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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

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秘密と機密は守りましょう

Side Matthias


流石にサティはいるか。関りを徹底的に絶ったとしても、彼女は優秀だ。どうせアイザックが勧誘する。アインはちら、とサティを一瞥しただけだった。サティはそんなアインに会釈を返す。



少し気まずそうだが、これがアインの通常運転だ。前に九星の一人がこの学園に来た時、教えてくれた。

どうやら失声症を患う前からそんな感じだったとのこと。いつも暗い表情で、どもりながら会話をする。


あれは完全に自分の見た目の所為だったし、会って一番初めに当時九星では恒例となっていた、暴力沙汰の大喧嘩にしっかり巻き込まれてしまったとのこと。うん、普通にかわいそう。


自分がよくその喧嘩の仲裁に入ってたからか、口調も似ている所があったためか、懐かれるのも早かったらしい。

九星がものすごい不仲だった時代があったんだな。アインはラースに対し、気の置けない関係だったし、他の九星とも仲良さそうだったから、そんなことはないと思っていた。



後は知らない生徒。見覚えがないため、少なくとも高位貴族の令息ではなさそうだ。白髪に赤眼。――アルビノだろうか?肌も病的に白いし。


なぜかアインを睨んでいる気がする。アインも心なしか表情が険しい。まあアインが初対面の人間をいきなり嫌う筈がないし、どこか俺がいないところであいつがアインに対し、何かをやらかしたのだろう。

アインは研究熱心な所があるから、研究資料を盗もうとした?それにしては利益がないようにも見えるが。精霊学の研究なんて、ニッチすぎて誰も価値を見出さない、みたいなことをアインに前言われた気がするのだ。



――しかし。



「生徒会室に置いてある机がなんでこんなにボロボロなんだ?」

「容赦ないですわね……」

気になったことを聞いてみた。システィーナ・フォン・エヴァーゼがやや呆れたような口調で言う。

俺はこの国の王太子なのだが。


「ザックが生徒会長になったのは3年の頃からですよ。その時は、他の役職も新入生を除いた生徒の投票で決められていました。しかし――ザックの出自は男爵家だ。男爵家が公爵家の人間を差し置いて生徒会長に選ばれるのは前代未聞だったんですよ」

俺の質問にそう返したのは、オーウェン・フォン・クァッド。アイザック以外では唯一の4年生だ。


「だからそれを気に入らなかった公爵令息とその取り巻きがザックに嫌がらせしたんですよ。それが段々と過激になって……。その結果がこの部屋の惨状の理由ですよ。あ、ちなみにそいつらは退学になりました」

嫉妬はどこにでもあるな。やけにこの部屋がぼろい訳だ。嫉妬に狂ってアイザックを殺そうとしたのだろう。どんだけプライドを傷つけられればそうなるんだよ。それとも令息の性格がよほど難ありだったのか?


「……魔法排斥領域(アンチマジックエリア)を使わないのですか?」

アインが心底不思議そうに言う。


「使おうと思ったけれどね……。あれって術者の実力に左右されるし、案外執務で魔法は使うんだよ……。生徒会室はその性質上、とんでもない才能を持った生徒が集まりやすいから、正常に効果が働くかどうかわからないし、そもそも私だって魔法が使えなきゃ困る」

アイザックがアインの問いに答える。まあ、そうだな。魔法が使えた方が便利だ。アイザックは風属性と光属性に適正があると聞く。

書類を風魔法で運んで、疲れた体を光魔法で癒す。うん、デスクワーク向き。


「なら、生徒会のメンバー以外の人物が魔法を使えないようにしましょう。ちょうど、試したいこともあったので」

「試したいこと?」

「はい。成功すれば、解除しない限り限られた存在しかこの空間で魔法を使うことができなくなる筈……」

「なら頼もうかな。一応教師の許可も取らなくちゃいけないけれど、アイン君だったかな?君なら王太子殿下の護衛と言う、身元もかなりしっかりしていて信用もできる。それに――王族が将来最大4名同時に入ることになるからね。万が一があってはいけない」

俺、フィンレー、ジーク、ヴァン、……俺とフィンレーが卒業しても、フィーがいるしそうでなくとも数人はミドルネームがフォンの人間がここを出入りすることになる。……これから数年の王族のインフレ恐ろしいな。



「結界か……。少しタイミングが悪かったか?」

「大丈夫でしょう。別に僕でも十分強い結界は張れますし」

アインはこちらをじっと見つめながら言った。圧がすごいです、圧が。異能力に関しては秘密事項なんですね、ばらしそうになってすみません。


「タイミング?」

「ああ、つい最近まで来ていた臨時教師がな、結界の名手なんだ。だから惜しかったな、と」

「そういうことでしたか。それは確かに惜しかったですね」

誤魔化し完了。いつか学園に入学する前、ラースが王城に遊びに来た時に酒に酔わせて九星の異能力について全て尋も……尋ねたのだ。だから知っている。


ちなみにアインにすぐばれた。俺が聞いていたから、まず俺に誰にも言わないよう圧をかけてきて、そのあとラースを細切れにしてた。一時期は俺の馬鹿でかい部屋の床が、ラースの血でびしょぬれだったが、教えて貰ったばかりのアインの異能力が俺の部屋が鉄臭くなることを回避してくれた。

異能力便利。


一応ジェシカには共有済み、口止めも抜かりない。


まあ、これは魔術の腕がものを言う。ルーファスを圧倒する程の実力を持つアインなら、むしろ過剰ともいえる結界が張られそうだ。

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