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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩
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都市伝説の逆襲

あまりにも緑使いまくってたんで、ララの髪を紫のグラデーションにします!

Side Matthias


「待て。そこの吸血鬼についての情報をリークした奴がいる。そいつが今オケディアを何とかしている最中らしい。その間、吸血鬼を気絶させておいて欲しいらしい。吸血鬼には、オケディアの革命を知られたくないそうだ。

だが、起きている限り知られる。それを阻止しておいて欲しいようだ」

父上の言葉に、俺を含めた全員は絶句する。叔父上が、目を丸くしながら、父上の先見の明に納得していた。


「だからですか。陛下が吸血鬼を察知できたのは。それも今日の何時何分何秒寸分狂わず的中させ、あの“鮮血の死神”をも出し抜くとは」

父上には情報提供者がいたらしい。もしかしてその人物は俺と同じく転生者なのではないだろうか……?



「しかし、本当に未来を見抜くとはな。半信半疑であったが、全て当たっている。足りない情報もあるが……。こちらがあちらを信じていないのと同様に、向こうもこちらを信じていないのだろう。それに、吸血鬼は向こうの弱点らしいしな」

「弱点、ですか?」

父上の言葉に少し引っかかる。



「ああ。向こうはこの吸血鬼を溺愛しているらしい。だからこそ、吸血鬼の危機に形振り構っていられない。たとえ信用できない相手でも、自国よりかは遥かに頼りになるらしい。そう言った取引相手は誰だと思う?――“絶対零度の司令官”だぞ」



“絶対零度の司令官”。ゲームでは存在していなかった。だが、転生した後では、小耳に挟む程度だが、聞いたことのあった名だった。





曰く、後方にいながら戦場を支配する

曰く、どんな情報屋も彼には敵わない

曰く、非常に冷徹である

曰く、九星のブレインである

曰く、未来が見える――――。





そんな都市伝説じみた噂が広まっている。九星なんてものは都市伝説だ。ゲームでも出てきていなかったし、もしそれが本当だとしても、アインのルートで出てきていないのはおかしい。



「五時間で国を制圧するつもりらしい。革命は、多くの賛同者と時間をかけて行われる。それでも自国や他国の妨害があって、失敗することが多い。オケディアが重大な問題を抱えているなら兎も角、一般市民に悪政を敷いている様子もない。となると、革命を起こすのは、“絶対零度の司令官”とそれに賛同する軍関係者()()だ。“絶対零度の司令官”が本当に()()()()()ならここでやめている。革命を、な」

そういって、父上は言葉を切る。父上は“絶対零度の司令官”についての噂を信じているらしい。



「普通の参謀なら、やるにしても駒をできるだけ減らさないような立ち回りをする。勝ち目はないからな。だが、“司令官”は勝ちを確信している。一般市民に、革命を納得させるだけの演説の用意もあるらしい。しかしそれだけでは、幾つか不自然なところがある」

父上は、顔を険しくした。それだけ、“絶対零度の司令塔”が不自然な行動を取っているのだろう。


「例えば……?」

「ルーファス、使用人のアルが怪しいということで、鑑定を頼んだよね?それも内密に。知っている人間は僕とルーファス、そして兄上。もしアルが暗殺者で、それを確信に近い疑念を抱かれていると知られれば、形振り構わず暗殺するかもしれない。それを阻止するために」

「なあ、俺それ知らないんだが」

叔父上が父上の話の続きを言う。アルフレッドがルーファスにそう詰め寄っていたが、本人は、どこ吹く風だ。


「知っている人間は少ない方がいいからね」

「ああ。それで未来が見えると確信した。事前に鑑定結果も知らされたぞ?自信満々にUNIDENTIFIE(正体不明)D。ただ一語だけだった、とな」



鑑定を完全に弾き返すことができるのは、術者より魔術面において実力がかなり上でないといけない。魔力がただ単に多い、と言うのはこの時の“実力”と言うのに含まれない。魔力の扱い方の上手さで決まるのだ。

そして、基本的に、どんなに両者の実力が離れていようと、名前や性別、種族は判る。魔法のまの字も知らないド素人でも、ルーファスの持つ属性や、所属すらも判ってしまう位だ。魔術一辺倒のルーファスに暗殺者が魔術で、天と地の差の天の方だというのは、とても信じ難いのだ。



