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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第二章 ゲーム本編――始動

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ウィキッドの闘い方、エリックの戦い方

Side Eric


――数分前。



――チッ、なんて馬鹿力だよオイ!



俺は赤髪の大男から繰り出される攻撃を異能力を使いながら受け流したり、時には避けたりして何とかやり過ごしていた。

俺が捌ききれない分はオットーが何とかしてくれる、というのもデカい。俺達は本来一人で戦場に立つ訳ではない。それぞれが連携して一つの強大な敵を討つために設立された部隊だ。だからこそ、突出したこの力はあればあるほどいいが、一番重要視していない、という事だ。


オットーは繊細な性格をしているが、その分仕事は細やかでかつ正確だ。一瞬の判断が求められる場面でも、ミスをしない。だからこそ、俺の動きを阻害せずに敵の動きだけを阻害するように結界を張っている。

本当に動きやすい。


更に、ララの治癒結界の効果も相まって、いつもよりも力が出せているのはいいことだ。


それなのに、目の前の男にまるで勝てる気がしない。

俺が異能力をフルに使ってやっと跳ね返すことができる怪力、勢いをつけて切りかかっても途中で刃が止まってしまうほどの頑丈さ、更には――。


「そんな傷、かすり傷にもなりやしねェよ!!!」

どんな傷でさえも一瞬で治してしまえるほどの自己再生能力。こんな化け物、九星には二人しかいない。


片方は感情が乗らない瞳で大したこともなさげに一瞬で傷を治しそうだし、片方は目の前の大男と同じように得意げに治して見せるだろう。何なら、高笑いの声も似てるかもしれん。


「そうか、じゃあこれはどうだ!!!」

俺は高く飛びあがって、体重と異能力で操った重力を使って大男に切りかかる。大男はそんな俺の大剣を素手で止めようとした。

――が、できなかった。


「グハッ」

()()()()()()には、流石に耐えれなかったのだろう。上半身と下半身が見事に泣き別れていた。


だが、俺は慢心しない。俺は何年も間近で見ていた。



アイン(人外)ラース(人外)のぶつかり合いを。

首が落ち、心臓が握りつぶされ、上半身と下半身が泣き別れる。二人が対峙すると、そんな光景は当たり前になる。――そう、九星は良くも悪くも、人外という存在に慣れすぎていたのだ。



俺は念入りに火魔法で塵も残らぬように焼き尽くしてやった。ちょうどラースがアインに対してやっていたことだ。ちなみにアインは一匹の蝙蝠から見事に復活してラースの心臓を真後ろから握りつぶし、首を素手で刎ねていた。


だから当然、この男も似たようなことをしてくる筈だ。俺は辺りを警戒し、油断なく大剣を構えていた。


殺気のした方向に無意識で大剣を振るう。そこには、()()が真っ二つになっていた。



――なら上か!!



俺が上を警戒したのとあの大男の攻撃が飛んでくるのはほぼ同時の出来事だった。




一瞬、何が起こったのか、訳が分からなかった。死んだ――確かにそう思った。完全に不意を突かれたのだ。だが、目の前で奴の攻撃が止まっていることを考えると、答えは一つ。


「サンキューな、オットー!!」

「油断、し過ぎ……」

耳が痛い。でも言い訳させてくれ。こいつ、今まで本能でしか戦っていなかったんだよ。まさか、アインと同じ戦い方するとは思わないだろ?


「あんた、意外に頭使うんだな」

「ん?これは大昔に仲間だった奴から教えて貰ったんだぜ?」

「なんだ、あんたが考えたんじゃないのかよ」

「違うな。俺達は見ての通り、回復が早いだろ?それを使った作戦だよ。まあ、なぜかお前らには見破られてたがな!!ハッハッハ!」

こいつ、頭悪そうだな。

自分のことは棚に上げて、そう考える。まさか自分からペラペラ話すなんてな。なんか、そういうところもラースそっくりだ。あの緑髪はさしずめミリアに似ているのか?


「でもお前らの仲間に、魔族はいなさそうだがなァ……。……あ、でもヌフィストは別にそんなこと言ってもなかったか。まあでもいたとしても此岸だけだろうな!」

『あいつってラースじゃなかったんだな』

『そう、なんだね』

こんなにもラースぽい発言しておきながらラースじゃないのは罠だろ。髪色も似てるし。馬鹿さ加減も似てる。だが――。


『そもそもラース自身が彼岸だし、何よりラースは、リズより小さい』

『そうだな。ラースはちびだがあいつは俺よりでかいな。なら普通に別人か』

『おい聞こえてンぞ』

ラースの不機嫌そうな声が響く。当然、九星間のテレパシーは九星内で共有している。誰かがそこで何かを言えば、当然それが九星全員に聞こえる。……だから今ここにいないラースやアインにも聞こえている。


『お前らが何の話してんのかわかンねェけどさ、ここで好き勝手いうのはやめろ!!』

『ちびなのは仕方ないでしょ』

『うーん、笑いそうになるから、今はラース君の身長に関しては何も考えないでおこうよ』

『何で笑うンだ、ノア兄?なんで笑うンだ?』

ラースはまだここに到着していない。だからこそ、到着したときにすべての謎が解けるのだろう。ちなみにアインはなんとなく察してそうだが。


『おい、ふざけるのもいい加減にした方がいいぞ。奴ら、そろそろ本気を出す』

『え、あれが本気じゃないの』

『ミリアと、ララ、リズが対峙している二人は見捨てるんだと。だから……来るぞ』

ゼストの忠告通りに、濃厚な殺気があたりを立ち込めた。お遊びはここまでだ。そう言われた感じがした。



「俺たちの目的はあくまでステラの占領だ。お前らと遊ぶのは楽しいが……グレースに怒られちゃあ仕方ない。片を付ける」

先程までのヘラヘラとした表情は、一切なくなっていて、それが少し恐ろしく感じた。

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