物凄く豪華な本
Side Finlay
数日後、俺はまた書庫に入り浸っていた。
いつもは人脈獲得か、民衆想いの王子であることをアピールするため、下町に降りているかのどちらかだが、今日は珍しいことに、ぽっかり予定が空いていた。
というのも、今日対談する予定だった相手が、急遽溺愛する娘の隊長が崩れたという事で、対談をキャンセルしてきたのだ。
きちんと、従者を送って丁寧に。
俺はヌルから、対談相手の娘が病弱だという情報を得ていたため、心穏やかにそのことを了承でき、そしてスケジュールの調整をすることとなった。
前に対談しようとしたら、何の断りもなく対談を欠席した不届き物がいた。
きちんと名前は憶えているし、王族を軽んじたという事で、何らかの罰を与えるつもりだ。
ただ、そういう経験も相まって、まさか……という考えが過ってしまったのである。
「王になる資格、か」
要を通してアインから、この国のことについて教えて貰った。
俺が知っているべき内容だろうが、知らなかった。それを情けなく思うと同時に、この国に危機感を覚える。
俺は、王になるための資格ついて、一人で詳しく調べて深く考えたいと思い、人払いをしている。
俺は、何が機密で何がそうでないかの判別がつかない。
だから、ポロっと何かを零してしまったら、非常にまずいのだ。
ひとまず俺は、建国史に関する本や、帝王学についての本を片っ端から読み進めていた。
「内容は、どれも他国にある本もあるし、よくわからないな……。この本とこの本じゃ、内容が百八十度違う……」
ヒントを得に来たのに、何のヒントも得られない。自分で考えろ、という事なのか。
「王になるためには、血筋がまず重要じゃないか?この国だし、初代国王の血で、精霊王との契約が存続される」
だが、初代国王の血なんか、今やロースタスの全土に薄く広がっている。だから契約を更新することで、その度に現王家の正当な血筋というのを、現代に更新し続ける。
そこで大前提として、国王の血を引いている者のみが、契約を更新することができる。
「それ以外……。国が豊かになるという事は、国が強くなること。つまり、野心が芽生えるという事」
オケディアがいい例だ。
国は特に豊かにはなってなかったが、九星という力を得た。それにより、他国を侵略し、領土を広げたいという野心にかられた。
ロースタスなら?九星がいなければ、ロースタスはオケディアを攻め滅ぼせてしまうかもしれない。
ロースタスだって、別に弱い国ではないのだ。
色仕掛けにはとことん弱かったが。
……アインに頼んで、色仕掛けに対する耐性を高めておいた方がいい気がしてきた。
「今はそんなことはいいから。とにかく、野心を抱かないことが、王になるために必要じゃないか?」
俺はそれそうになる思考を元に戻し、心のメモの箇条書きをする。
ちなみに俺があえて声を出しているのは、精霊が何か反応してくれないかな、と思ってのこと。
精霊は、そこら中にいるらしいから、やや期待している。
「それから、平和を愛する心とか?あとは、民への慈愛とか、他にも……」
俺はいくつか挙げてみたが、うんともすんとも言わなかった。
がっかりとしながらも、出していた本を全て元の位置に戻すことにする。
そして、金書庫にも行ってみよう。もしかしたら、歴代王の手記とかあるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に抱きつつ、本を数冊ずつ抱きかかえた。
俺は、その間ずっと自分が王になったら、とふと考えてしまう。
そう言えば、この国には学校がなかったな。貴族は家庭教師を雇って勉強するし、平民は勉強せずに働き始める。
学校は、人と交流できるため、コネを作りやすくなるし、生徒会というものを作って、生徒たちに運営を任せれば、小さな領地経営もできる。
平民学校も作って、平民をそこに通わせてみたら、人手不足を解消できるかもしれない。
何なら、特待生制度を作って、優秀な平民に貴族教育を施す。将来は、国に努めることも約束させれば学費を国が全面的に負担しても、お釣りが出るだろう。
他には、治安を改善して、他国から人を呼び寄せるのも手だ。
人々の往来が激しくなることで、経済が速く回る。そして国が潤う。
そのためには、きちんと騎士たちに規律を順守させ、犯罪者をとらえる必要があるし、法もしっかり見直しておいた方がいい。
そう思うと、やっぱりセオドアに留学してよかったと思う。
そのセオドアは、先代セオドア国王が留学したクリスタルパラスを参考にして学校を作ったらしい。なるほど、クリスタルパラスにも留学するべきかもしれない。
そんなことを考えながらも、俺はきちんと本を元あった場所へ戻していく。すると、そこでようやくおかしなことに気が付き、嗜好を止めた。
「これ、あったか?」
俺は、最後まで腕の中に残った本に、首をかしげる。
その本は、俺の髪と同じ色をした、緑に染色された革から出来た表紙だ。
豪華な装飾が施されているが、タイトルが刻まれていない。
「読んでみるか」
俺は、近くにあった椅子に座り、その本の表紙をめくった。
どこかわくわくしていたのは否定できない。
一体何が書かれているのだろう、もしかしてこれは、精霊王の思し召しなのではないか、と。
そんな希望を胸に抱いていた俺は、子供だった。
まだ15の少年に、大人であることを求めないでいただきたい。
その本は俺の期待を見事裏切ってくれた。
なぜなら、その本の内容は、ただの白紙だったのだ。
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