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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第二章 ゲーム本編――始動
50/186

天使絶対アンチ

Side Lars


食堂から帰ってきたアインの様子が少しおかしかった。

なんとなく、いらいらしているようだ。


傍から見たら、普通のようにしか見えない。だが、あれは心底気に入らないことがあったのを隠してる表情だ。


その理由に、表情がいつもより硬い。下手に隠そうとするから、逆にいつも道理にならないのだ。



王太子サマも気づいてない。表情が凍り付いたように変わらないアインの表情の変化に気づけるくらいでも及第点だ。



――アイツは、表情の変え方を忘れてるからな。



どんなに頑張って笑おうとしても、せいぜい0.1mm口角が上がっているだけで相当頑張った方だ。



苦痛も奥歯を嚙み砕かん勢いで耐えるし。鏡の前で表情を変えることなんか、アインの性格を鑑みてもほとんどない筈だから、アインの想像以上に表情は変わっていない。



「本当に、気に入らんことがあったンだろうな……」

気が短い貴族の子供なら、そこら中に八つ当たりしてもおかしくない。



「アイツも、そこまでの感情が生まれてきたのか……!」

一時期は、本当にどうしようかと思ったくらいだ。とにかく、喜怒哀楽はある。快不快もある。……喜怒哀楽って本当に全部揃ってンのか?不快はあっても、快はあるのか?


不安になってきた。



アイツは、感情をこそげ落としたんじゃなくて、自分の中に封印した感じだから、まあいつか出る時は出る。大丈夫か。



話がそれた。アインが不快に思ったことについてだ。それを馬鹿正直にアインに聞くことは絶対にしない。したって意味がない。俺の経験上、隠される。

だが、俺は知りたい。何がなんでも!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「――は?天使?」

アインは頷く。教えて貰おうとする前に教えて貰った。それはいいんだが、ええ……。



「あいつ、気に入らない。プライドだけが高い。それ以外の取り柄なんて、空を飛べるだけだし。大体天使の掲げる理論はいつも崩落しているんだよ。学者なら、誰しもが天使を嫌う筈だ。

筋が通っているように見えて全く通っていない」

本職が学者なアインは、本当に気に入らなかっただろう。そこらへん、アインはこだわるからな。



「懇切丁寧に説明してやっても、逆切れされる。おまけの果てに淫魔と吸血鬼を間違えるほど馬鹿だし。吸血鬼は頭がいい種族だからこそ、馬鹿な天使とは住む世界が違う」

アインがここまで毒を吐くのは初めて見た。同席している王太子サマたちも、過去に見ないレベルで饒舌なアインに驚きを隠せないらしい。



――というか、毒が本当に強いな。



種族的に、吸血鬼と天使が嫌いあっているのは聞いたことがあるが、ここまで根深かったンだな……。



「ただただ煩いから本当にどこかに行って欲しい。本音を言えば、天使など一人残らず絶滅してほしい。そもそも神の力に近い力を持つだけで気に入らない。あれを得意げに振り回す奴らの思考回路が意味不明」

まあ、天使だからな。そりゃ、神に近い力を持つのも当たり前だろう。それが神サマ大っ嫌いなアインのお気に召さなかったらしい。



「そもそも負けるとわかってたのに何で突っかかっていたのかな?やっぱり――」

「そこで終われ。どれだけ天使が嫌いかは理解できたからさ!」

「………………………分かった」

まだ続きそうだったため、慌てて止める。かなり不本意そうだが、そこで終わってくれた。……これ、定期的に毒吐き出させる必要あるか?



「ひとまず、接近禁止命令でも出すか……」

「僕と三日以内に会う者にも同じようにお願いします。本当に天使は鼻が曲がるほど臭い」

「それは俺も感じた。なんなンだ、あれ?」

アインが言うほど強くもなかったが。



「神の力に似たものの力だよ。多分、多かれ少なかれ、九星にはみんな臭く感じるんじゃないかな」

「あれって彼岸だから匂うとかじゃないんだな」

「臭い臭くないには関係ないね。匂う匂わないには関係があるけれど」

「鼻の良し悪しか……」

王太子サマの婚約者サマがそう言った。



「あれの翼もぎ取って、実験の材料にできないかな?」

「おい、やめろ。絶対やめろ」

「誰に使うつもりなンだ?」

「貴方も止めなさいよ!」

どうせ、止めたってアインはやると決めたらやるし、やらないと決めたらやらない男だ。中途半端で投げ出さない。それが、九星でも無類の強さを誇るのだろう。



「天使の翼は、聖なる力が込められている。その力を応用させて、色々なことに使えそう」

「学者だな……」

すらすらと言葉が出てくるアインに、ドン引きするお貴族サマ。普通に翼をもぎ取る想定なのもおかしい、と考えてるンだろうな。



ひとまず、アインをそのまま放っておいたら、いつか天使を殺しそうで怖い。吸血鬼対天使って、昔から加減を考えずに戦いに明け暮れるからなァ……。



「王太子サマ、王太子サマ」」

「どうした?」

俺はこっそり王太子サマに話しかける。


「アインを天使に引き合わせないようにしてくれないか?あいつ、昔天使に研究結果盗まれたことがあったンだ。更にその研究結果が間違えていたものだったらしく、結果なぜかアインに非難が集中したンだ。それから天使は視界に入るたびに半殺しにしてる」

前に見たことがある。正直、あれはものすごい理不尽だった。


「――もしかして、アインがいつになくキレているのは、天使にあったからじゃないのか!?」

アインは基本、理不尽なことはしない。だからこそ、王太子サマも驚いているのだろう。


「むしろ、その天使を殺せなくてイライラしてるンだろ。――なあ、アンタならアインが天使と鉢合わせないようにできるよな?頼む」

「――分かった。流石に、無実の者をアインに殺させる訳にはいかないからな」

「お、ありがとな!アインのヤツ、天使をわざわざ殺しに行かない性格だから、鉢合わせない限り、大丈夫な筈だ」

「ああ。アインの行動には気をかけるようにする」

そう約束してくれた。これでもう、安心だ。

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