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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

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サティの話

Side Sattie


最初、生徒会に抜擢されたと聞いたときは、どうして私が!?と驚いた。どうやら、ジェシカ様、マティアス様、ハロルド様、カーティス様の推薦らしい。とてもありがたい。



この四名は、私が学園に入学してきた当初からとてもよくしてくださっている。


マティアス様との出会いは、落としてしまったハンカチをマティアス様が拾ってくださったときだ。入学式に見た美形一行のうちの一人だと気が付いたときはかなり恐縮したが、自信にあふれている言動とは裏腹に優しかった。


それからというもの、定期的に迷子になる私を送り届けてくれるなどしてくれた。惚れるな、と言う方が無理だろう。

兄さんたちもみんな美形だったけど、それでもマティアス様には敵わない。


出会う度に世間話をして、マティアス様が王子様だという事を知った。それを知ったときは、一応敬語で話してよかった……、と本気で思った。


いつも顔を合わせる度にあまりのイケメンっぷりにドキドキしていたが、何回も会う度になんとなくわかってしまった。



いつも私と会うときは一人なのだが、それ以外は常に護衛のアインと一緒にいる。なんとなく、笑顔が違う感じがする。なんか、アインと一緒にいるマティアス様は嬉しそうなのだ。

私と一緒にいるマティアス様がいつも笑顔じゃないという訳ではない。けれど、アインと一緒にいる方が笑顔がより輝いて見えるというか……。


それに、私と一緒の時も、アインのことを話しているときは、ワントーン声が上ずっていることにも気が付いた。



――あーあ。失恋確定しちゃったな。



アインだって美形だ。私なんか目じゃないくらいには。それにマティアス様の護衛で、ちょっとの時間話すだけの私よりずっと長い時間一緒にいる。流石に勝ち目ない。

そうじゃなかったとしても、ジェシカ様という優しくて、飛び切りの美人もいるのだ。わざわざ私なんかを選ぶ理由がどこにもない。



そんなジェシカとの出会いは、マティアス様と別れた直後にこう言われたのが始まりだ。


「貴方、人の婚約者に色目を使ってないかしら?そもそも、婚約者がいるような殿方に話しかけるなんて非常識にも程がありますわ」

「え、そうなんですか!?も、申し訳ございません!!」

「分かればいいのよ、分かれば」

「でも、向こうから話しかけてきたら、どうすればいいのでしょうか……。無視する、と言うのは失礼ですよね」

「無視だなんて!王族に対してとんでもない不敬ですわ!!当然、時期等を許されている場合のみ、答えることができますのよ」

「そうなんですね!ありがとうございます!!」

「理解できたようで何よりですわ。殿方に……特に婚約者がいらっしゃる殿方に自ら話しかけに行くのははしたないこととされていますの。お気を付けくださいまし」


少しいい方はきついかもしれないが、とても優しい人だったのは間違いない。まさか、そんな人と友達になれるとは、当時の自分は考えもしなかった。



ちなみにアインとは、このお二人がいるところ以外で会ったことがある。

寡黙で無表情ながら、美しい人。そう言う印象だった。


「どうも」

「……どうも」

図書館だったので、その程度の会話だ。私は最近はやりの恋愛小説、アインはこの国の小難しそうな歴史書とか、自叙伝なんかが山積みだった。ここで、成績の差が出たな、と思ったのは悪くない。

表情をあまり変えず、淡々を本を読み進めていく。そして本を読むスピードが速い。私が恋愛小説を一冊読み終える前に、二冊私の本より分厚い本を読み終わって、三冊目の途中だった。


護衛と聞いていたが、どの生徒よりも頭がいい。

目の保養にもなるから、小説読みながらちらちら顔を盗み見てたけど、もしかしたらばれてたかもしれない。



ハロルド様との出会いは、アインと一緒で図書館だ。アインがあまりにも歴史書とかを読むから、難しそうなジャンルの本を読みたくなってしまった。そのとき、取る本がハロルド様と被ったのだ。


「あ、ごめんなさい」

「いや、こちらこそ。……やはり、成績上位者は違いますね。これ、なかなか難しいと思うのですが」

「近くで読んでる人がいて……少し気になったんです」

「そうですか」


そう会話を交わした後、ハロルド様は私に本を渡してくれた。


「え……?でも、貴方が先に……」

「別に私は一度読んだことがありますので。――こういうジャンルはあまり人気がないので、仲間がいてくれて内心嬉しいんですよ」

「あ、ありがとうございます!」


私は恋愛小説のようなシチュエーションにドギマギした。

爽やかな笑みが格好いい。けれど、この人も婚約者がいる。しかもジェシカによると、物凄く面倒くさいらしい。ハロルド様に嫌われているのは自業自得なのに、それを周りの人間に当たり散らす。

浮気しないだけマシ、だったか。でも婚約破棄材料が減ったから余計めんどいのよね……とジェシカは溜息を吐いていた。



実は、カーティス様とはあまり親しくない。初めて会話を交わしたのは、何故か王族の別荘に招待された時か。……確かに、マティアス様とジェシカとは親しかったけど。だからって、招待されるとは思わなかったし、最後まで場違い感が半端なった。


ただ、私が招待されたのに、ハロルド様とカーティス様の婚約者はいなかった。ジーク様は婚約者がいないらしい。王族は幼い時に婚約を結ぶと聞いたけれど、例外もいるんだな、と思った。そう言うと、ジェシカは少し苦い顔をした。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「学園は楽しい?」

久しぶりに家に帰った。すると、サージェントが優しく聞いてきた。


「うん、楽しいよ。それに、目の保養になる人たちが周りにいるの」

「ふーん。誰が一番イケメン?」

「え"、ななな、なんてこと言うの!!!」

「いいから。僕はサティが通う学園にどんな人がいるか気になるんだよ」

「そういうことなら……」

私は少し考えるそぶりをして、サージェントに話した。


「この国の王子様が一番格好いい」

「…………黒髪緑眼か?」

「なにを言ってるのよ。金髪碧眼に決まってるでしょ」

「……黒髪は?」

「いるけど……サージェントってそう言う人が好みなの?でもその人男だよ」

「あ、いや……ぼ、僕の知り合いが通っているんだよ。だからもしかしたら知り合いになってるかもしれなくてだな……」

サージェントがしどろもどろに言ったことに私は驚いた。


「え、その知り合いは――」

「サティ、こっちを手伝ってくれ」

テンに呼び出され、私はテンの料理の手伝いをした。サージェントの知り合いについて、後ろ髪をひかれながら。

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