少年の決意
投稿に間があってすみません!
少し描写を詳細にしました。
革命が起きた時が間違っていました。時系列がおかしかったです。
アインが11の時に革命が起きてんのに、なんで6年前だよ、今13歳だよ。
Side boy
オケディアは、とても強い国だ。他国との戦争でも負けなしで、小さい頃からずっとオケディア軍に入ることが夢だった。
遠くからオケディア軍の人たちが訓練しているのを見ていてその度に、格好いいと思っていた。
しかし、今から2年くらい前、突然革命が起こった。父さんも母さんも、学校の先生も何が起こったのかなにも分からないままに終わった。
俺の憧れだったあのオケディア軍が国王を裏切ったのだ、と子供心がその事実を受け入れることは難しかった。
そして、革命を起こした人たちを毛嫌いするようになった。
革命が起きたとしても、何も変わらなかった。一つ変わったとすれば、俺はあの日から一言もオケディア軍に入りたい、と言わなくなったことだ。そんな俺に父さんも母さんも心配したものの、何も言わなかった。
街の大人たちは、革命について褒めたたえたり、批判を言ったりしていた。だが、オケディア軍に心底失望した俺は、全く興味が湧かなかった。――なぜ、オケディア軍が革命を起こしたのかというのを。
時は流れ、俺は学校の高等部に通っていた。まだ軍に憧れていた時の習慣がまだ残っていて、毎朝体を鍛えていた。いつかは父さんの仕事を継ぐことになる。父さんの仕事は体が資本の仕事だ。鍛えておいて損はない。
「よし、素振り100回終了、と」
だが、未だに木刀の素振りを行っている。何となく体に染みついてしまった習慣だったため、それをやらないと、なんだか気持ち悪いのだ。
毎朝そんな自分を自嘲して一日が始まる。
変わらぬ日常。それが今日も始まると、俺は信じて疑わなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
授業が開始するチャイム。その音が鳴り終わると同時に教室の前のドアが吹っ飛んだ。
「ほうほうほう。ここには粋のよさそうなガキが大勢いるなァ!こいつらの悲鳴はどんな味がするのか、楽しみだぜ」
野蛮そうな男が顔に狂気的な笑みを浮かべて話す。
「全く、遊びに来ているんじゃないのよ?」
頭にかかった埃を振り払いながら、男の後に教室に入ってきた女は、不満そうな表情をしながら男にそう注意した。
が、次の瞬間、ニィと唇を弧を描くように歪める。
「――まあ、数人くらいは生け捕りにして、おもちゃにしてみてもいいかもしれないけれど」
「っしゃあ!じゃ、だーれーにーしーよーうーかーなー。よしッ!お前だッ!」
女からの許可が出て、男は嬉しそうに選別していた。――そして、その男はある一点を指さしてそう言ったのだ。
「お前、この中で一番ガタイがいいし、鳴かせたらさぞかしよさそうな悲鳴を出しそうだなァ……!それに、ちょっと乱暴に扱っても簡単に壊れそうにもないし」
「いいんじゃない?」
「ちょ、ちょっと待てよ!そ、そんなの、嫌に決まってんだろ!!!」
男が指さした先にいたのは――俺だった。
「まあまあ、ちょっとこっちの事情でステラには堕ちて貰わなきゃなんねぇからさ、仕方ないだろ?」
「そうよ。今すぐ殺されないことに感謝すればいいわ」
「はあ!?それに俺たちを巻き込むなよ!!」
「それは運がなかった自分を恨みなさいな?私たちには興味ないわ」
そう言って、侵略者たちは高笑いした。クラスメイトたちはその笑い声に絶望の表情を浮かべる。かくいう、俺も絶望の気持ちを抱えた。あいつらは、自分たちの実力に自信があるからあんなに余裕なのだ。
――だが、このままはい、どうぞと殺されてやる訳もない。
俺は覚悟を決めた。幼い頃に憧れたオケディア軍のように。――絶対に諦めない。
「あら?まさか私たちとやり合う気?」
「お、いいじゃねぇか。やろうぜ!!」
木刀を持った俺に侵略者たちはすぐさま反応した。
「そう簡単に殺されてやるかよ!!俺は!自分の命は自分で守る!」
そう言って飛び掛かった。
しかし、当然相手に敵う訳もなく、簡単にいなされてしまう。遊ばれている、というのがしっかり分かった。
