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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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酔っ払い

Side Finlay


その後も、不思議なことが続いた。


いつの間にか、カップの中の紅茶が減っていた。

いつの間にか、部屋に鍵をかけられて、閉じ込められた。

風がないのに、木の葉が揺れた。

いつの間にか、変な所に来ていた。

いつの間にか、豪華な装飾がされている白紙の本が置かれていた。

突然大量の水をぶっかけられた。

下町で子供たちと遊んでいる時、突然みんな転びだしたので、たまらず精霊を叱ったら、俺も転んだ。

俺の触ってもいない服がぐちゃぐちゃになっていた。

夕食の料理が一口ずつかじられていた。



ただ俺は、ずっと耐えた。そう、子供だ。子供のいたずらだと思えばいい。

たまにシャレにならないいたずらも仕掛けられるが、今のところは無傷だ。


ただ、いたずらによって勉強や貴族との対談に集中できないことがあった。


流石にまずい。何かしらの対策を講じるべきなのだろうが、見えない相手に何をすればいいのだろうか。


確か、アインはいつもお供え物をしていたな。

それをすれば、いたずらをやめてくれるのだろうか。

喜んで、もっとひどくなりそうな気もするが……。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「うう、イアンだけずるい……」

「うおっ!?突然何もない所から出てくるな!」

「それはすみません。でも俺の気持ち、わかってくださいよ!」

「お、おう……。聞こうか……?」

突然現れたヌルに対し、俺は肩をびくつかせながら驚く。ヌルは形だけの謝罪を述べるとすぐに、愚痴を吐こうとする。顔が赤いし、どうやら酔っているらしい。



――お前、一応俺の護衛だよな……?そんな酔ってて大丈夫か?



そんな言葉をぐっと飲みこみ、愚痴を聞いてやることにした。……これ、主人のやることじゃないように感じるが。



「それで、どうしたんだ?」

「“鮮血の死神”様と、俺だってお喋りしたいですよ!」

「はあ……」

「もうずっと仲良さげにさ!あいつは“鮮血の死神”様の何なんだ!」

何って、そりゃ幼馴染兼乳兄弟兼婚約者だな。


「あの青い蝙蝠だって、“鮮血の死神”様のものでしょう!?」

「そうだな」

「俺は一度も振れたことがないのに、イアンは手の平に乗せて!」

俺は服の中に潜られたことがあるけどな。忘れてるのかな。


「俺なんて、“鮮血の死神”様のおっしゃっていることが何一つわからないのに、イアンは全てを理解している……。ずるい!」

「同じ吸血鬼だからな」

「俺も吸血鬼が良かった!」

吸血鬼には吸血鬼なりの苦労があると思うぞ。アインを見てると本当にそう思う。


「殿下、今日はやけ酒です!」

「おい、俺は酒は飲まな……って、どれだけ持ち込んでるんだ。やめろ」

そう俺が言うものの、ヌルは一切俺の話を聞いちゃいない。テーブルの上に酒瓶を並べ始める。亜空間収納から取り出している。わあ便利!と現実逃避している俺を尻目に、ヌルは直接瓶に口を付けて酒を煽り始めた。


「はあ……。これも精霊の仕業か?」

そうじゃなかったら、一体何を見たんだよ。直接アインと要が一緒にいるところを見た訳でもあるまいし。


俺がそう呆れていると、ヌルは次の瓶に手を付ける。


「おい、もうやめとけ。二日酔いになるぞ」

「らいじょうぶれす。まら~のめる~~」

そんなことを言うや否や、ヌルはゴン、とテーブルに頭を打ち付ける。かなり痛そうな音がしたが、気持ちよさそうに寝ている。

……こりゃ、しばらく起きないな。


俺は何とか俺の部屋と繋がっている使用人のベッドにまで運ぼうとする。

が、やはり暗殺者。鍛えてる分、重い。俺は少し引きずって、ベッドに俺だけで運ぶのは諦めた。


こういう時は人を呼ぼう。


「おい、いいか?」

「は、はい!」

俺は部屋のドアを開け、俺を護衛している騎士に声をかけた。

彼は、ケイを慕う平民騎士で、ケイと後数人とローテーションで俺の警護をしている。


「これを運んでくれないか?」

俺は騎士を部屋に招き入れ、ヌルを指さし命令をする。騎士は、俺の部屋に自分が知らない人物がいることに驚いている様子だった。


「……いつ、忍び込んだんですか、この人は!」

ようやく、絞り出すようにそう叫ぶ。


「……一応、信頼できる人だ。俺の護衛をしていると思ったんだがな、今日は非番だったようで酒をたらふく飲んだ後、俺に愚痴りに来たんだ」

「王子殿下に愚痴……?な、なんて不敬な!」

思ったことを口に出してしまう、素直な性格らしい。俺の周りには貴族化不愛想な性格の持ち主かの二択しかいないため、なかなか新鮮だ。


「酔っ払いの戯言に一々腹を立てるな。――それで、この部屋に運んでほしいのだが」

「客室でなくてもよろしいのでしょうか?」

「あまり持ち場を離れるのは好ましくないからな。さっさと運べ。こいつに風邪をひかれると困る」

「りょ、了解いたしました!」

騎士はそう大声で言うと、ヌルを軽く抱き上げて隣の使用人の部屋に運ぶ。

こんな夜中に大声を出すなよ……と思いつつ、俺は騎士をねぎらった。


そのまま彼は持ち場に戻り、俺は夜も完全に更けたこともあり、すぐにベッドに入る。


明日も、軽いいたずらで済みますように、と精霊王に祈りながら、眠りについた。

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