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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い
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無知は無敵

「じー」

「……」

「……」

やけに視線を感じる。


「じー」

「……」

「……」

視線の主はもうわかっている。


「じー」

「……」

「……一体あいつはどうしたんだ?」

「さあ……。僕にはわかりかねます」

ずっと僕に視線を送ってきている人物――サティの考えていることがよくわからない。時々ぼそぼそ独り言ちているのが聞こえる。

ここ最近ずっと……と言うか、休暇明けからずっとあの調子だ。……どうせ、知り合いに似ているとかそういうことだろうが。僕は黒髪だけど黒眼だから、混乱しているのかもしれない。



「っち、お前かよ」

「は?」

「アイン、喧嘩を買うな」

「……すみません」

生徒会室に入ったら、ラファエルが僕に突っかかってきた。……あまり天使は好きになれない。

単細胞すぎる。



「じー」

「……どうしたんですか、サティ」

「えっ、い、いやぁ……?」

誤魔化し方が下手すぎる。


「ちなみにこの学園の中には黒髪、または黒眼の人物は僕以外にはいませんよ」

「ななな、なんでわかったの!?」

「……僕とサティは知り合いです。今更そんなに見られる理由はあまり思い当たりません。時期から考えると、実家に帰ったときに何か言われたんでしょう。でもそれは僕のことじゃない。だって、特徴が違うから。貴方の性格上、知り合いに言われた内容がそのまま僕のことをさすならば、直接僕に聞くでしょうし」

「うわあ……。あってる……」

やや呆然としたようにサティが呟いた。


「ちなみにその人が今、本当にその特徴に当てはまるかわかりませんが」

「あ、髪、染めればいいもんね」

「この世界って髪染めれるのか」

「貴方は時々頭がおかしくなりますよね」

まるで、この世界以外にも世界があるような言い草だ。


「はあ!?」

「何も知らない貴方に教えて差し上げます。彼岸は髪の色をわざわざ変えずとも、髪の色が変わる者がいます。――貴方にはほとんど関係ないようですが」

一見しただけでは特に変わったように見えない。


「関係ないって……。まあ確かに。と言うかただ羽がなくなるだけじゃないのか……」

「人間に擬態するというよりかは人間の形態になる、と言う方が正しいですから……。貴方は一応瞳孔の模様は人間の時はないようですから、変わっていると言えば変わっているのかもしれないですが」

「地味すぎだろ」

人間に擬態するのに人間らしくない瞳孔は都合が悪い。


「変に舐められますよ、天使が白髪赤眼でないと。僕は吸血鬼らしい色でないので、吸血鬼に舐められます……と言うか、何匹かは返り討ちにしました」

「匹」

物凄く珍しいが、久遠の外にも彼岸はいる。よくあるのは国外追放の刑に処された奴ら。吸血鬼は種族特性上比較的野蛮な者が多い。そいつらは吸血鬼らしい色――赤系統の色を持たないものに強く出る傾向がある。


「貴様ら本当は仲いいだろ」

「僕天使嫌いです」

「は?俺だって吸血鬼は嫌いだ!」

「とか言いつつアインはしっかり彼岸の先輩してるな」

「何かこの天使がやらかせば、一番に迷惑をかけられるのは僕なので」

「あ"、言ってろクソ吸血鬼!」

「はあ、仲がいいんだか悪いんだか」

「一旦表に出ろ。その息の根を止めてやるよ」

「興味ない」

「怖気づいているのか?」

「脳を焼きますよ」

天使の殺害方法は簡単だ。脳を光で焼けばいい。たったそれだけ。

ただ、天使は火属性、光属性、聖属性の魔法に対する耐性は非常に高いという高い壁があるが。


「脅しか?」

「……もうやだこの天使」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



生徒会のメンバーが全員決まったらしい。


生徒会会長

アイザック・ド・ヴァンラーシュ 4年


生徒会副会長

マティアス・ドゥ・セオドア 1年

フィンレー・ドゥ・ロースティス=イーストフール 1年


書記

システィーナ・フォン・エヴァーゼ 3年

ハロルド・フォン・アムステルダム 1年

アイン 1年


会計

グリンダ・フォン・オストワルト 2年

カースティス・フォン・マルティン 1年

ジェシカ・フォン・グラッチェス 1年


庶務

オーウェン・フォン・クァッド 4年

シエル・ディ・ウィリアムズ 3年

ノエル・ディ・ウィリアムズ 2年

サティ 1年

ラファエル 1年



セオドアは歴史が短い。けれど、人口がかなり多い。だからこそ、貴族子女の数自体が多い上、マティ様がいる。マティ様が理由を教えてくれた。何故マティ様と同じ年の子供が多いのか僕には理解できなかったが。


一年がやけに多いのが気になる。生徒会室の壁が所々傷を隠すように白く塗られている部分を見つけるたびに、なんとなく想像ができてしまったが。

ジーと壁や調度品についた傷を見つめていると、生徒会長が苦々しく笑っていた。



「生徒会室に置いてある机がなんでこんなにボロボロなんだ?」

「容赦ないですわね……」

書記のエヴァーゼ様が困ったように言った。


「ザックが生徒会長になったのは3年の頃からですよ。その時は、他の役職も新入生を除いた生徒の投票で決められていました。しかし――ザックの出自は男爵家だ。男爵家が公爵家の人間を差し置いて生徒会長に選ばれるのは前代未聞だったんですよ」

ヴァンラーシュ家はとりわけ裕福でもない貴族だ。それもあってより前代未聞だと言われたのだろう。

生徒会に立候補するには、成績が優秀でないとならない。

ちなみにその基準が生徒会長、副生徒会長ならSクラス、その他の役職はAクラスであることが大前提だ。


「だからそれを気に入らなかった公爵令息とその取り巻きがザックに嫌がらせしたんですよ。それが段々と過激になって……。その結果がこの部屋の惨状の理由ですよ。あ、ちなみにそいつらは退学になりました」

少なくとも中級……下手したら上級魔法を使っているから、当然と言えば当然かもしれないが。

学園を退学になるという事は、かなり評判に傷をつけることになるだろうな……。

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