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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩

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選民思想

「どうしたんだ?」

マティアス様が揉めている者たちの中に割って入る。

僕は気が立っているに違いない当事者たちがマティアス様に危害を与えても防げるように、いつでも守れる位置に移動した。



「ご機嫌よう、王太子殿下。少しこの者に『教育』をしていましたの」

「王太子殿下がお気になさることではありません」

少し笑顔が気持ち悪い恐らく上流貴族の子供であろう少年少女の後ろで、恐らく下級貴族の子供であろう少女が暗い顔をして俯いている。彼女のドレスには、お茶がかかっており、全てを台無しにしていた。



「そうか?俺は、弱い者いじめが嫌いでな、アインのように弱い者いじめをされている者を救うのが好きなんだ。往々にして、優秀な者は弱者になりがちではあるからな。

――所で、俺は今この場を弱い者いじめの現場と捉えてしまうが……何か弁明は?」

「よ、弱い者いじめですか……。ただ、私たちは楽しくお話をしていたのですよ?いくら王太子といえども、それを邪魔する権利はどこにもありませんわ」

扇子で口元を優雅に隠し、マティアス様に言い返した。

正直、マティアス様は頭が回るし、あまりいい手ではないように見えるのは、もう彼女が敗北する未来が一足先に見えているからだろうか?


「そうか?となると貴様の言い分では、俺が言っていることは間違いと、そう言っているのだが?」

「そんな滅相もない」

自分の意見が正しいと主張するには、王太子の言葉を一度否定しなければならない。少し分が悪いだろう。



「それに、少し状況を見ればわかるだろう?どうしたら怒号の聞こえた先で、彼女のドレスが汚れているんだ?俺が納得できるように説明してくれないか?」

「す、少し手を滑らせて彼女が自分のドレスを汚してしまったのですわ。それでパニックになってしまって、怒号が発せられてしまったのです」

「そうか。自分で自分のドレスを汚してしまったんだな?」

「ええ、その通りです!」

少しずつ追い込まれているのも気づかずに、噓を言う少女に僕は内心呆れた。



「さて、アイン。あの少女の利き手はどっちだ?」

「左ですね。しかし、ドレスのシミは右についています。わざわざ右手でティーカップを持たなければ、到底シミはその位置には付きませんが……。僕がチラッと見たときは彼女は左にティーカップを持っていました」

お茶会が始まって少し経った後のことを思い出しながら言った。僕は、護衛という任務上、周囲を隅から隅まで探る必要があるのだ。だからこそ、知っている。


「よくやった。その通りだ。左利きはドレスの右側にシミを作ることは難しい」

「そ、それは、私たちを貶めようと……!」

「卑しい者は小賢しい真似しかできない!それも自作自演なんだろ!?」

醜く喚き始める姿に、僕は辟易とした。マティアス様も同じだったようで、溜息を吐いていた。



「貴様ら、先程の自分の言葉を覚えているか?」

「私たちの言葉……?」

「そうだ。貴様らが見ている中で、どうやって陥れようとしていることを気づかれずに貴様らを陥れることができたのか?明らかに自分のドレスを汚しているなんて、おかしいと思わない訳がない。それとも、そんなに貴様らの目は節穴だったのか?」

「「……」」

途端に静かになった。


どちらも答えることはできない質問だ。はいと言えば、無能だとして、将来が危うくなるかもしれなく、いいえと答えれば、自分の嘘を認めたことになる。


「……つまらない。もういい。ここから立ち去れ」

「……!し、失礼します」

プライドを傷つけられた屈辱に思いっきり顔を歪めた後、言い捨てるように言葉を吐いて立ち去って行った。



「表情の一つも隠せないとは、まだまだだな」

マティアス様はそう言った後、会場全体を見まわして言った。



「騒がしてすまない。残っている者は引き続き楽しんでくれ」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Harold


どこの国にも、身分だけで自分がまるで神になったかのように振舞う者がいる。そういう貴族の集まりが、貴族派と呼ばれている。



それと反対に、身分分け隔てなく扱う貴族もいる。彼らは大衆派と呼ばれている。



このお茶会は、身分派閥関係なしに招かれる。当然、そんな場で、トラブルなぞ起こらない筈がないのだ。

それをどう収めるかによって、将来王子王女がどういう風に見られるかが変わる。


貴族派に味方すれば選民思想の持ち主と断定されてしまうし、大衆派に味方すれば身分の差があるメリットが考えられない考えなしと思われる。



その点、王太子殿下は大衆派であることは間違いない。平民を拾って自分の護衛に任命したのだから。

それをよく思わない者は多くいそうだが、王太子殿下の護衛筆頭候補であった、ジャスパー・フォン・シモンズはその選択を英断としていた。シモンズ公爵家自体は抗議文を王家に送っていたらしいが、却下されたらしい。

そもそも王太子殿下一人の判断ではないだろうに。この件には絶対陛下も一枚嚙んでいる。



そういう俺は、優秀ならいいが無能なら認めないつもりだった。平民だからではない。そもそも怪しすぎる。セオドアの平民は、皆姓を持っている。つまり、姓を持っていないのは、他国の平民であるという事だ。

それだけならまだいい。それ以上に信用ならない要素を持っているために、どうしても疑心が生まれてしまう。


俺の年齢は13なのだが、それと同じくらいか、もしかするとそれより若いのだ。シモンズ公爵家は、騎士団長であるアルフレッド・フォン・シモンズの実家だ。いくつかある騎士団の多くの長に、シモンズ公爵家の血縁が就任している。



「成程」

今日のお茶会で、彼が優秀なのだろうという事は分かった。王太子殿下が揉め事に近づこうとしていた時、すぐに自分の立ち位置を変えて、王太子殿下をすぐに守れるようにしていた。

それでいて、会場の端から端まで見通す視野の広さをしていたのだ。

会話には一切割り込まず、話を振られた時だけ返事を返していた。


そこも弁えているのだろう。いくら身分は関係ないような考え方でも、実際に身分は存在する。それに合わせた礼儀も存在し、それが守れなければ無礼と取られてしまう。



それにカーティスが言っていた。全く隙がなかった、と。シモンズの次男と若干押され気味ではあるが、渡り合える男だ。そんな彼が隙が見えないほどの差があるという事は、かなり強いのだろう。その歳で。

それにシモンズの次男も気づいたから納得したのだろう。セオドアの歴史は実力主義な所がある。実力で圧倒的に負けているから、納得できたのだろう。


あの黒髪の護衛には、また会える機会が来るだろう。そのタイミングでも、もう少し観察を重ねるとする。

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