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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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王になる資格

計画は、順調だ。

決して、ロースタス統一を、失敗してはいけない。


それを失敗するという事は、フィンレーの死を意味していることも、何より今までギリギリで回ってきた、邪神への対抗策を失い、永遠の敗北を決定させることになる。


そんなことをフィンレーに言おうものなら、変なプレッシャーを与えてしまうだろう。


英雄に関しての知識は、フィンレーにもある筈だ。なら、教える訳にはいかない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「はあ」

つい、溜息が出てしまう。


あともう少しで、味方を増やす段階が終わる。すると次は、王位を主張して、イーストフール王に即位させなければならない。

そうなる前に、魔法陣を見つけたかった。



「ねえ、なんで教えてくれないの?」

「お前には、資格がないからだ」

火の精霊王、サラマンダーが冷たく突き放す。

強面の顔が、さらに険しくなる。

僕はそれを見ていられなくて、視線を外す。


「フィンレーにも、教えてくれないの?」

「教えたら、資格を失い、お前の悲願は果たされない」

先程よりは柔らかい声で、土の精霊王、ノームが話す。


「……このままだったら、資格どうこうの話じゃなくなるよ」

「それでも、だ。契約が履行される以上、なに一つの例外も認められん」

腕組みをしながら、魔の精霊王、ラタトスクが答える。厳格な性格らしい彼女を説得することはできなそうだ。


「一応、それを決めるのは僕たちなんだけど……」

「そーよそーよ!事実でも、それを言うのはアタシたちよ!」

シルフィードが控えめに、ウィンディーネが噛みつくように言う。


「やたら未練たらしく聞くのが悪い。だめだ」

「……」

サラマンダーの言葉に、思わず黙り込んでしまう。


このままでは、ロースタス統一など、夢のまた夢だ。

要もフィンレーも、ペスケ・ビアンケも、僕のことを信じてくれている。

僕の、能力を。


だからこそ、必ず見つけ出さなければならない。


「でももう、行けるところは行った。怪しい空間すらなかった。本も調べた。いくつか怪しい本はあったが、内容は全く関係ないものばかりだった」

手書きのイーストフール城の地図は、黒い。バツがいくつも書き込まれている。


「何の役にも立っていないんだ。だから、せめてロースタスくらいは統一しないと、話にならない。ただでさえ、僕は英雄にとってみたらお荷物でしかないのに」

「……」

「蝙蝠、徹底的に探せ」

僕はそのまま地図とにらめっこをする。隅々まで、部屋を探し尽くす。


「おい、さっさと寝ろ。子供は寝るのが仕事だ」

「僕に睡眠は必要ない。僕のせいで、全てが終わるのを避けたいんだ」

そう言って、僕は大量の本を蝙蝠を通して読む。


頭が痛くなってきた。


しかし、止める訳にはいかない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「痛……」

ここ最近、寝ていない。それに、蝙蝠から性急に情報を貰っているため、慢性的な頭痛に悩まされる。


それでも、周囲から全く心配されなかったため、顔色が悪いという訳でもない。


だからこそ、油断をしていたというのもある。


僕は、生徒会室につくや否や、すぐさま隣の部屋に引き込まれ、壁に押し付けられた。


少し反応が遅れてしまった。このせいで、何か勘づかれたのだろうか?


そう思いながら、目の前の人物――マティ様に目を向けた。


彼は、完全な無表情だ。それがとても怖い。

一体何を言われるのかわからなくて怖い。


「お前、顔色が酷いな」

「そ、そうですか?」

僕は、咄嗟に誤魔化した。


「俺は、王太子の座を返上しようと思っている」

「!?」

僕は驚きのあまり、顔が強張った。


今、目の前の人はなんて言った?


「な、なんて……」

僕は思わず声に出してしまってから、すぐに異能力で防音結界を張る。


「聞こえなかったのか?」

「い、いえ……。しかし、ジェシカ様はどうするのですか!?」

僕は、思わずそう叫ぶ。マティ様とジェシカ様の婚約は、マティ様が王になることが決まっている前提だ。


ジェシカ様は王妃になる。それがセオドア王家とグラッチェス公爵家の約束だそうだ。


だから、マティ様が王太子の座を返上するという事は、ジェシカ嬢との婚約解消を意味する。


「前々からジェシカには話していた。――俺は、王には向かん」

堂々と言い切るマティ様に、いくつか思い浮かんでいた言葉が消える。


「王は、この国を自分のことのように、それ以上に愛する必要がある。しかし俺は、それができない」

「そうでない王もいらっしゃいます。マティ様が思いつめることはないですよ」

「能力的には不足はないだろうな。しかし、俺は王になる気概がそもそもない。王は、なりたい人間がなればいい」

「……」

僕は、思わず黙ってしまう。

僕は魔王になることを拒否しているのだ。そして、魔王になるために血がにじむような努力を重ねている時雨兄上に、魔王になって欲しいと願っている。

だから、マティ様の言葉を否定できない。


マティ様には、僕にとっての時雨兄上のような存在ががいるのだろうか?


「王になりたいなら、資格を示せ」

「え……?」

マティ様の言葉に、僕は驚く。

先程の話と繋がっているようで、脈絡がない。


まさか、僕たちが今やっていることを、マティ様は知っているのだろうか?

いや、そんな訳はない。ただ稀に、マティ様は未来が見えているようなことを言う。


「いや、前にそんな言葉を聞いてな」

「そうですか」

相槌を打つことしかできない僕に、マティ様は意味深な目を向ける。


それがまるで、今悩んでいることへのヒントに感じた。


王になりたいなら、資格を示せ。

王になるための資格。

ロースタス王家の血を引いている、だけではだめなのだろうか?

もしかしたら、フィンレーは何かわかるのかもしれない。


僕はその日の夜、ペスケ・ビアンケの隠れ家の一つに向かった。

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