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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い
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口は最も致命的な凶器です

「最近、怪我をする生徒が多いですね」

サティが生徒会室でそう言った。


「ええ、そうね。魔物討伐の課外授業は常に怪我人は出るけれど……だんだん増えて言っているわね」

「え、そうなんですの!?ハロルド様、課外授業は欠席してくださいまし。私、婚約者としてハロルド様がお怪我をするのが嫌なんですの」

「そうか」

「さすがにそれは無理だね~。自分の婚約者がこの学園から退学するのは許容できるの?」

「貴方には何も言っていませんわ」

「これ……失敗した?」

「ザック……。流石に赤の他人が分かる訳ないさ。こういう不仲は他人に知られないようにするからな」

サティの発言にジェシカ様が心配そうな声を上げるが、オストワルト様がハロルド様の行動を縛りにかかる。過去、ハロルド様が言っていた通りの人だった。

一見しただけでは、聡明そうな女性と言うしかなかったのに、言動がすさまじい。


普段とあまり変わらなそうなカーティス様の目が、とてつもなく冷たい。それに気が付いているのかいないのか。いや、気が付いていてあの態度なんだろうな。


「フン、貴様如きが俺の将来の側近の行動に口出しするな。全く持って不愉快だ」

「――ッ!」

「キャッ!」

流石に王太子に睨まれれば、まずいという事は理解しているんだろう。悔しそうな表情をし、生徒会室から外に出て行った。

その時に、サティにわざと肩をぶつけていった。



「大丈夫か」

「はい……。あの、その――なんだか癖の強い人でしたね」

「昔から変わらん。ただ家柄もオストワルト家の方が、マルティン家よりもいい。だからああいう態度を取っているのだろうな」

「それで、マティアス様には素直に言う事を聞くと……なんだか、その……」

「カーティスのよりはまだましだ。あれはいつか婚約破棄をされるだろうな」

「ぶっちゃけすぎですよ~」

カーティス様は、笑っていたがやはり目は笑っていなかった。



「話を戻しますが……。怪我人が増えた原因に心当たりがあります。――調査してもよろしいですか?」

「ああ、構わない。お前の方が人間よりもわかるだろうしな」

「ありがとうございます」

僕はマティ様に頭を下げた。



「アイン、原因って何だい?」

「お前が何か原因じゃないのか?」

「あまり確証がない状況で変なことをと言いたくありません。ただそこの天使に向けて言うと、本気でそう思っているならば、あなたは今すぐこの学園から退学して、この世界のどこかに引っ込んでください。世界の損失です」

「いいすぎじゃないか?もっと言いようがあるだろ!それに、俺はそこまで言われるようなことしたか?」

「……なら、今夜あなたの寮室に向かいます。共に調査しましょう。――それでも理解できなければ、自分の組織に引き籠ってなさい」

僕は怒気が込められた溜息を吐き出した。この天使は、こんな調子で一体何ができるのだろうか。こんな、禍々しくどこか懐かしい――そんな空気がゆっくりと、しかし格段に濃くなっているのに気が付いていないのだろうか。


そうだとすれば、九星にこの天使がかかわることが、九星にとって最も致命的になる。どんな厳しいことを言って、その結果僕の周りに誰もいなくなってしまっても構わない。


僕は、必ず目的を果たさなければならない。――計画は、確実に達成させる。そのための雑音は、徹底的に潰す。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Raphael