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「さっさと諦めたらどうだ?さんざんやって分かったろ?どうやってもお前は俺たちに、勝てない」
「まだ!まだ!」
「はは、お前はステラが滅びゆくさまを、特等席でゆっくり見ているんだな!!!」
「は?ステラが滅びる?」
男が得意げに高笑いをしたその時、突然女性の声が聞こえた。
「ふざけるんじゃないよ、その程度の実力で、どうアタシたちに対抗する気だい?」
「そうよ!あんたたち、私たちを舐めるんじゃないわよ!!!」
「私たちがいるのに、どうしてこの国をもう堕とした気になっているのか……。九星が全員揃ってもないのに余裕で撃退されるのに、とんだ勘違いをしているようね」
壊れたドアから、三人の美女が教室に入ってきた。
一人は、水色の長髪で毛先にかけて青になっている。瞳は右が黄色、左が紫のオッドアイ。気が強そうで、ローブを着ていて、いかにも魔術師だ。
もう一人は、プラチナブロンドの長髪で、毛先にかけて紫になっている。瞳は青。穏やかな笑みを浮かべており、そしてものすごく……王妃様に似ている。白いゆったりとした服に身を包んでおり、美しいベールをかぶっている。
そして最後が衝撃だった。金髪で、毛先にかけて夕日のような色になっている。長い髪を高い位置でひとくくりにしており、彼女の一番特徴的な部分を惜しげもなくさらしている。エメラルドの瞳を持つ彼女の耳は長かった。恐らく、物語の中でしか出てこないエルフなのだろう。
エルフと言えば穏やかで自然と生き、金属を嫌う筈なのだが、後ろには人の身長ほどの大槌があるのは気のせいだろうか。
「は?このアマ……黙ってりゃ言いたいこと言いやがって……」
「舐めてるのはそっちでしょう?たかが九人――いや八人か、それっぽっちで何ができるの?」
「ほとんどの国を堕とすことができるわ」
「一人で万単位の軍を制圧することもできる」
「同時に八つの戦場で負けなしに……いや、頑張れは二十くらいは普通に同時並行でできるわね、八人で」
それはすごい。
俺はつい真顔になっているが、それは他のクラスメイトも同じだった。……なんというか、すごい現実味のない言葉で簡単に論破されてる。
「まあ、アタシたちも今は暇じゃないんだよ。さっさと片付けるからかかってこい」
「そうね。ちゃんとした戦闘員がこの場にミリアちゃんしかいないものね」
「そういうララ姉も立派な戦闘員でしょ。どうせ、ララ姉にも勝てやしないよ、あいつら」
「は、はは……ここまでコケにされたのは初めてだ」
「私も。――地獄で私たちを侮辱したこと、一生悔いているがいいわ!!!」
そう言って、侵略者たちが一斉に美女三人に襲い掛かった。
危ない!と言いそうになったが、言う前にすべて終わった。
何が起きたかわからなかったが、あの二人が襲い掛かったと思ったら、地面にめり込んでいた。
「さて、安全地帯に送り届けるわ。ついてきて」
ララと呼ばれていた美女が柔らかく笑った。
「この建物の中にいる人は、みんな無事だよ!安心して」
ミリアと呼ばれていた美少女が、俺たちを安心させるように言う。
「まあ、この国はアタシたちがいる限り、そう簡単には侵略されないし、建物もぶっ壊すことにもならないだろうさ」
エルフの美女がそう言って、ニカッと笑った。
「あ、あの、九星って……」
おずおずといった感じで、クラスメイトの女子がそう言った。
「アタシたちの部隊名。まあ、さっき言ったことは全て本当の話だよ。だから安心して、アタシたちにすべて任せるんだよ」
先程襲われたにしては、かなり和やかな雰囲気になった。
「さっきのお前、かっこよかったよ!」
「だな!お前が諦めたらもしかしたら俺たちあの人たちが到着する前に死んでたかもしんねぇ」
「ホントすげぇわ、お前」
「ありがとな!」
友達にそう言われて、かなり照れ臭かった。
「でも、かっこよかったな、あの人たちも」
「というか、すっごい美人だったよな……!」
「なんか手が届かない感じがするわ。あれ見ると、クラスのマドンナも霞む」
友達と無事を喜び、笑い合いながら、俺はひそかに決意した。
――俺は、やっぱりオケディア軍に入りたい。あ、今はステラ軍か。




