?スタンピードだよ??」

「お任せください。オケディアはスタンピードの研究をしていました。それが失敗しスタンピードが起きましたが、九星の誰にも気が付かれずに処理したことがあります」

ちょっと代償を支払ったが、数分で決着をつけた。

抹消は強力な異能力だ。それに彼岸の僕にかなり相性がいい。


「それ言っていいやつ?」

「証拠はありませんから」

僕は笑顔で言い切った。



「あ、そうだ。異能力はあまり使うなよ」

「え……?」

「ん?」

「は、はい……」

「数分で片が付いたらどうなるか……わかるな?」

「魔法と剣のみで戦います!」

つい腰が引けてしまうくらいの圧に、僕は頷く。生徒会長が不思議そうな顔をしているので、僕にのみその圧を向けているのだろう。本当に器用だ。別に魔物相手にすら戦ったことはない筈なのに。

ラース兄さんも最近ようやくできるようになった、と言っていたし、本当に意味が解らない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Unidentified


「フンフンフフーン♪」

鼻歌を歌いながら上機嫌に魔障を固める。うむうむ、今日もいい調子だ。美しく、禍々しい結晶。これ一つで、国が簡単に潰れるぐらいの災厄を引き起こすことができる。


国が潰れる瞬間は、美しい。セオドアは短期間で強国に上り詰めた素晴らしき国だ。これから、栄華を極めるのだろう。それを潰す。ああ、とても興奮する……!



「それに、この国には()()がいるみたいですしねぇ……?」

遠くから黒髪の青年を覗き見る。

彼は、グレイウルフを一瞬で倒してしまった。首を掴んだと思ったら、血を噴き出して絶命するグレイウルフ。グレイウルフ程度簡単に倒せてしまう、と。



「ん……?こちらを向いた気がしましたが……。気のせいでしょう」

こんな遠くから自分を観察する人物を見つけるなんてこと、いくら彼岸だったとしても、できる訳がない。

現に隣に白髪の青年がいたが、全く気が付いていないようだった。



動きから見るに、黒髪の青年の方が強そうだ。服の上から見える体つき、足運び、視線の向け方――。全てが洗練とされていて、無駄がない。顔立ちも相まって、美しい。


こういう人物を壊すことができるのなら……。そんな想像をして、興奮する。余裕たっぷりの笑みを徐々に絶望に塗りつぶす。それが全く興奮しない訳がない!



「どんな強者も、スタンピードには敵うまい……。ああ、彼が絶望するその時が――楽しみです」

恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべ、涼しい顔をした彼の絶望の表情を思い浮かべる。

あ、でも――。


「あれだけ強そうなら、ホルマリン漬けにしてもいいですねぇ……」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Ain


あの時の魔法陣は、きちんと脳に記憶している。あれは、前に見たウィキッドの魔法陣とは基礎が違った。



ウィキッドは、自分の能力が強すぎて、魔法をあまり使わない。だからこそ、進化もしないため、独創性がない。だからこそ、とても分かりやすい魔法陣を敷くのだ。何とかして、隠ぺいをしようという気概はあるが、僕の目を欺けるレベルではない。


しかしあの魔法陣は、深く研究された様な魔法陣だった。目的達成のために研究しつくされた印象を受けた。その特徴は全くウィキッドに会わない。だからこそ、僕の知らない人物が何かしている、と言うのが分かったのだ。



ただ、悪寒がする。なんだか、目的が見えないのだ。いや、スタンピードを起こすことが目的の筈。でも、何故スタンピードを起こすんだ?この国を潰すためか?でも、なんだかおかしい気がする……。

どこがおかしい?別に国を潰すのにスタンピードを起こす、というのは間違っていない筈。

でも何だろう……とても理性的で、恨みつらみに支配されていないような印象を受けた。



何せ、魔障を完璧に管理しているようだったのだ。魔障なんて、魔属性を持っていても簡単に操れる訳がない。ミリア姉さんが全く魔障を操れないように。



その上、不気味なのはマティ様もだ。不相応な殺気、知る筈のない異能力についての知識……。


異能力は、普段使うくらいなら代償を求められることはない。しかし、少し強い力を使おうとすると、代償を必要とする。

僕の異能力は、そもそもの力が強すぎる。だからこそ、代償が大きくなりやすい。

普段は体力やら彼岸の力を代償にしていた。しかし、それよりも強い能力を使おうとすると、寿命を代償にする。


しかし、それを説明した覚えはない。そして九星も、教えていない筈。なかなか会う機会がない筈だから余計に。



まあ、異能力を使わなくとも、スタンピード自体は止められる。二人きりになったときに、彼岸の力を思う存分使え、と言われた。

まあ、半分魅了させてつぶし合えばいいか。うまくやればそれだけで終わる。


ただなぜあんなにウキウキだったのか……。

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