表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/283

僅かな手掛かり

Side Nufist


「……で、オケディアにはもう既にいなかった、と」

「はい。姿を眩ませてから――もう既に何年も経っているようでした」

俺は、自分の主にオケディア――ステラ侵攻の結果を報告した。


「ではどこにいる?まさか、それも探れずにおめおめと帰ってきたのか?」

「……流石に、情報戦では、あちらの方が数段上です」

「そう言う事を言っているのでない!!」

我が主は、苛立ったように声を荒らげた。


「我は彼奴(あやつ)らよりも先に、見つけねばならん!そうして――殺さねば。さもなくば、死ぬのは、我になる。――のう、ヌフィストよ。貴様は死にたいのか?」

「いえ……。申し訳ございません。昔、世界中にあった痕跡も、今や消える一方……まるでこちらをおちょくるがごとく、簡単に痕跡を残し、そして消しているのです」

大量の追手を放って、彼を探させた。しかし、どれも空振り。彼の側に仕えたことがあるという男もいたのだが、いつの間にか姿を消していた。


「せっかく掴んだ手掛かり……それを無駄にすることは許さんぞ!」

そう横暴に我が主は告げた。しかし、それは無理な相談だ。

もう既に、オケディアから姿を消している。どこにいるか、皆目見当もつかない。


「我々は、あまりにもこの世界に慣れていなさすぎます……。それ故に、敵が齎した情報に翻弄されるしかない……。せめて、情報の精査をしましょう。そうすれば――」

「そうするよりも、全てを虱潰しにすればよいではないか。最終的に彼奴は我の前に現れる。結局、その時に彼奴を殺してしまえばいい。ただ、事前に殺しておいた方が都合がいいだけの話だ」

「確かに……。どこまで強くなったとて、誰も主様に敵う者などいる訳がない……」

どれだけ足搔こうが、抗おうが。我が主に敵う者など、永遠に現れない。何故なら――。



「そうだ。よくわかっているじゃないか、ヌフィスト。もう彼奴の唯一割れに対抗できる手段は、事前に潰してある。だからこそ、彼奴は人工的に作ろうとしたのだろう。しかし、失敗したようだがな」

「そうですね。神でさえ、作り出せない存在を――唯一神を殺すことができる存在を、ただの魔族である彼が作り出せる訳がない。だからこそ、逃げるしか方法がないのですよ」

そう、彼の目的は、永遠に果たされることはない。何故なら、手段が一つもないから。それでも俺は、念には念を重ねたい。たとえ、彼に我が主を殺す手段がなかったとしても……。



――彼――皇月影と言う男が生きているだけで、主を殺す可能性というものが生まれてしまう。それを俺は、看過できる訳がない……!



「主様。一度油断をした結果、貴方は事前に奴らにとっての切り札を潰したのです……。九星は主様にとって、脅威ではありませんでした。あまりにも、弱い。人類最強は、人類最強でしかありませんでした。それならまだ久遠の双子の方が手強かったです」

俺は脳裏に雪色の髪を持つ双子を思い浮かべる。彼らに一体どれくらいのウィキッドを殺されたのだろうか。

それに、彼らがいる限り、久遠にウィキッドが潜入することもできない……。


「しかし――皇月影は、その双子を軽く超える脅威です。未だ、()()()()()すら見つかっていません。まだ、向こうにだって主様を殺す手立てがある、そういうことなのでしょう」

「それでも、人類最強を我は殺したことがある。どんな奴が来ようと、我の圧倒的な力で踏みつぶすのみよ」

「主様……!」

「手掛かりがあるのなら、即座にそこへ行け。そこに彼奴がいるかどうか――それはそこに行かぬ限り、分かるものではない。それか――貴様は我の命に背くのか?」

「い、いえ……。謹んで拝命いたします」

膝をつく。我が主は頑固だ。もう決めてしまった以上、それに従うしかない。

俺は、漆黒よりも暗い黒色の髪を持つ主が去るその後姿を、じっと見つめることしかできなかった……。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Unidentified


「悪いな」

「ん-っ!!ん、んんーっ!!!」

猿轡(さるぐつわ)をかませてあるため、呻くことしかできない。そんな男を僕は冷たい視線で見下した。ベッドに手足を括りつけ、身動きができないようにしてある。


「あんたには犠牲になってもらう。恨むなら、神を恨むんだな」

「んんーっ!!んーーっっ!!!!」

男はベッドの上で一際激しく暴れ始める。それが、生命の最期の輝きのように見えた。



「あんたらウィキッドは、彼岸の能力か、異能力でしか殺すことができない……。それ以外の方法で、できれば誰にでも殺せる方法で殺せるならば、それが一番いい。だから――その方法を探らせてもらう。

――ああ、安心してほしい。あんたは、苦しまずに逝かせてやる……」

「ん、……んん――ーー……. . . . . .」

男の首筋に注射器を刺した。それは、強力な睡眠薬だ。何をされても、目を覚ますことができない程の睡眠薬――。それで男の意識が完全になくなったことを確認してから、実験を始めた。


「まずは、前回の考察を確認してみるか……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