「吸血鬼は“司令官”にとって、弱点の筈なのに、アルについて調べろ、と言ったのは、紛れもなく“司令官”だ」

よく分からない。何をしたいのか、それが掴めないのだ。父上も叔父上も、“司令官”のやりたいことが分からない。なにも、アインを匿うだけなら正直どこでもできる。態々ここでなくてもいい。



「オケディア、チーズルは向こうに任せて、こちらは新王国と同盟を組む準備をした方がいいですね」

いつまで経っても分からないものは分からない。この事は、今考えるべきではないのだろう。



「という訳だが、シリル。頼んだぞ」

「ただの司書に務まるとは思えませんが」

「王弟だろ。格はあるし、頭も回る。頼んだぞ」

「はあぁぁーー。わかりました、拝命致しますー」

叔父上の投げやりな返答でこの場は解散した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Noah


「準備ができたわ」

物思いに耽っていた僕の意識は、その一言で覚醒する。



――ああ、漸く。漸く()()()()()を迎えることができそうだ。



僕は嬉しさのあまり、最近は浮かべていなかった笑みを浮かべた。



「嬉しそうだな06。いや、ノア、か」

茶髪青銀眼の青年が眼鏡の位置を直しながら言う。



「まだ慣れないわね。馬鹿ラース(05)なんか、6回も私の名前を03と呼んだのよ?」

名付けの恩も忘れて……と、黄色と紫の虹彩異色(オッドアイ)を持つ少女は、腕を組んで隣に文句を言っていた。



「悪かったって、ミリア(03)。初めて会った時から9年、ずっと番号呼びだったしさ」

その隣のオレンジ髪の青年は、ミリアに謝りつつ弁解していた。彼の頭からは立派な黒い角が生えていた。



「アタシもまだ慣れはしないねェ。まァ、久しぶりにリズって名乗れるようになったのは嬉しいけどねェ」

金髪で、毛先にかけて夕日色のグラデーションになっている女性がそう同意していた。彼女の耳は長く尖っている。



「そうだな。俺の名前も、一日使っただけですぐ番号になったから、余計にな」

橙色に所々赤が混ざっている髪を持つ男性は豪快に笑った。




「どういう人生を送ってきたのよ……。でも、エリ君(07)の言う通りね。リズちゃん(09)も、今までで一番嬉しそうだわ」

先程僕に語り掛けてきた女性はプラチナブロンドの髪を持つが、毛先に紫色のグラデーションを持っている。




「……その名前は、ちょっと」

「そうだねェ。アタシも、ちょっとアレだとは思うよ」

氷色の髪に金が混ざる男性は、この部屋に来て初めて言葉を発した。それに便乗するようにリズはチラッとエリックを一瞥しながら言う。



「リズ!オットー(08)!聞こえてるからな!」

エリックが怒るまでが通常運転である。



「相変わらずだね。それに、こうして集まるのも、二年振りかな?」

僕は九星の面々を見まわしながら言う。相変わらずの軽口が聞けて嬉しくなる。



いつものようにがやがやしてきた彼等を傍観し、ふと寂しくなる。



「01無事かなぁ。まあ、ノア兄が焦らない以上、01が死ぬことはないんだろうけどね」

「俺は心配だ。()()()からずっと、俺達は01を見守ってきたンだ。それなのに、あの日に限って誰も見てない隙に、他国に送られるなンてなァ……。許さねェ」

それでもミリアは心配そうだし、ラースは怒りに震えている。



「それでもここまで来た。あとはこの国を落とす。それだけに集中しよう。いいね?」

僕は熱が入り始めた年下二人(ミリアとラース)を諫める。



「計画はあと少し。有力貴族は皆全て取り込めた。取り込めなかった家は、没落決定だ。あとは王族の身柄をおさえるだけ」

「ああ、そうだな。01に危害が行かないように動くのは大変だった」

ゼスト(02)の言葉に僕は頷く。



「九星世界平和のために作り上げた!それなのに、オケディアは僕たち(アストロロジー)を、自陣を広げるためにしか使ってない!僕たち(アストロロジー)は何のために普通を捨てた!?世界を、厄災から世界を救うためだ!決して人間たちの醜い領土争いのためではない!今こそ立ち上がる時だ!世界のために!」

「「「「「「「世界のために!!」」」」」」」

8人の最後の会合は、いつもの言葉で締めくくられた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



後に、この次の日に起きた革命は『星の革命』と呼ばれ、この会合は『星の決意』と呼ばれることになる。

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