避暑しに行きましょう
「行かなくてよかったのか?」
マティアス様が、僕にそう言った。
「はい。僕がいなくとも、解決できるようですし、ノア兄さん曰く今僕がステラにいるのは不味いんだとか」
「……そうなのか」
マティアス様はあまり納得していないように見えた。
「僕は僕でやることがありますし、ラース兄さんに色々と持たせました。僕ができることは、ここまでです」
「ステラに行きたいと、思わないのか?あの口ぶりからして――」
「マティアス様。それはエゴというものです。自分のしたいようにしたとして、事態が悪化するのは見過ごせません。ノア兄さんのいう事は絶対です」
僕は努めて淡々にそう言った。マティアス様はそんな僕を見て口を閉ざしてしまった。
しばらくの間、沈黙が流れる。手をせわしなく動かしていたマティアス様は、意を決したようにこう言った。
「避暑しに行こう。人も何人か誘って俺の別荘に行く」
「了解しました。準備します」
僕は一礼すると、マティアス様の寮部屋から外に出た。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
というのが一週間前の話である。マティアス様から別荘に招待するメンバーは、グラッチェス様、アムステルダム様、マルティン様、ルーデウス、サティそれと弟君のジークハルト様だ。
見事ジークハルト様の護衛に収まった、シモンズ様もいる。
「ジーク、久しいな」
「兄上、御学友だけで楽しめばよかったのに……」
「俺が招待したことに、文句を言うのか?」
「いや、ないですが」
そう言うジークハルト様は少し居心地が悪そうだ。
僕も、ひそかに何故マティアス様はジークハルト様を招待したのか、不思議に思っていた。
だが、いくら考えても仕方がないことは、いくらでも存在する。
僕は気にしないことにした。
「あ、あのアインさん」
「なんですか、サティさん」
おずおずと言った風に話しかけてくるサティ。顔が曇っている。
「私って、ものすごく場違いじゃありませんか?」
「いえ……マティアス様が招待された客なら、場違いではないですよ。――よほど無礼な態度を取らない限りは許していただけるような優しい方々です」
「うう……。緊張する……」
「いつも学園で貴族と顔を合わせているじゃないですか……」
そう言うんじゃないんです!と言われたが、僕は間違っているのだろうか?
「ジーク様、お久しぶりです」
「久しぶりだね、ジェシカ。来年から僕も通うけれど、学園はどんな感じ?」
「楽しいですよ。交友も広がりますし」
「そうなんだね、君も久しぶりだね、アイン」
「お久しぶりにございます」
ジークハルト様は僕の姿も認めると、話しかけてきた。
ジークハルト様とは、学園に入る前に会ったことがある。柔らかい物腰で、見た目はマティアス様に似ているものだから、初めて会ったときは違和感が強かった。
マティアス様にはジークハルト様以外にも兄弟がいる。年の離れた姉と、もう一人弟と、その下に妹がいる。マティアス様の姉にはあったことはないが、それ以外の兄弟にはあったことがあった。兄弟仲はいいので、会う機会が必然的に増えるのだ。
「アイン、兄上が無茶言ってきてない?」
「大丈夫です」
「そう……あにうえは一週間前の話である。マティアス様から別荘に招待するメンバーは、グラッチェス様、アムステルダム様、マルティン様、ルーデウス、サティそれと弟君のジークハルト様だ。
見事ジークハルト様の護衛に収まった、シモンズ様もいる。
「ジーク、久しいな」
「兄上、御学友だけで楽しめばよかったのに……」
「俺が招待したことに、文句を言うのか?」
「いや、ないですが」
そう言うジークハルト様は少し居心地が悪そうだ。
僕も、ひそかに何故マティアス様はジークハルト様を招待したのか、不思議に思っていた。
だが、いくら考えても仕方がないことは、いくらでも存在する。
僕は気にしないことにした。
「あ、あのアインさん」
「なんですか、サティさん」
おずおずと言った風に話しかけてくるサティ。顔が曇っている。
「私って、ものすごく場違いじゃありませんか?」
「いえ……マティアス様が招待された客なら、場違いではないですよ。――よほど無礼な態度を取らない限りは許していただけるような優しい方々です」
「うう……。緊張する……」
「いつも学園で貴族と顔を合わせているじゃないですか……」
そう言うんじゃないんです!と言われたが、僕は間違っているのだろうか?
「ジーク様、お久しぶりです」
「久しぶりだね、ジェシカ。来年から僕も通うけれど、学園はどんな感じ?」
「楽しいですよ。交友も広がりますし」
「そうなんだね、君も久しぶりだね、アイン」
「お久しぶりにございます」
ジークハルト様は僕の姿も認めると、話しかけてきた。
ジークハルト様とは、学園に入る前に会ったことがある。柔らかい物腰で、見た目はマティアス様に似ているものだから、初めて会ったときは違和感が強かった。
マティアス様にはジークハルト様以外にも兄弟がいる。年の離れた姉と、もう一人弟と、その下に妹がいる。マティアス様の姉にはあったことはないが、それ以外の兄弟にはあったことがあった。兄弟仲はいいので、会う機会が必然的に増えるのだ。
「アイン、兄上が無茶言ってきてない?」
「大丈夫です」
「そう……兄上は自分勝手な所があるからね……」
「おい」
マティアス様が低い声を出していた。
「俺のものにちょっかい出すなよ?」
「兄上……」
マティアス様が笑顔でジークハルト様に詰めている。マティアス様は笑顔ではあるが、目が全く笑っておらず、怖い。そんなマティアス様に、ジークハルト様は呆れているようだった。
「初めまして、アムステルダム公爵令息、マルティン公爵令息、ソルセルリー伯爵令息。――それと彼女は……?」
「は、初めまして!私はサティと言います!」
「珍しいね、兄さんの周りに女性ってジェシカぐらいしかいないと思ってた」
「ああ、そいつは入試でアインと同じく俺の成績より上回ったんだ」
「それだけ?」
「それ以外にはない」
そう二人が話している所に、シモンズ様が僕に声をかけた。
「アイン、あとで勝負しないか?」
「分かりました」
「あれから私は腕を上げたんだ」
そう笑っているのを見て、少し気の毒に思ってしまった。




