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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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309/311

アドバイザー

間違えました。この世界に勇者はいません。英雄でした。

Side Finlay


書庫でのセレナ嬢との会話で、俺にはやはり王になるための素養が全く足りていないことに気づいた。

ただの小国の王なら、最初のミスは許してくれるかもしれない。


だが、競争者がいる大国の王なのだ。ミスは許されないだろう。


「そこまで気負う必要もないと思う、というのが月影の見解だが。ステラ王だって、立派に超古代国家の国王務めてるだろ」

「た、確かに……?」

いやでもそれは、異能力で何かしているからでは?

オケディアは、異能力者の国だ。ノア王は、オケディア出身と聞く。


そうでなくとも、九星という最強異能力を持った集団のリーダーだったのに。


「あとほら、イーストフール王もヴァイド王もゼス王もロースタス王には入るからな」

「……言われてみれば」

「なんだか気が抜けたな」

俺とケイは、揃って肩の力が抜けたのを感じた。


クソ親父含むあの三人と比べたら、俺はよっぽどうまく国を回せるだろうな。


「魔王陛下は現在病床に伏されておられるからな……」

「確か、今久遠を回しているのは魔王代行を務める魔王太子だっけ?」

「そうだ。そうは言っても、時雨様は300歳越え。どの王よりも王代理を長く勤めてらっしゃる」

やけに丁寧な口調で話す要に少し引っかかったが、少し気が軽くなった気がする。



「そう言えば、終夜って何歳なんだろうな?」

時雨魔王太子の名前が出たことにより、俺はふと顔見知りな悪魔のことが気になった。


「……終夜?まさか、金華終夜のことか?」

突然要は俺の肩をがっと掴んだ。

俺は目を白黒させ、ケイは反射的に剣に手をかける。


「そうだが……。何かあるのか?」

「月影に会ったりしてないだろうな?」

「俺は、そのアインから紹介されたんだが」

「はあ……」

要は、いかにも頭痛が痛い、という風に頭を抑え込む。


そう言えば、吸血鬼は悪魔が死ぬほど嫌いだと、口を酸っぱくして言ってたな、アインが。


「まあ、終夜ならいいか……」

「いいのか」

「あれは天使趣味だから、まだ吸血鬼に興味関心が薄いだろう。そうは言っても、他の悪魔と比べて、という感じだが」

「天使趣味……」

まるで、天使が好きな悪魔がとんでもない変態のような言い方だ。


「フィンレーはドブガエルを伴侶にしたいと考えるか?」

「……思わないな」

「なんですか、その例え」

「天使と悪魔は、互いに互いをそう思っていると、聞いたことがある」

よくもまあ一つの国で、そんないがみ合いを生み出せるものだ。吸血鬼と妖狐もあまり仲は良くないと、どこかで聞いたことがあるような。天使と悪魔はともかく、吸血鬼と妖狐っほぼ同類なんだから、仲良くすればいいのに。


「そう言えば、その天使と悪魔の子かもしれないやつがいたな」

ラファエルという天使が。


「……翔雲天夜の子か?天夜は死んだと思っていたが」

「さあ?よくわからない」

でも、明らかにラファエルの容姿が翔雲っぽいんだよな。ただ、天使には白髪も赤眼もよくあるらしい。


「俺が国から出た後の話だ。詳しい事情はよくわからないが、男性天使を男性悪魔が襲ったって、魔族間でニュースになった。名前が伏せられていたが、その被害者の天使の名前が、翔雲天夜とされている。仇敵ともいえる悪魔に襲われたんだから、高潔な精神を持つとされる天使なら、とっくに自殺でもしているのかと」

「サラッとそんなこと言うな!」

俺は、魔族の感覚にはついていけない、と思った。

人間からすれば、天使も悪魔も吸血鬼も妖狐もみんな同じだ!


「さっきから伝聞ばかりで正確な情報は何もないですね」

「そりゃ、俺は当事者じゃないしな。翔雲が潰れようが、金華が誰を襲おうが、それが俺の知り合いに害を及ぼさない限り、無関係を貫いてそっとしておくのが一番いい」

「……」

冷たいようで、それが一番なのかもしれない。両手は小さい。手を命一杯広げたところで、転がり落ちてしまうものが多いのだ。

それを無理やり掬おうとすれば、他のものが零れてしまう。


「それにしても終夜か。確か、時雨様の元側近だ。飽きたとかで辞めたらしいんだが、どうしてもの時は頼ればいいんじゃないか?俺も月影も、国を治めた経験もなければ、国を治めるための教育を施されている訳でもないから」

そう言った要の言葉に、俺は皇月影が置かれている状況を思い起こしていた。


金華は、皇月影に魔王になって欲しいと思っている。それは、月影を一族で娶るため。

皇としては、月影よりも時雨に魔王として即位してほしいのだろう。


教育方針から、そんな思惑が透けて見える。



「今はひとまず王になる方法だ。王になった後の懸念なんて、王になった後に考えればいい」

「それもそうか」

ああでもない、こうでもないと議論する時間は、建設的ではない。

もっと有効なことに、時間を使うべきだ。


「という訳で、一つ聞きたいことがあるんだが」

「ああ、なんだ?答えれる範囲で、何でも答えるつもりだ」

「王になる資格ってなんだ?」

要は、とても純粋な目で、そんなことを聞いた。


「え……?」

「王になる資格。これがないと、どうやら魔法陣の場所が分からないらしくてな」

「流石に、聞いたことないが」

アインの力をもってしても、無理だったのか?なら、魔法陣なんか絶対に見つかりっこない。


「子供向けの絵本とか、気になる題名のない本とか」

「何でそんなに具体的なんだ……?――少なくとも、聞いたことがないな」

そう口では堪えつつも、幼い頃には歯に読み聞かせしてもらった本の内容を思い返す。



―――しょだいロースタスおうは、このやせたとちをみどりゆたかなとちにかえてください、とせいれいおうたちにねがいました。

―――せいれいおうたちは、しょだいロースタスおうにといかけました。

―――なぜ、くにをみどりゆたかなとちにしたいのか、と。

―――するとロースタスおうは、こくみんがうえてくるしまないようにするためだ、とかたりました。

―――せいれいおうたちは、そんなロースタスおうにかんどうし、ねがいをききとどけてくださいました。

―――そして、そんなやさしいこころをもつおうがおさめるくには、とてもいいくにだとせいれいおうたちはよろこび、そしてとくべつなちからをもつものがうまれるようにしました。

―――それが、このくににえいゆうがうまれるりゆうです。



とある絵本の最後の方。

俺は、その文言を思い返していた。


優しい心を持つ王が治める国に生まれる、英雄。もしかしたら、それが必要かもしれない。

ただ、曖昧過ぎる。他に何か情報がないかと、俺はまた記憶の深くにもぐった。

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