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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩

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閑話:国王と宰相のひと時の休憩

Side Noah


「ゼスト君、今日は休んで」

「は?」

革命から一月。僕とゼスト君は、今日も今日とて執務室に籠る。


何故なら、オケディアには致命的な管理体制のミスがあったからだ。それを直すのに、かなり時間がかかっている。


そのガバな管理体制の下、甘い汁を啜っていた貴族からは猛反発を受けている。

それに対処するため、国王である僕と宰相であるゼスト君があちこち走り回っているのだ。


当然、寝不足にも繋がってくる訳で……。


「ノア、それを言うならお前もだぞ。その濃い隈は何だ」

ゼスト君も負けず劣らずの濃い隈を持ちながら言う。結局、団栗の背比べなのだ。



「国て動かすのこんな大変だったのか……」

「そりゃそうだろ。村単位でも大変なのに」

「あ、そうか。ゼスト君は村長の息子か」

呆れたようにずれた眼鏡を直すゼスト君に、僕は思い出したように言う。



「よかったな。お前が目の敵にしている皇月影がかなりの先見の明をお持ちになっていて」

皮肉るように言うゼスト君も、あまり皇月影にいい感情を持っていない。


「これを見越してなのかな?帝王学の本が大量に置かれているのは……」

「そうじゃないか?そもそも九星に元貴族はいても、元王族はいないだろ」

「そうだね。エリック君も元貴族だけどあまり勉強してなかった、と聞いたし、ミリアちゃんは王族と関わるには少し爵位が足りなかったみたいだからね」

「ああ。他は平民か孤児だしな」

今までは戦いに明け暮れているだけでよかったのに、今じゃ国を動かすこともタスクに入る。当然、それを理由に鍛錬を怠ることは以ての外だ。



「にしても、さすがに疲れたなあ」

「いくら九星だとしても無茶しすぎだ。――よし、今日は仕事さぼろう」

「今日一日くらいさぼったっていいよね!」

ステラの頭脳が眠気に負け、狂った瞬間だった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ゼスト君。どうさぼる?」

「変装して、どこかで食事をしよう。最近碌に食事してない気がする」

「いいね」

僕たちはルンルンで城を抜け出し、アイン君から教えて貰った変装術で別人に成りすまし、市街に出た。



「こういう風に外出たのは久しぶりだね」

「そうだな。特にララがいないのが珍しい」

「あー、僕たちは三人で一組だったもんね」

「お前がララと結婚したお陰でそれが崩れつつある気がするが」

「もし仮にララちゃんがゼスト君を選んだとしても、それは変わらないよ」

「まあ、それもそうだな」

ゼスト君が負け犬の遠吠えよろしく皮肉を言い始めたため、僕もそれに倣って皮肉で返した。



「そこのカフェとかいいんじゃないか?」

ゼスト君が指さしたカフェは、落ち着いたノスタルジックな雰囲気だった。


「じゃあそこにしよう」

僕たちは、カフェの中に足を踏み入れた。



「にしてもお前、ずいぶんと丸くなったな」

「それはゼスト君も同じじゃないかな?」

ケーキとドリンクを注文し、しばらくゆったりしていると突然ゼスト君がそう言った。


「そもそも、会えば皮肉三昧。どちらかが皮肉を言えば、それに負けじと皮肉を言い返して更に舌戦がヒートアップする……。九星ができた最初の方はそうだったよな?」

「ああ……。物凄くギスギスしてたね、あの時は」

冷戦コンビだの猛犬だの色々あった。仲良かったのは、当時年齢が一桁だった子たちだけで、僕ら十代は本当に雰囲気が悪かったと思う。


「俺とノアはララを取り合って毎日冷戦してたし、エリックとリズは性格的に合わないのか、会う度に怒鳴り声が聞こえてきたしな」

「普通に世紀末すぎたね」

今や軽くジャブを打ち合いながらじゃれ合うなどと、だれが想像しただろうか。ジャブに対しても突然全力のスマッシュで返される間柄だ。どこにどんな地雷があるかわからないし、そもそも会った当初は言葉すら通じなかった。



注文したものが届き、一旦会話が止まった。一口ケーキを食べて、甘い生クリームが口いっぱいに広がるのを堪能する。



「今やアイコンタクトで大体わかるしな」

甘党の僕を苦笑いで見つめる甘いものが苦手なゼスト君が言った。ゼスト君は、ブラックコーヒーとサンドイッチを頼んでいた。


「喧嘩を尋常じゃない程したからこうなったのかな……?」

「喧嘩で仲を深めるのは青春じゃないか?」

「そういうお年頃だったでしょ」

一番下も十代になって、たびたび実感する時の流れ。僕もそこまで老いた訳ではないが、毎日喧嘩していたあの頃が懐かしく思えるなんて、想像もしなかった。



「今更だけど、ララちゃんも連れてくればよかったかな」

「やめろ。俺はお前らのイチャイチャを見る気はない」

「ふふ……」

「悪魔の発想をする前に、手土産の内容を考えろよ」

苦い顔で言うゼスト君が面白くて、ついつい笑ってしまう。更にゼスト君の顔が苦くなった。



「仕事から解放されてのんびりするのもいいな……」

「正確にはさぼってるだけだから、帰ったらたんまり仕事が待っているけれど」

「そういうのを言うな。俺は忘れていたいんだよ……」

ゼスト君は本当にいい反応をする。だからついつい揶揄ってしまいたくなる。



ケーキを食べ終え、会計を済ませて店から出る。そこまで時間は経っていなかったため、まだ太陽は高い位置にいる。



さて、どうするか――、そう言いかけた次の瞬間、ガシっと後ろから肩を掴まれた。



「さァて、見つけた」

「ラース君……」

「ゼス兄?ノア兄?勝手に城から抜け出したらダメだろ?ララ姉も心配してたぞ?」

絶対に逃がさない、という意思を表明するかのように僕の肩を掴む手に力が入っていく。



「痛い、痛いから、ラース君!」

「とんでもない速さで見つかったな……アインだっていないだろうに」

「アインがいなくても、アンタらを見つけるのは簡単だぜ?イケメンの二人組について聞きこみゃいい訳だからなァ!」

「それで見つかるのもどうかと思うけれど」

そんな雑な聞き込みでよく見つけたと思うよ……。ラース君の運がいいのか、はたまた僕たちの運が悪いのか。


「アインを探すよりも簡単だぜ。アイツは魔法も使うからなァ!」

「ラース君に見つかったからしょうがない。今日は帰ろう」

何故か自信満々にアイン君のことを自慢するラース君と共に、城に帰った。


どうやら僕とゼスト君が一時的に行くへ不明になったお陰で城はてんわやんわだったらしい。

少し申し訳ない気持ちが浮かび上がる。


ひとまずララちゃんには、城に帰る前に買った手土産を渡しておいた。

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