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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い
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俺は、どうしても

しれっと画像を追加している場合があります!

お気を付けを。(完全に飛鳥の気まぐれ)

Side Unidentified


「ロースタスの件はありがとう。無事、学園に編入できたよ」

「それはよかった。……きちんと寝ろよ?」

元々病的に白くはあったが、更に白くなっている彼を見て、俺は思わずそんな言葉をかけた。


「別に。平気。そんなことよりまた別件を頼む」

「ああ、それは構わないが……。お前隈すごいぞ?一旦寝て……」

「いいから。関係ないでしょ、僕がいくら睡眠不足であろうとなかろうと」

苛立ちを表すかのごとく、語気が強まる。


「関係あるだろ!俺は、お前の……」

(かなめ)、僕はお前の何?」

「それは――!」

「16歳の誕生日の約束。忘れた?」

「……すまなかった。本当に悪かったと思っている!」

「ふーん。いいよ、別に。僕だって分別が付かない子供じゃないから」

詰まらなそうにそう吐き捨てる兄弟を見て、俺は彼への申し訳なさと妻がこの場にいなくてよかった、と言う安堵が胸を満たした。



――本当に最低だな、俺。



安堵している気持ちが沸き上がることに罪悪感を覚えた。


「せめて、せめて協力させてほしい。お前の負担を軽くできるように」

「じゃあ僕の言葉に従って。そして、一々僕を心配しなくてもいいから」

「……わかった」

俺は頷くことしかできなかった。


「どうせ、僕の計画に従うしかないよ。――分かってるでしょ?」

そう言う彼の瞳は不気味に開かれていた。その色は、黒く濁っているように感じた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



俺は、ここから去っていくその背中を窓からじっと見つめていた。


「俺は、やめて欲しいよ」

だが、俺の声は聞こえない。


「あの時、スーよりもお前を選んでいたらよかったのか……?」

でも、同じことだ。いや、違う。そう思いたいだけだ。


俺は、あの時のことを後悔している。しかし、何度繰り返そうが、俺はスーを選ぶだろう。彼岸にとって半身は、そう言う存在だ。彼岸が半身を拒否しない限り、彼岸にとっての”一番”は半身だ。


あいつだって、彼岸だからこそ、分かる筈だ。昔から、あいつだって半身に憧れを抱いていた。……でも、いつからかあいつは半身に会ってみたい、と言わなくなったよな。いつも俺より無表情で血を飲んでいたのに。



「計画は、成功してくれなければ困る。でも……計画が完遂してしまうのも困る」

だって、あいつは。


「何かいい方法はないのか?」

半身を求めなくなった理由は。


「あいつを超える存在……せめて、越えなくとも対等に渡り合える存在がいれば……」

あいつの計画の最後に描かれている未来は――。


「あいつと交わした約束を、守れないじゃないか」

あいつ――皇月影の死だ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Ain


さて、今日は研究するために自室に引き籠ろうとしていた。昨日は新薬ができた。目が見えなくなる薬だ。相手にこっそり飲ませる以外使い道がなさそうだ。いや、効果が出るまでに時間がかかるし、そうする前に相手をさっさと制圧した方が早い。


本当に意味がない薬だ。そもそも既存の精霊薬の作り方を参考しているのに、なんでこんな色物な薬しかできないんだろう。


だが、その薬から計測したデータはかなり役に立った。着実に無毒化した精霊薬の完成に近づいている。完成まではあと時間の問題になった。



しかしそこで問題が起こったのだ。


「アイン、来い」

「了解しました」

マティ様からの唐突な呼び出し。一体どんな用事なのだろう。

そう言えば昨日、マティ様だけで先輩に呼び出されていたけれど……。



そう思いながらついていった先には、アイザック・ド・ヴァンラーシュ――現生徒会長がいた。



――たしか、生徒会長が直々に指名するんだったかな。



この学園には、生徒会というものが存在する。どうやら学生の内から領地経営などのシュミレーションをやれ、という事なのだろう。事前演習という訳だ。


それもあって、普通は高位貴族、もしくは王族が生徒会長を務めることが多い。と言うか、それが慣例化していた。

しかし、此度の生徒会長選挙で男爵家出身のヴァンラーシュ様が就任したのだ。異例の優秀さで高位貴族令息を抑えて大抜擢されたという訳だ。



「彼が、王太子殿下が優秀だと豪語する人物なのですね?」

「ああ、その通りだ」

ふむ、と相槌を打ちながら、生徒会長は僕をやや胡乱げに見つめる。


「くくく……まさか貴様使用人としての優秀を求めているのか?」

「彼は護衛なのでしょう?しかし……」

「この俺が選んだんだ。アインが俺の護衛に任命される際、ジャスパーと手合わせした。簡単に勝ってしまったぞ?」

マティ様の言葉に生徒会長はやや驚きながらこちらを見た。どうやら知らなかったようだ。


それもしかたない。僕はできるだけ身分を隠して活動している。その上、そもそも襲撃される前に潰している。という訳で、公の場で僕の実力を披露する機会がなく、マティ様がなぜが年下の平民の男を護衛に任命した酔狂な王子という評判になっている。

いつも集まっているメンバーは、僕がジャスパー様と手合わせしている現場に立ち会っている。かなり僕に縛りを課した挙句、そんなに持たなかった。

ちなみに縛りは、利き手でない方の手を使う、魔法、異能力、魔族の力、魔道具、リズの鍛えた武器を使わない、目を閉じて一歩も動かずに木刀の半分の大きさしかない武器で戦うという事をした。

10分も持たなかった。


「な、なるほど……」

「そんな簡単に信じていいのか?」

「なにをおっしゃいますか、殿下。王太子殿下にそう言われれば、私どもは信じるほかありませんよ」

マティ様が生徒会長に圧をかけている。権力者は横暴な人物が多くなるのだろうか?

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