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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第二章 ゲーム本編――始動

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仲良くなりたいんです!

「あ、あの!」

朝食を終え、皆思い思いに過ごしている中、サティが声を上げた。


「私、もっと皆さんと仲良くなりたいです!ジェシカ様とお話したのもあるんですが、もっと皆さんと仲良くなりたいんです!」


……実際驚いた。まっすぐで純粋。まっすぐは僕の周りにもいた。でも、純粋となると、それはいないように感じる。ミリア姉さんも、ララ姉さんも、ラース兄さんも、エリック兄さんも、リズ姉さんも。どこか歪で、世の中を斜に構えている所がある。達観している所があり、彼らの苦い笑顔を何度も見てきた。



人は、魔族でさえも必ず死ぬんだよ、とはリズ姉さんが言っていた。その時のリズ姉さんは、片腕を失っていた。


一番恐ろしい化け物は、魔物じゃねぇ、人間だ、とはエリック兄さん談だ。いつもは服の中にしまっている小さな小瓶を取り出し、せつなそうに眺めていた。


人ってさ、ものすごく脆いンだよ、簡単に壊れちまうの、と笑ったのはラース兄さんだ。ただ僕は知っている。その笑顔の裏には悲劇が隠れている、と。


ミリア姉さんは……とにかく九星(僕たち)を戦争に駆り出す政府に呆れていた。



「へえ?いいね、可愛い子なら仲良くなるの、大歓迎だよ」

マルティン様がニヤッと笑う。アムステルダム様がそんな様子に呆れていた。


「サティ!私たち、ってもう友達よね!?呼び捨てで呼んでいいわよ!」

そんなサティに抱き着くグラッチェス様。時々しか見たことない姿に、また内心驚いた。


「ならアインも巻き込もうか。いつまでも愛称で呼んでくれないからな」

マティアス様が怪しい笑みを浮かべてこちらに近づくので、僕は少し後ろに下がってしまった。


「確かに、いつまでも他人行儀なのも嫌だしな。それに長ったらしい姓じゃなくて、名前で呼んでくれる方がいい」

「ジャスパー様の方がシモンズ様より長いのですが」

ルーデウスが至極もっともなことを言う。


「シモンズは一人じゃないぞ?ジャスパーは一人だし、愛称で呼べば短くなる」

確かに、シモンズ様の言う通りでもある。


「まあ、反対しない」

アムステルダム様が腕を組みながらそう言った。なんだか珍しい感じがする。

ジークハルト様は笑顔で頷いている。


「俺は、カーティスって呼んで~。カティでもいいけれど、サティと混ざりそうだね」

「僕はジークでいいよ。名前、長いしね。兄上とジェシカはそう呼んでいるし、他の友達もそうだから」

「ぼ、僕は……昔お母さんにルー、って呼ばれてたかな」

「ああ、そういえばお前は庶児だったな」

「え!元平民なの!?」

「うん。母さんがなくなったから、父上に引き取られたんだ」

「よくある貴族の闇の部分だよね。そういう家ってあまり信用できなんだよね」

「確かにそうだな。全てそうとは言い切れないが、そもそも使用人に手を出した上、その使用人を娶らない主人も、その使用人が生んだ子を迫害する夫人も深くは信用はできないな」

「ルー様は、そういうことはなかった!?」

「父上は僕には無関心でしたが、義母上からは虐げられました。兄上は優しくて、僕を守ってくれたのですが……。アインさんが気づかなければ、その兄上とも会わず仕舞いでした」

「本当なのね……。貴族って怖い」

「まあ、色々と気にすることが多いしね。貴方も平民だからって油断していると、虐められるかもしれないわよ」

「お、脅かさないでよ!!」


と、みんなで集まってワイワイ話している。

僕はそこに入り辛く、少し離れたところでじっと見つめていた。


「入らないのか?」

マティアス様が僕に話しかけてきた。


「はい。……僕には―――――――」

言葉尻をすぼめて話す。話しているうちに、だんだん自信がなくなり、足元に視線を落とした。


それが聞こえていたのかどうかはわからないが、マティアス様は僕の手を取る。


「別に、気に負う必要はないだろ。お前はお前だ。むしろ、お前が行かないことの方が問題だと思うが?」

「そう、ですかね……」

僕はなかなか一歩を踏み出せなかった。


「そもそも、お前に文句を言えるのは俺だけだが?つべこべ言わず、いいから来い」

そう言って、マティアス様は僕の手を無理やり引っ張った。


「わ」

別に、そこまで踏ん張っていたわけではないものの、思った以上に力強かったために、驚く。


その時初めてマティアス様の顔を見た。自信満々の表情。僕の中に全くないそれに、どうしようもなく羨ましく感じる。自分なんか、という卑屈な考えが癖のように浮かび上がる。


「おい、言ったよな?お前に文句を言えるのは俺だけだって。お前はただ俺に従っていればいいんだよ」

少し拗ねたようにそう言い、マティアス様はずかずかとあの輪の中に足を踏み入れた。


「聞き分けのない俺の護衛は、いつ俺を愛称で呼んでくれるんだ?」

意地悪い声で、マティアス様は僕の耳元で囁いた。

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