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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

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闇夜

夜とは、どこか後ろ暗い人物が活動する時間。人間の目は、夜が作り出す暗闇の中では役に立たない。


しかし、吸血鬼たる僕にそんな道理は通用しない。



「ここか」

学園の近くは、かなり栄えていると言っていいだろう。しかし、一本通りを外れれば、一気に人気がなくなってしまう。そこからさらに道を進めば、廃墟が増えていく。その廃墟の一つに、僕は訪れていた。


そこは、一見普通の廃墟に見える。多数の足跡が残っていることを除けば。

僕はとある場所を目指して、廃墟の中を進む。そして、足を止めた。



「そう簡単にもいかないか」

目の前にはウィキッドが4人。今まで殺してきた雑魚と比べると圧倒的な力だ。

ウィキッドは、持つ力の強ければ強いほど、厄介さが跳ね上がる。

雑魚はそこら辺の人間とあまり変わらない。それから強くなっていくと、ただ急所を突くだけでは死ななくなってくる。

最終的に、彼岸並みの厄介さになる。異能力を使わなければ、決して倒すことができない。


元々異能力とは、そのための能力なのだ。



「おい僕ちゃん、ここに何の用だ?」

「俺たちに殺されに来たのか?」

下衆な視線にさらされながら、僕は奴らを観察する。……抹消を使わなくても、問題ないか。


「さて、死んでください」

「すごい自信だな、思い上がりやがって」

「夢は現実にならねぇぜ?」

僕の言葉にゲラゲラと下品に笑う男たち。しかし、もう決着がついているというのに、暢気なものだ。



「あ、れ――」

どさり。僕の目の前の男どもは、勝手に(くずお)れる。僕が何をしたのか、全く理解できなかったのだろう。


「ウィキッドは情弱。そもそも、今まで送り込まれた奴らが死亡ではなく、行方不明。その意味を――考えればあもう少しは情報を得ることができたかもしれないね。まあ、僕にとっては都合がいいけれど」

僕は、彼らが守っていたものの目の前に立った。


彼らが守っていたもの――それは、転移魔法陣。ステラに仕込まれていたものよりも数段上等なものだ。送ることができる人数が増える。


今まで、どこから湧いて出てきたのか――。その量のウィキッドの暗殺者がいた。その出所は、転移魔法陣からだったのだ。

月影の行方を探っていると、ウィキッドにばれてから数年。もう、この魔方陣は必要ない。


「最後に置き土産をしてあげよう。気に入ってくれるといいな――」

僕はそう呟きながら、転移魔法陣に細工をする。異能力をこめたから、強力なウィキッドも倒すことができるだろう。ただ、あまり期待はしていない。


しかしウィキッドは、あまりうまく魔法を扱えない。そもそも、魔法陣を敷けた分、かなり上澄みの部類だろう。しかし、ウィキッドの厄介さは別のところにある。


ステラに出たウィキッドは、かなり厄介……と言うより、普通はそう何人も外にいる方がおかしいのだ。 

名前を聞いた瞬間、全速力でステラに向かおうとした。しかし――ノア兄さんが僕はステラにいない方がいい。そう判断した。だから僕はノア兄さんを信じることにした。

僕が、足手纏いになる可能性がある。


いくら強くとも、この世界にはそれ以上の強い存在がいる。

ステラに現れたウィキッドが、そう言う存在かもしれない。少なくとも、九星にとってはそうだった。



ノア兄さんは、どこまでの未来を見ているかわからない。今、覚醒をしているのかどうか。それで色々と変わってくる。

ノア兄さんの異能力の本質は、未来を見ることではない。どちらかと言えば、付加価値だ。だからこそ、覚醒しているかどうかで、性能に大きな差がある。


未来が見える。それは、ある程度の知識を持っている者にとって、何よりも強力なアドバンテージになる。

あまり汎用性はない。できることは、未来を見ることだけ。僕の抹消の能力の方が、汎用性が高い。

それに、無知な人物に未来予知の能力が宿ってしまえば――。未来予知は、人類にとって夢のある能力であることに間違いない。しかし、あまりにも危険だ。下手すれば、僕の抹消の能力以上に。


しかしノア兄さんにそんな心配は必要ない。だからこそ、厄介だ。僕はあまり裏で策を(ろう)することが得意ではない。できることなら、自分の意思を消して、言われたことだけをやっていたい。研究のみに頭を使う環境にしたい。しかし今、そういう環境は作れない。



ただ、僕とノア兄さん共通で芳しくないことがある。それは――九星のほぼ全員が、覚醒していないのだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Unidentified


美しい翼が広がる。純白で、誰にも(けが)されたことがないような、神聖で、神々しい――しかし、自分自身はそんな評価に全く相応しくない。そう思っている。


「ここは、つまらないなあ……」

自分は、最悪が起きた時のためのスペアだ。絶体絶命、もはや絶望しかない状況での、起死回生の一手。

だからこそ、何が起きても指を咥えてみることしかできない。


勝手な行動は、許されない。そう言う立場にいるのだ。



――――だが。

私はジョーカーだ。動けば確実に何かしらの効果が表れる。それがマイナスであってはならない。



やり直しがきくなら、何でもいいから動いて、失敗すればやり直せばいい。けれど、現実はいつも無情だ。

私は確実に成功しなければならない。私の唯一の味方は、決して私が満足する結果をもたらすことはできない。彼の計画が、失敗することはないだろう。何せ、目的のためなら何でもする男だ。



それは、私もだが。だからこそ、分かる。今必要なのは、(こころざし)を同じくした、()だ。

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