表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/282

失礼な奴

Side Raphael


「なあ、どういうことだ?アイツとは、邪魔しないという取り決めがあったんじゃないのか?」

「どういうことだい?」

「ステラが襲われたらしい」

「ああ、それか」

何やらギルマスは心当たりがあるらしい。


「いや、本当にそれは俺じゃない。そもそも向こうの方が手腕としては上なんだ。変なことをして邪魔者認定くらったら、こちらとしても困る」

「そうだな」

一睨みでギルマス含め、この場を制圧することができる実力。そんな化け物にどう勝てばいいのやら。



「たぶん、向こうはこちらが転生者、という事は知っていると思う」

「は?なんでまた……」

こちらのアドバンテージの一つだぞ。


「これは俺の落ち度もあるかな。自然に俺たちが知りえない筈の情報を出されたんだよ。つい頷いちゃった」

「馬鹿が」

「でも、こっちの人は転生という概念はない筈なんだけどね?」

「そうだな。転生?何それ美味しいの?状態だからな」

「そう。アインが転生者じゃないのは確定なんだけどなー!」

「何でだ?」

「だって、これに全く動じなかった……というより見向きもしなかったからね」

と言ってギルマスが指さしたのは、日本語で書かれた本だった。


「気づかなかっただけじゃないか?」

「ないでしょ。あの時この本は、俺の机の上にあった。俺の後ろに回り込んだアインもをれに気が付いてたけど、一瞥しただけだった。この世界には、日本に似ている国はあれど、日本語に似ている言語はどこにもない。つまり、転生者なら大なり小なり反応を示したっていい筈だ。それに、合言葉に桃を使ってるしね」

「あー、日本語に桃。この世界を知っている人物なら、これだけで俺たちが転生者仲間なのもわかるってか」

「名前も知ってただろうしね。ペスケ・ビアンケは白桃という意味がある。これで気が付いてもおかしくない」

「気づかんどころかどスルーだもんな。なら転生者説は消えるか」

それで気が付かないなら、そもそも俺達より上手なんて評価は相応しくない。そもそも知らないと考える方が自然だ。


コンコンコン。


「誰だ?」

「マスター、ラファエル様、客でございます」

「客?今日の予定にはないが」

「急を要する。そこにあの天使がいるなら話が早い」

「お前……!」

「ラファエルに興味があるのかい?――まあいいや。入っていいよ」

そうは言ってきたのは、先程話題にしてたアインその人だった――。


「誰だ?」

――と思ったら全くの別人だった。


赤茶の髪に、健康そうに日焼けした肌。そばかすが散らばっていて、その瞳は鋭い。ついでに……美形。


「ああ、あんたはあの日、あそこにいなかったか」

そう言いながら鬘を取りンハンカチで顔を拭いていた。その下から出てきたのは、アインその人だった。


「魔法じゃないのかよ!」

「魔法で変装して痛い目見たことがあったからね。――知っていると思うけど」

「あ、ああ、確かに……――ハッ!」

「主従諸共迂闊なようで」

盛大な皮肉を前に、何も言い返せない。


「で、何の用?あれは俺たちの所為じゃ――」

「あれの正体も目的も知っている。そもそも、あんたたちが原因なら、あんなに慌てることもない」

「失礼な奴だな」

「戦争も経験したことのない身で、英雄とまで称えられる僕たちが負ける筈がない」

「その戦争は、11歳で終わったけど?戦争に関われる年齢じゃない。それに、戦争の原因は、オケディアじゃないか」

「そうだね。原因の一旦は確実に僕らだ。僕たちがいたから、奴らは欲を出した」

その表情に、陰りが見えた気がした。しかし、それも一瞬で消え去った。


「本題に入る。そこの天使を貸してほしい。もちろん、そちらにも益はある」

「は?嫌だが?」

誰が吸血鬼風情と――。


「話を聞こう」

「ギ、ギルマス!?」

「話を聞くだけだから」

「そこの天使を鍛える。僕は研究資料が手に入る、そっちは手駒が強くなる。どうだろうか」

「ん―、でも今のままでも十分強いよ?」

「そうだ。お前の手を借りるつもりはない!!」

「どこが強いんだ。彼岸最弱が」

呆れたように言うアインの言葉に、知らないものが混ざった。


「「は?」」

「ん?おかしなことを言ったか?」

呆気にとられたように声を発した俺達と、首をかしげるアイン。じっと俺を見つめて、更に考えに耽る。


「どう見たって天使の筈なのに、きちんと言葉が喋れて感情のままに暴れたりもしない。翼だって、混血の奴よりかは素晴らしい。下手な純血よりも。なら、それなりに歳はいっている筈なのに、衝動という衝動がないように見える。吸血鬼に会って、好き嫌い言っているだけ」

「おい手前、俺を虚仮にするなよ」

珍しい長文に少し圧倒されつつ、癇に障る言葉に少しキレる。まあ?前世は社会人だったし?これくらいで子供にキレたりしないし?


「考え込んでいるところ悪いが、彼岸とはあの世のことだよな?」

「え?」

「「ん?」」

……どうやら、認識が違うようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