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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第三章 すれ違い

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アインの計画

全てを九星の念話を通して聞いていた。ある程度状況が理解できた。……やっぱり、ステラが狙われた理由はあれなのかな。


一体何年前の話になるだろうね。今更すぎて意味がない筈だが、それは敵方も同じように考えていたようだった。だから制限時間なるものを設けたのだろう。それはこちらとしても、本当に都合よかった。何せ、生き残った奴らは一人一人が九星の全力を凌駕する。そこに僕が加わったところで焼け石に水。ノア兄さんの言った通り皆殺しにされる。



収穫はあった。まだ実証実験ができていなかった異能力をこめた札を実践に活用してもらい、データを取ることができた。ゼスト兄さんの奇襲にも役に立ち、ノア兄さんがどんなに敵に近づいても問題なかったとのこと。

それにしても、バンヴァタール、ヌフィスト、グレース……。昔から僕の調査網に引っかかってくる大物ばかりだ。よくステラは落ちなかったな、と感心する。

ユーリとアルテオは、当然その三人にああいう態度を取っても怒られない程の実力と立場の持ち主ではあるが、それ故に慢心が見え隠れしていた。

グレースには何度も蝙蝠を殺されたが、ユーリはちょっと蝙蝠がミスしても、気づいた気配がない。見た目だけ同じでも、中身がまるで違う。オケディアの歴史書を読み漁っても出てくる名だ。たかが生まれて15年足らずの人族の集団が、簡単に勝てる相手でもない。


ラース兄さんが刀を使うことはないものの、エリック兄さんとリズ姉さんは精霊が宿った武器を持っているから、少しはマシになりそう。

精霊の存在を全く信じていない割には、精霊が宿る武器を複数も作っているリズ姉さんは本当におかしい。リズ姉さんが打った刀を見たとき、顔が引きつりそうになったのを全力で取り繕った記憶がある。

なんで精霊が刀にとりついてるんだろうなー。しかも精霊王一歩手前の上位精霊が。なんでよりにもよって?


エリック兄さんの大剣についてたのは意志も貧弱な下位精霊だった。あれじゃあほぼ精霊の恩恵をあやかれないだろう。そもそも武器自体の性能が高すぎるからいいのか。


ただ、あれだけ強いウィキッド相手に実験検証した訳でもないから違うかもしれないが、バンヴァタールとどう戦ったのだろうか?まともに通じる武器もない上に、身体のスペックは相手の方が圧倒的に上。ノア兄さんには悪いが、死者も出ると思っていた。


ノア兄さんの策が功を奏したのか、ただ単純に運がよかっただけなのか。本格的に対策を練るべきだと再確認できた。向こうも向こうで気軽にこれる距離ではない筈だが、警戒しすぎてもちょうどいいくらいだ。何の力も込めていない札も何枚かノア兄さんに渡したが、それを必ず有効活用してくれるだろう。


それにしても……。九星の中で、異能力が覚醒している人物が少なすぎる。僕を入れて二人だけだ。もう時間が無くなってきているというのに。


だが精霊薬は完成していない。焦りは禁物だ。だが、同じところを堂々巡りしてばかりで、一向に完成に近づいた感覚がない。一体何が悪いのだろうか?あの出来事の中でも、異能力を覚醒させた人物はいないようだ。


ノア兄さんはどう思っているのだろうか。見た感じ、覚醒しているのはノア兄さんだが、覚醒してよかった、と思う反面厄介な異能力であることは間違いない。ゼスト兄さんは気づいていないようだが、水面下での争いは今のところ僕の勝利で終わっている。


自分の今の状況に気づかれると、ノア兄さんはマティアス様――マティ様に何か言いつけそうで怖い。マティ様は押しが強すぎる。つい従ってしまうし、血を餌にもしてきそうだ。……ペスケ・ビアンケの対処も考えないといけないし、元々の問題もあるのに、時間が無くなるのは痛い。いくら計画的に動いても、敵の動きが予測より速い。それに合わせて計画を修正しなければならない。計画を速めた分、時間が無くなるのに、やること自体はなくならない。


そもそも一か八かの賭けな部分もある計画だった。本当に忌々しい。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「アイン、準備はできたな?」

「はい、もちろんです」

夏季長期休暇も終わり、新学期が始まる。噂では、イーストフールの第二王子が留学してくるらしい。

色々な思想が入り乱れてそうだが、最もシンプルに言うなら、体のいい厄介払いだろう。


イーストフール、ヴァイド、ゼス――ひっくるめてロースタスは、今から約100年前、当時の王子三兄弟が久遠の第二魔王女に一目惚れし、取り合ったときに仲違いして国を三つに割った。そのうち長男が王となった国をイーストフールと言い、そこの第二王子は比較的”まとも”だった。


元々ロースタスはとても豊かな国であった筈なのに、度重なる内戦と国王を始めとする上流階級の浪費により、あっという間に国が傾いてしまった。それでも国として辛うじて機能しているのは、過去の遺産が大きいだろう。だが、それも時期に尽きる。それを危惧してるのが件の王子という訳だ。


実際、ロースタスの衰退は急激に進んでいる。それに気づいたのがイーストフールの第二王子のみという絶望的状況。セオドアで起死回生を望むのか否か。それでロースタスの未来が変わる。

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