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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第二章 ゲーム本編――始動
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未来は霧の中

Side Otto


「これで終了か。――なあ、オットー、一回結界張ってくれ」

「ん」

私はエリックに言われたとおりに結界を張った。しっかり結界が張れたのを確認すると、改めて周囲を確認した。


周囲には侵略者たちの死体が山積みになっていた。建物への被害を最小限にしてはいたものの、ある程度は防げなかったようだ。



「多かったな」

「そうだな」

ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返していたが、量が多いだけで弱い。


「これで、ステラが侵略できると思われているなんて、舐められすぎだな」

「そうだな」

そもそも九星はノアの未来予知があるから強いのではない。一人一人の強さが強い上に、軍隊としての連携の訓練も行っている。――戦場では、そもそも強すぎるため、それを振るう事はないが。



「ノアがラースを呼び戻すほどではないんだがな……」

「このままで、終わるのは、なんだか、すっきりしない」

まだラースも帰ってきていない。ぎりぎりでラースが帰ってくるとノアが言っていた。これじゃあラースは完全に遅刻している。


「まだまだ警戒する必要があるな」

「ああ」

エリックの言葉に私は頷いた。


「まあ今は、警戒しながら体を休めよう。ひとまず人手は誰も必要としていないみたいだしな」

私は右手をこめかみに置き、九星のメンバーからの通信がないのを確認した。


これからどうなるのか――。私は見通せない未来に、思いを馳せた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Zest


「おい、かれこれもう何人も倒したぞ?奴らは学ばんのか?」

「学ぶ前に殺しているから、学ぶ隙がないんだよ。そもそも学ぶ隙も与えない」

ノアは穏やかに笑うが、かれこれ何十人は殺しているので、流石は九星といったところだろう。



「まあ、これから大物が来るからね。何人か倒せればいいけれど……。ちょっと色々と未来が入り乱れていて、未来が読みづらい。ただ分かるのは、3つ。勝つのは僕たち、一番と二番と三番に厄介な奴は倒せないこと、それと――そいつらにアイン君を会わせてはいけないという事だ」

「ずっと不思議に思っていた。アインを呼び戻さない理由を。アインも連れてくれば、アインも憂いを覚えることもないのにな、と」

アインは色々と気を使いやすく、気に病みやすい。何もしていないと、思いつめる一面があるのだ。

アインの精神衛生上、そういうのは取り除いた方がいいと思うのだが。



「アイン君のことは、心苦しいけれどね……。他のことで協力してくれればいいんだ。そもそも、今アイン君はセオドアとの国交の大切な礎となっている。それ以外でも、アイン君はたくさんステラに貢献して貰っているのに……」

「まあ、アインは色々と研究もしているし、九星間で使えるテレパシーの魔法を完成させたらしいしな。今も新しい魔法を開発してくれているし、貢献度だけで言えばノア並みに貢献していると思うんだがな」

戦いがなければ、国にまともに貢献できない俺たちは、未来視を使って国の危機を予見するノアや、研究に研究を重ね、新たな魔法を開発したり、異能力を強化する薬を研究している。まだ薬は完全に開発できていないようだが、開発途中のものでもかなりの効果ではある。


使用に厳重な注意が必要なのが難点らしい。俺は一回しか使ったことがないが。


「まあ、アイン君はそういう子だし、ラース君曰くセオドアでもそこまで心配するような事態は起こっていないようだし、そこまで心配する必要もないみたいだね」

「そうだな。目下の問題児はラース時々ミリア、エリック、リズだしな」

よく嘆願書から名が挙がる四人だ。


「そうだね。ラース君は、……色々とものを破壊しまくっているしね……」

「ミリアは魔法でやりすぎることがあるし、エリックやリズはいまだに喧嘩しまくっている。九星にはまともなのが少ない」

アインは部屋に引きこもって研究三昧だし、ミリア、ラース、エリック、リズは問題児。ララも実は一癖あるし、ノアも割とドライな所がある。オットーは……人見知りな普通な人だ。



そんな平和な会話をしていると、どうやら目的地に着いたようで、少し先を先導していたノアの足が止まった。


「ここか?」

「そうだよ。ここに、転移魔法陣がある」

「転移魔法陣?」

まさか、ここに敵が転移してくるのだろうか。


「ララたちや、エリックたちを呼ばないのか?」

「一応ここ以外にも魔法陣はあるしね。ここに戦力を集中させすぎると、他の手薄な所に行くだろうね。流石に、転移先の偵察ぐらいはできるだろうし、何よりアイン君からもらったあれは、九星七人の存在なんか消せる威力はない」

「あれ?」

「アイン君の異能力を込めた札があるんだ。これは、素材の関係で使い捨てなんだけど、九星並みの強者でも三人までは完全に気配を消すことができるらしい。神の目ですら欺ける。――ただ、あまりにも強力すぎて、何度も使えるようにはできなかったんだって。僕もよくわからない制約があるみたい」

そう言って、ノアはミミズが這ったような字が書かれていた紙を指で挟んでいた。


「うん、そろそろだね。使うよ。一応、僕とゼスト君は互いに認識できるようになっているらしい」

「本当に、アインって優秀だよな、研究者として」

そもそも異能力を付与できるのは、かなりすごいと思う。そもそも方法が思い浮かばない。


「本来は研究者になりたかったんだって。戦争に参加して、人を殺したくはないんだって。――本当に残酷だよね、世界って」

「――そうだな」

どんなに戦いたくなくとも、戦わなければいけない。そういう()()だ。



「終わったらみんな、何をするんだろうね」

「俺とお前は、今とほとんど変わらないんじゃないか?他の面々も。半分は戦いから退くんじゃないか?性格的に向いてないし」

俺とノアは、国の運営にかかりきりになるだろう。ララは、王妃としてノアと共にこの国を支えていくのだろう。


アインは研究者になるだろう。リズは世界で一番の鍛冶師として、戦いから身を引く気がする。


他は、そもそも戦いが嫌いな訳でもないから、そういう役目を務めることになるだろう。


だが――。



「まだ終わっていない。俺たちは何もしていない。――俺たちは、まだ、戦わなければならない」

「そうだね。――本当に、終わって欲しいよ。異能力を使う度に――」

「ノア?」

ノアの顔に影が差した。


「――何でもない。さ、そろそろ戦闘が始まる」

ノアは、指先に異能力の光を灯した。次の瞬間、自分の存在感がなくなる感覚がした。

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