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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第二章 ゲーム本編――始動

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死霊

最後に若干グロ。

Side Lara


「もういい加減諦めたらどうかしら」

「まだ……まだ!」

紫髪の男性は往生際悪くそう叫んでいるが、もはや死者がいない死霊魔術師。ただの強がりでしかない。


「ふふ、ラース君も来たことだし、もう諦めなさいな。そもそも私の目の前で死者を出すなんて、消してください、と言っているようなものだもの」

「……」

私の言葉に、彼は憎々し気に顔を歪めていた。


『ぐうの音も出ないとはこのことだねェ。ララ、そろそろ本気を出したらどうだい?』

『分かったわ。リズちゃんは動きたくてたまらないのね』

リズちゃんが私の近くから動けないのは、緑髪の男性が散布している毒の所為だ。少しでも体内に入れるとあっという間に絶命してしまうだろう……そんな強力な毒なのだ。



ちょっと解毒には手間取る。けれど私は、九星として戦場を渡り歩いていた時に見つけた毒を片っ端から異能力で解毒していった。

ノア君の勧めで、アイン君が研究途中に毒性を持ってしまった失敗作を異能力で無毒化していたり、よくそこら辺のもの食べてお腹を下すラース君に異能力を使ったりして、回復させていたり。一番鍛えられたのは、皮肉にも戦争によって傷ついた人々の回復だった。


そういう時、聖職者というのは一番都合がいい。そもそもステラは国教がない。オケディア時代もそうだったが、宗教というものが存在しなかった。そして、それは私の祖国であるゼスでも同じことだった。


そんな私が聖職者というのもおかしな話ではあるものの、他国では宗教というものがある。そして、教会は傷付いた人々を慈悲深い心で受け入れてくれる場所。だから、回復魔法と言えば教会というイメージがあるらしい。ノア君は、何故宗教に詳しいのかはわからないが、怪我人がたくさん集まる場所とその理由を教えてくれた。



でも、毒が効かないからってもっと強力な毒を使うなんて、流石にワンパターンすぎないかしら。

毒を使うなら、多少の駆け引きくらい欲しい。

まあ、私たちが眼中にないからこうしているのだろうけど。



でも、案外それが効く場合もある。今回は、まさにそれだ。


『うーん、ごめんね、リズちゃん。完璧な解毒は無理らしいわ。ちょっとサンプルを取って研究しないとね』

『そうなのかい?……まったく、嫌に厄介だねェ』

『そうね。ノア君もゼスト君も気を付けてね』

『なあララ。ちょっと俺の腕治してくれよ。痛くてたまらないんだ』

『なんだい、軟弱だねェ』

『このクソエルフ!一回腕引きちぎられてみればいいさ!』

『アタシは鍛冶師だからねェ!腕は人一倍気を遣うのさ』

『はあ!?』

『喧嘩、しない、しない』

『エリ兄、ララ姉は忙しそうだから、私が治してあげるよ』

『おう!ありがとな!』

相変わらずね、本当に。その様子に笑みが零れそうなのを抑え、凛とした表情で目の前の男性を見据える。


顔を思いっきりうなだれさせて、ぼそぼそと何かを言っている。


「……に………い…………く………………く………い………」

「なにを言っているのかしら」

「さあ、アタシにも聞こえないねェ」

私はリズちゃんと顔を見合わせた。


「ああ、憎い憎い憎い憎い憎い憎い…………………」

「「!!」」

一際大きく男性がそう呟いた。私とリズちゃんは、何か嫌な予感がして、何が来てもいいように身構える。私は聖属性を付与した結界を張り、リズちゃんはずっと背負っていた大槌を構えた。


男性はずっと不気味に呟いていたが、唐突に倒れてから全く動かなくなった。


「「は?」」

拍子抜けも拍子抜けだ。予想外の事態に目を白黒させながら、慎重に観察していると、血を流していることに気が付いた。まるで、毒に侵されたかのように。


「ララ、これって……」

「ええ、そうね。――恐らくは」

胸糞悪い。傷跡が残ったアイン君と、泣いて目を腫らしたミリアちゃん、辛そうに顔を歪めるラース君が脳裏に浮かぶ。


私が異能力を鍛え続ける一番の理由だ。



「ララ、死霊術に関して詳しいかい?」

「いえ……。霊にあまりかかわったことがないもの。私が知っているのは、異国の教会っていうところで聞きかじった、霊は聖属性に弱い、という事と、負の感情が強ければ強いほど霊は強くなる、という事かしら」

霊が宗教に通ずるものがある、というのが厄介ね。国民のほとんどが霊という存在を知らない訳だし。


リズちゃんが知っているのは、どこかで、誰かに聞いたような気がするかららしい。ちょうど、ミリアちゃんの英雄の話と一緒……。



「もう少しあの人に色々と聞きだせばよかったねェ。こういう状況にしっかり対応できたかもしれないのに」

「そうね」

後悔先立たずとはこのことだ。まあ、過ぎたものは仕方がないし、正直に言えば、あの人が語るもの全てが眉唾物だった。


だから話半分にしか聞いていなかったし、ミリアちゃんがある程度覚えていたのは、あの時ミリアちゃんが子供だからだろう。



こういう話をするのは、どうしようもない違和感が襲い掛かるからだ。


「でもまあ、相手の同士討ちで終わったわね。――なんか嫌な予感はするけれど」

「奇遇だねェ。アタシもだよ」

リズちゃんも、嫌な予感はぬぐい切れないようだった。


「案外弱かったね」

「ヌフィストの毒で死ぬなんてね。ユーリも私が殺したようなもんだし。本当に弱いわよね」

緑髪の男女が話し込んでいた。私たちを遠巻きに見つめ、死んだ仲間を軽蔑するように見下ろしている。


本当にウィキッドは最低な奴しかいないのかしら。

仲間を簡単に見捨てるなんて。紫髪の男性が死ぬことが分かっていて、猛毒を振りまいた。



「……さない」

何か声が聞こえたような気がした。


「リズちゃん、何か言った?」

「そう言うララこそ。何か声がした気がしたんだけどねェ」

「さない……!」

「ほら」

「ほらじゃないでしょ」

確かに聞こえた。それもはっきりと。


「許さない!!!」

後ろで声がしたのとリズちゃんが大槌を振り下ろしたのがほぼ同時だった。グチャ………と何か嫌な音と共に赤い液体が辺りに飛び散り、それがリズちゃんの後ろにいた私の顔にもかかった。


「成程、声の主は彼女だったのね」

「そこで冷静に分析しないでくれないかい?」

リズちゃんが大槌を除けたそこにいたのは、金の髪っぽいのが垣間見える肉片だった。白いものも見える。


「彼女、確かラース君が止めを刺していた筈だから、死霊術で蘇ったのね」

「そうだねェ。何に対して許さないのかはわからないけど、ララが言っていた負の感情は大きかった筈だ」

「となると、私気になることがあるの」

「なんだい?」

「なぜ彼女は()()()()いたのかしら?」

「あ」

この場にいる死霊術を操る存在はもうとっくに死んでいる。死んだ後じゃ、死霊術なんかできない筈だ。



――もし、その死霊術者が死霊になっていない限り。

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