俺は吸血鬼に言われた内容が頭にずっと残っていた。



――――この世界のどこかに引っ込んでください。



とても厳しい言葉。しかし俺の本能が、その言葉は限りなく正しいと、そう判断していた。


あいつは――俺の目を見ちゃいなかった。いつも俺の方をしっかりとみて、言葉をくれる。しかし――今日、完全に失望されてしまったのだろう。もう、見る価値もないってか。



「くそ……っ。一体何なんだよ。一体、一体……ッ!」

「荒れているみたいだね。まあ――考えなしじゃない、と言う事実はかなり喜ばしいよ」

後ろからそんな声が聞こえた。驚いて振り返ると、そこにはアインがいた。昼と同じ格好だと思っていたが、よく見たら腰に刀を差している。……転生者いるだろ。



「それは――刀か?」

「よくわかったね。知らないと思ったのに……」

そうアインが刀に目を向ける。その視線には、宝物を見るような、そんな優しい感情がこもっていた。



「さすがに、これを使うことはないと思う。ただの調査な上、これを使うほどの大物ならどんな鈍感でも、気が付くだろうね。――気づかないなら、生物を辞めている」

「そこまでなのか……」

「救いようがない。もはやそれだけで、戦闘に関しての才能が一切ないことになる」

……まだそこまでじゃないようで何よりである。



「で、どこを調査する気なんだ?」

「気配が最も強くなるところ」

とても簡潔に教えていただきありがとうございます。


「気配なんて、今まで碌に戦闘してなかった俺に感じ取れる訳がないだろ」

「心地いい気配がある筈だ。さて、学園の外にでる」

「分かった」

息をするように学園から抜け出すんだな。俺もしているし、学園の外でアインと会ったことがあるから、特に驚きもしなかったが。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「一体、どこに行くんだよ!なあ!」

「進めばわかる」

「……なあ、本当にこの先へと進むのか?なんだか……不安を感じる」

「そうか?――何故だか、懐かしい気分になる。それは彼岸である限り、変わらない筈なんだが……」

「そう思うからこそ不安なんだよ」

さっきからずっと、懐かしい気分になった。例えるなら、転生する前の記憶――日本に関しての夢が出てきたような感覚だった。

そんな懐かしいもの、この世界には一つもない。だからこそ、不意に日本――前世と関係があるものが出てくるかもしれない、と不安を覚えるのだ。



「――魔物は、一体何から生まれるのか。授業でもやっているから、知っている筈だ」

「魔障から生まれる」

夏休み前の授業で聞いた。


「そう。そして彼岸はその魔障を見つけるのに長けている。何故なら、彼岸の先祖は元々魔障しかない世界で生きていたから。そう言われている」

「――だから、俺が魔障に気が付かないことに、失望したのか」

生きるのに必要な本能がない、そう判断されてしまうのだろう。


「そう。普段生きていて、魔障があそこまで強くなることはない。だからこそ――」

「気が付いて当然、なのか」

「そう。普通は本能でわかるのだが、あんたはその本能が著しく低いようだ。――それは知識を身に着ければ、カバーができる範囲でもある」

「本能……」

今までで、一回も本能が囁いたことはない。自分の力も、アインに教えて貰えるまで、何一つ扱えなかった。


「そう。彼岸は親が全てを教えてくれない。だからこそ、十二分に戦えないのなら、意味がない」

「それって、かなりレアケースなんじゃ……」

俺も、そのレアケースの一員だと思うが。


「彼岸は親と子の種族や使う言語が違うことがある。ラース兄さんがその例だ」

「ラースってあの……!?」

俺は、あの臨時教師の不敵な笑みを思い出していた。


「そう。臨時教師だよ。背の低い鬼人」

「確かに背は低かったな」

「あまり本人に言わない方がいい。あんたは天使だ、軽く心臓は抉り出されることはされる。あんたの完成は人間よりだから、彼岸の目の前では失言はしない方がいい」

自分で言っておきながら、そう忠告する。心臓を抉り出すとか、彼岸は野蛮だな……。


「それって、死ぬのでは……?」

「彼岸は特別な手順を踏まないと死なない。まず絶対に、そういう死ぬ手順は、親も教えてくれない。それが、彼岸が本能で悟ることだ」

「死ぬ、方法……」

「天使は脳を光で焼くことで死ぬ。種族共通の死因だから、もし何かの拍子で彼岸を殺す方法を見つけたとしても、口外しない方がいい。――その種族全体を全て敵に回す」

「キヲツケマス」

と言うか、脳を焼かれたら誰でも死ぬのでは?ああでも、心臓潰しても死なないし、何なら首を切られても死なないのか。でも、痛みは感じるんだよな……?怖っ!

ザック「今まで聞いたことないほど鋭かったな……。言葉の棘が」

マティ「従者は主に似る、と。よく言うだろう?」

ジェシ「似て欲しくないところに似ちゃったわ……。アインのいい所は、意外に可愛いというところなのに……」

ハロルド,カティ,サティ,フィン,ザック,ウェン,ノエ,シエ,「「「「「「「「可愛い???」」」」」」」」

マティ「あれでかなり抜けているからな。――よくわかっているじゃないか、ジェシカ」

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