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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第二章 ゲーム本編――始動
66/187

九星の厄介な女

Side Grace


ちょっと!聞いてないわよ!!


私はそう言いたい気持ちをぐっとこらえて鉄扇を構える。しかし、攻撃はしない。



今のところ苦戦しているのは、ユーリとアルテオ。

タールに関しては、完全に任せるべきね。


ヌフィストと共に誰をどう支援するかで考えあぐねている状態だ。

私は、鉄扇で風の刃を飛ばすのが基本の攻撃だ。それをどう、いくら派生したとしても、そこのところはあまり変わらない。つまるところ―――。


「全く、アナを散々馬鹿にしたあのガキはどうやら煽り耐性も低いようね!すぐ周りが見えなくなるんだから!!なに接近戦に持ち込まれてんのよ。どう攻撃したって私の攻撃もユーリに当たるし、そうなったら支援じゃなくてただユーリを邪魔することになるじゃないの!!もっと考えて行動しなさいよね!!!」

見ている限り、いつかは均衡も崩れるだろう。もしユーリに有利になる方に崩れるならいい。だが、どう考えてもそういう都合のいい展開にはならないようだ。はあ、切り捨てるしかないか。


ユーリは敵の挑発にすぐ乗るし、そのせいでいつも雑な攻撃がさらに雑になる。

それに対してあの青髪の女は本職は魔術師のようだけどあの剣術はとても優れている。

あの女自身の技量もさることながら、あの剣術はそのものが美しい。なめらかで無駄がない。それに、踊りを踊っているかのような体裁きだ。


あの女が考案した剣術ではないのだろう。なんとなくそういう感じがする。つまり、あれ以上がいるという訳だ。まあ、剣術は認めてやらんことはない。


それに青髪の女は確かに強力ではあるものの、倒しようはいくらでもある。

それに気づかないユーリはそこまでなんだろうな。



だが、アルテオが相手取っているプラチナブロンドの女。あれは化け物だ。


気配からも、特にこれといった特別な力を持っている訳でもない。厄介な彼岸どころかそもそも魔族ですらない。なのに、だ。


アルテオにとっては、聖属性持ちとの相性は最悪だ。それでも彼我の差はとんでもないほどだ。だからこそ、今まではごり押しでもなんとかなっていた。

魔族は聖属性はもちろん、それなりに相性有利である光属性すらほぼいない。


彼岸を蹴散らした実績があるアルテオだが、唯一浄化に特化した種族である天使に出会うと尻尾を巻いて逃げるしかなくなる。

そう、逃げることはできるのだ。



だが、今は逃げることは許されない。アルテオとユーリはまだ気が付いていないようだが、破るのに一苦労しそうな結界が国全体に張り巡らされている。その上、あの女を中心に味方しか効果がない強力な治癒結界も敷かれている。怪我をした瞬間に奴らは治るのだ。


「うーん、俺もさ、一応毒は散布してるけど中毒状態になったと同時に毒が分解されるね。それに一度使った毒はもう使えない」

ヌフィストは困ったような表情をしている。これは、本当に打つ手なしの顔だ。


「どうするのよ。このままじゃユーリもアルテオも死ぬわ。タールは大丈夫そうでも」

「そうだな。タールは大丈夫だろうが、他の奴らはやばいな」

ヌフィストと会話しながら、何とか隙をうかがう。

しかし、奴らはこちらもしっかり警戒している。青髪の女はユーリを盾に私とヌフィストに攻撃されないように立ち回っているし、プラチナブロンドの女はアルテオに穏やかに微笑みながらこちらに鋭い視線を送ってくる。

特にあからさまなのは金髪のエルフだ。挑発するような笑みを浮かべてくるので、本当に神経を逆なでされる。ただ殺すだけじゃ足りない。殺してほしい、ってお願いされるぐらいは拷問しつくす。


「あーどうすんのよ!簡単に占領できると思ったのに!計算違いよ!!」

「さすがに舐めすぎていたか……。だが、特に問題はない。要は、ユーリとアルテオを見捨てれば、この国は占領できる」

「――そうね。ユーリもアルテオも代わりは他にいるし、何よりオケディアの占領は重要よ。さっさと殺しましょう」

ヌフィストと共に攻撃態勢に移ろうとしていたその瞬間だった。


「仲間を見捨てるの?ちょっとびっくりだなあ」

唐突に、後ろから声がしたと思った。


「ガッ」

振り返ろうとしたら、ヌフィストが額から血を噴出させていた。


「お、お前……!」

私は鉄扇を振るい、攻撃の来た方向へ風の刃を無数に放った。


「タール!いつまで遊んでんのよ!これは遊びじゃないんだからね!!」

「これが遊んでるように見えるのか?こいつ、力が強いんだよ。俺以上にな!!」

「はあ!?たかが人間にそんな力が出る訳ないでしょう!!さっさと倒しなさいよ!」

「仲間なんだからさ、喧嘩はダメだよ」

タールと言い合っていると、突然そんな声が聞こえた。バッと体ごとそちらに向く。しかしどこにもいない。――いや、そもそも気配すら感じない。


「隠れてないででてきなさい!」

そう叫んだ瞬間、風切り音が聞こえた気がした。ほぼ無意識にその場から飛びのく。ふと地面を見てみると、地面がひび割れており、その中に光るものがあった。


「これは……?」

「これ、すごいね」

ヌフィストが復活したようだ。


「一応毒は散布しておくか。お嬢ちゃんに一切通じなかったから、どうせ意味ないんだろうけれど」

「……あんたの毒って、確か1000を超える毒物の混合物じゃなかったかしら」

「少し情報が古いね、2500だよ」

爽やかな笑顔でとんでもないことを言う。相変わらずによくやるよ。


「それに、毒は基本的にあんたの自作。つまり解毒薬なんかない筈なのに……!」

「たぶん『無限(エターナル)()(リヴァイヴ)』だろうね。治癒系の異能力の中で一番強力な異能力だ。確か九星にこういう二つ名があった。――”不死の聖女”というな」

確かに、殺しても死ななそうだものね、あの女。

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