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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第二章 ゲーム本編――始動

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えいゆう……?

Side Miria


『あいつってラースじゃなかったんだな』

『そう、なんだね』

『そもそもラース自身が彼岸だし、何よりラースは、リズより小さい』

『そうだな。ラースはちびだがあいつは俺よりでかいな。なら普通に別人か』

『おい聞こえてンぞ』

突然聞こえたラースへの悪口に、ラースが不機嫌で言い返した。


正直、笑える。


『お前らが何の話してんのかわかンねェけどさ、ここで好き勝手いうのはやめろ!!』

『ちびなのは仕方ないでしょ』

『うーん、笑いそうになるから、今はラース君の身長に関しては何も考えないでおこうよ』

『何で笑うンだ、ノア兄?なんで笑うンだ?』

笑顔でノア兄ににじり寄るラースを鮮明に思い描き、確かに小さいよね、と笑う。昔はアインよりはあったのに……。ラースがアインに会った後に少ししょんぼりしながら告げてきたことに、誰もが爆笑したのは記憶に新しい。


ラース、いつの間にかアインに身長を追いつかれていたらしい。あの子、実は同年代より背が高めだし、無理もない。



そんなことを考えつつ、金髪女の猛攻を凌ぐ、凌ぐ。正直、ラースやエリ兄のような力強さも、アインやゼス兄、ノア兄のような狡猾さも、ララ姉のような面倒くささも、オト兄のような隙のなさもないので、かなり戦いやすい。


この女がいかに力押しで戦ってきたかが分かる闘い方だ。ちょっと冷静さをなくせば動きが単調になる。


「魔術師に剣で負けるってどういう気持ち?」

「うるさい!!」

あえて煽ってみる。もっと剣に力が入ったが、その分動きがまた単調になった。――本当に分かりやすい。



九星でやっていた訓練を思い返してみても、異常なほどに環境が整っていたな、と思った。

その訓練が今生きている。



昔とある種族の恐ろしさを研究者からこんこんと話された。それは、未来私たちと必ず敵対することになる種族。正直、ウィキッドと聞いて最初はピンと来なかったけれど、戦うにつれて思い出すことができた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「彼らはね、どんなに切り刻んでも必ず再生するんだよ」

「へえ、そうなんだ」

「へえ、って……」

何故か顔が思い出せないが、優しい声をした男性だったことは覚えている。そして、研究のリーダーにしては、とても若かったという記憶がある。


「だって、05(ラース)01(アイン)と同じじゃない?昨日05が首を切られてたのを見ちゃって、もう死んじゃったんじゃないかって夜泣いたの。でも今ピンピンしてるでしょ?――あーあ。私の涙返してよ」

「その目の隈はそれで……」

「でも柊は嫌うの。見つけ次第すぐ魔法で燃やしてるのよ」

「そりゃあ、ねえ……?」

「だから、そいつらにも、倒し方。あるんじゃないの?」

05は鬼人だ。倒すには柊が必要になる。だから05は柊を燃やす。


「あるにはあるけど……。あまり現実的じゃないしなあ……」

「そうなの?どんな名剣でも05を殺せないけれど、柊巻き付けただけでどんな(なまく)らでも05を殺すことができるのよ?そっちもなかなか現実的じゃないでしょ?」

「それもそうだね。……彼らは、倒すことができる存在が限られているんだよ」

「え?」

「別に特別な手順は必要じゃない。でも、特別な力は必要だね。だからこそ、こんなことをやっている訳だし」

彼は少し罪悪感の滲んだ表情でそう言った。


「……魔族――その中でも彼岸の魔族は彼らを殺せるだろうね。でも、人間でも殺すことができる」

「そうなの?」

「うん。でも、その存在は今はいない。とっくの昔に殺された。まあ当然だよね。誰も自分を殺すかもしれない存在を野放しにはしない。――無害なうちに殺しておこう。それが普通だよ」

「うわあ……」

大人のドロドロとした事情が垣間見えた気がして、思いっきり顔をしかめる。


「彼らは英雄と呼ばれている。――英雄は、人類の希望だよ」

少し寂しそうな表情でそう言う彼の顔は、やっぱり思い出すことができなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



『英雄……』

ぽつりとつぶやいた。


『英雄?』

ラースが訝しげに聞き返してきた。


『ああ、英雄ね。でも突然どうしたの、ミリアちゃん?』

ノア兄は何か知っているようだった。


『彼らを……ウィキッドを殺せる人は、英雄だけ』

思い出したまま言葉にする。なぜ今思い出したのかはわからない。


『そんな話、どこかで聞いたことがあるわ』

ララ姉がそう言った。けれど、どこで誰に聞いたのかは覚えていないようだった。


『……まあないものねだりなンじゃねェか?九星に英雄はいないンだ。俺の到着まで待ってくれよ』

ラースは昔から嘘が苦手だ。それは本人も自覚している事実だ。だからこそ、嘘を吐くときは強引に話を終わらせようとする。


『それもそうだね。僕の見立て通りなら、九星に英雄はいない。仕方ないし、ラース君を待とう』

ノア兄が言うなら九星に英雄がいないのは本当だろう。じゃあ、どこが嘘なんだろう?


考え込んでしまっていた。正直、金髪女の攻撃はきちんと防いでいる。ただ、心ここにあらずな私の態度が気に食わないのか、更に攻撃が荒っぽくなる。


ただ、それはれっきとした油断だった。彼らは決して弱くないのに……。



「きゃあ!!」

目の前からの悲鳴に意識が現実に引き戻される。そう言えば、ゼス兄が何か言ってた気がした。確か、金髪女を見捨てる気だ、とか。


仲間ごと、私に攻撃してきたのだ。


無意識のうちに回避行動をとっていたらしく、いつの間にか金髪女からかなり距離が開いていたことに気が付いた。

オト兄に張ってもらった結界は、いつの間にか割られていた。


私が生きていることを知り、攻撃者――緑髪女が憎々しげに私を睨んでいた。



いつの間にか戦場の空気が変わっている。向こうが本気を出したのが伝わってきた。そして――。


「ミリア、避けろ!!」

オト兄の大声に驚きそちらを見たが遅かった。赤髪の大男が目の前にいたのだ。


エリ兄の腕が引きちぎられているのが見えた。オト兄も所々血を流している。


視界の端に映ったがララ姉は緑髪男のばらまいた毒に対処しているようだ。リズ姉はその毒に侵されないために、ララ姉から離れられないよう。ゼス兄とノア兄の姿は見えない。アインが作ったお札かもしれない。


私は剣を構えて少しでも衝撃を減らした。エリ兄とオト兄は目の前の男がラースに似ていると言っていた。ラースの拳と同じくらいの威力の拳を受ける!?冗談じゃない!!あんなの喰らって普通に立ってる方がおかしいのよ!!!


でももう既に時は遅し。私自身の油断が招いた結果だ。私は来る衝撃に身構えることにした。

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