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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い
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フィンレー

Side Finlay


「皆さん初めまして、私の名はフィンレー・ドゥ・ロースティス=イーストフール。どうぞよろしく」

もうお手の物となったアルカイックスマイルで今日からクラスメートとなる彼らに挨拶をする。どうやらここは、成績上位者のみが入れるクラスらしい。全体的には高位貴族が多いが、いかにも平民らしき者もいる。――という事は、彼女が特待生で間違いないだろう。

だが、確かここにはもう一人平民がいた筈だが……。それ以外に平民らしき人物はどこにもいない。



――サボっているのか?



流石平民だな、と思いつつ、更に観察を続ける。傲慢な態度の生徒が多い中、その中でも更に傲慢な青年が目についた。恐らく彼がこの国の王太子、マティアス・ドゥ・セオドアだろう。挑発的な笑みを浮かべて、明らかにプライドが高そうだ。


国的には、こっちの方が立場が上なんだがな。鬱屈とした気持ちでそう思いながら、笑みを張り付ける。


教師に促され、俺はセオドアの王子の後ろの席に座った。何せ、右隣には婚約者らしき少女、左には護衛らしき青年が席を埋めていた。更に、前の席には学友なのだろうか、チャラそうな青年と真面目そうな青年がいた。


「やあ、初めまして。俺はマティアスだ。よろしく」

「よろしく。セオドアは初めてだからな、色々と教えてくれると助かる」

「そうなのか?でもすぐに慣れると思うぞ。この国はロースタスに似ているからな」

「マティ様」

俺の頬が引くついたと共に、左隣の青年が聞こえるか聞こえないかの声量で、やや咎めるように彼の名を呼んだ。


「……?ああ、すまない。悪気はなかったんだ。許せ」

自分の失言に気が付いたのだろう、尊大な口調は変わらずだったが。



――王族ってみんなこうなのだろうか?



自分が王族なのも忘れてそう思った。

ただ、王族であるマティアスはともかく、ただの護衛な筈の青年が、我が国の恥部について知っているとは驚きだ。あまり大っぴらにしてほしくないんだが。普通に恥ずかしいから。

一人の美女を巡って三兄弟で喧嘩した挙句国を割ったなんて話は本当に恥ずかしい。


セオドアの初代国王は、ロースタスの筆頭貴族だった男だ。公用語もロースタスと一緒だし、珍しい無宗教国家でもある。

言ってしまえば、国の先行きに不安を感じ、自分で新たな国を建ててしまった、という訳だ。


セオドアの名を聞く度に、少し気まずい感情が沸き起こる。こっちが一方的に思っているだけだが。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Ain


フィンレー・ドゥ・ロースティス=イーストフール。

唯一まともなロースタスの王族だ。緑の髪に黒茶色という風貌で、ロースタスの王族に相応しい色だ。今は毛ほどもないが、とても豊かな国だったらしい。美しい自然に豊かな大地。それを思わす色だからこそ、もてはやされているのだ。


調査では、特別やましいことは何もなかった。思想が一人孤立しているために、黒い所がないという事はない。だが、特段気にするようなものでもないので構わない。


性格はあまりいいとは言えない。他がいるなら、少し迷って他にするくらいだ。他がいないから仕方ない。交友関係はかなり派手だ。それもまあ、矯正すれば問題はない。……矯正できればの話だが。



そうつらつらと脳内で情報を思い返す。



――確かに、面倒だね。殺したくもなる。



僕はひどく冷めた気持ちで足元に横たわる男たちを見やる。先程僕が殺した暗殺者だ。

今までもいなかった訳ではないが、明らかに下等な暗殺者が送られてきている。今まで来ていた暗殺者は変わらずに来ているため、人手不足にあえいでいる様子はない。



「あ」

「……」

気配がしていたのは気が付いていた。何も言わなかっただけで。ただ、向こうは僕がいることに気が付かなかったらしい。濃厚な血の匂いに、頭が回らなかったのかもしれない。


「ど、どうしてお前がいるんだ、アイン!」

そこにいたのは、ラファエルだった。


「……どうしても何も、僕の仕事は学業などではなく護衛。ついでではあるが、あんたの標的も始末させてもらった」

「……それよりも何故俺の受けた依頼内容を知っているのか気になるが、ありがとう」

「別に礼も報酬もいらない。勝手に死んだだけだから」

「どんな戦闘をすれば人が勝手に死ぬんだよ!」

「片付けするから早く証明部位持っててくれないか?」

「相変わらず人の話聞かないな……」

ラファエルは溜息を吐くと、死体に向かってかがみこみ、手を合わせていた。


「違うのが混ざっているから注意して。深入りすると、今度はあんたがこうなるよ」

僕は、そう言いつつ、死体に足蹴にする。


「……どういう意味だ?」

「その死体に触らない方がいい。流石にそっちは面倒見切れない」

「面倒見なくてもいいが?」

「僕からすれば、あんたもこいつらも同じく弱いが、こいつらからすれば、あんたたち程、殺しやすい標的はいない」

「は?」

「天狗になっているようだから、老婆心ながら言わせてもらう。久遠に――特に皇月影について首を突っ込むな。多分いつか彼の存在を知ることになる」

「誰だ?いきなり日本人の名前か?」

ニホンジン?よくわからない言葉が混ざったが、僕は気にせず話を進めた。


「久遠の第九魔王子。現在行方不明」

「いや、分からないって。それだけじゃ……」

「証明部位は取れたか?消すぞ」

「「ま、待った!」」

「……」

一人増えた。

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