表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

304/311

秘書官と蝙蝠

Side Finlay


あれからアインと連絡が取れたと、要から聞いた。


アインからは了承の返事は出たものの、一旦一区切りついてから、という事になったらしい。



「そうですか。分かりました。では殿下に協力いたしましょう!それと――おい」

少し興奮気味に話すガルグイッツ伯爵は、自分が連れてきた従者たちの方に、声をかけた。

その中から、細身の女性が現れる。

年齢はケイより年下くらいだろうか。淡い緑の長い髪をハーフアップにしている彼女は、とても理性的に見える。


「あれはうちの娘です。セレナ、殿下に挨拶をしろ」

「お初にお目にかかります。私はセレナ・ディ・ガルグイッツと申します」

「ああ、フィンレー・ドゥ・ロースティス=イーストフールだ。これからよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

そう言って、深々と頭を下げた。

セレナ嬢は、伯爵とはあまり似ていない。母親である夫人似なのだろう。


この国では、女性の地位は低いのだが、それを踏まえても伯爵は俺にセレナ嬢を推薦した。

婚約者との不仲が、公然の事実として囁かれている俺の秘書だ。自分の娘を推すことで、王家とのつながりを企んでいてもおかしくはないのだが、あのガルグイッツ伯爵の娘だ。

伯爵とのつながりを持ちたい貴族はごまんといる。


「今やっていることと、取り扱う情報の機密度が高い場合、情報の共有はできない。当然、俺の護衛を務める者も同じではあるが、まずはそこを了承していただきたい」

「もちろんでございます。ぜひ、スケジュール管理等に、この私めをご活用ください」

「ああ」

俺のぶっきらぼうな返答に、伯爵は笑みを深くした。


「娘はとても強情で、婚約話を蹴って文官になってしまいました。できれば娘には、人並みの幸せを得て欲しいとは、常々思っておりましたが、今は文官の娘がとても誇らしいのですよ」

「お父様、今言うことではありませんわ」

「生涯独身を貫く、と言われた時には、とても心配で心配でたまりませんでしたが、今となれば精霊王の思し召しだったのかもしれませんな」

そう言って、ハンカチで目元を押さえながら、伯爵は笑う。

娘想いのいい父親だ。国庫を食いつぶすだけのクソ親父とは似ても似つかない。


いつか息子の役に立ってほしいものだが。まあ無理だろうな。


でっぷりと太り、髪が薄くなってもはや地肌が見えるクソ親父と、実年齢よりもかなり若く見られるくらい若々しい、子供想いのいい父親。

比べることの方が失礼だ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「という事で紹介する。こちら、セレナ・ディ・ガルグイッツ嬢だ。俺の秘書業務をしてもらう」

俺は早速、まだ明るい時間に来た要に、セレナ嬢を紹介した。


「初めまして、俺はA級冒険者をしている、イアン・ネルソンと申します」

「まあ!そんな方ともお知り合いなのですか!?」

セレナ嬢は、心なしか興奮しているように見えた。

もしかしたら、セレナ嬢は要のことが好きなのかもしれない。


「ああ。知り合いの知り合いでな、紹介して貰ったんだ」

「とてもすごい知り合いがいらっしゃるんですね、殿下には」

私、もしかして必要ありません?と聞くセレナ嬢に、要はぽつりとつぶやいた。


「あいつ、秘書向いてないだろ」

「そうなのか?」

色々と気遣いできるし、頭もいい。柔軟に対応することも可能だ。

それなのに?


「男性恐怖症で、突然気絶されたら困るだろ」

「あ」

確かに、とても困る。相手側の心証が悪くなる可能性があるのだ。


「それにあいつにはあいつなりの目的がある。あまり信用しすぎるな。――ともかく、きちんとした秘書官を雇えてよかったな」

「まだ仕事ぶりを確認した訳ではないがな。――頼んだぞ、セレナ嬢」

「はい、かしこまりました」

そう言って、セレナ嬢は丁寧に頭を下げた。要のぶっきらぼうな口調に、口を突っ込まないあたり、優秀さが透ける。



「お、蝙蝠だ」

小さく開けてあった窓から、青い蝙蝠が室内に入ってきた。

要はその蝙蝠を手に乗せ、会話をし始める。それをセレナ嬢は不思議そうに見つめていた。


「青い蝙蝠……。とても珍しいですね。それに、蝙蝠と会話しているように見えます」

「そうだな……」

果たして、要が吸血鬼だという事を話してよいものなのか。その蝙蝠は、別の吸血鬼からの便りだと、話してよいものなのか。


あまり隠している雰囲気はなかったものの、勝手にばらすのは気が進まない。



「キーキーキー」

「分かった。いつどこに行けばいい?」

「キーキーキー」

「分かった。他には何か?」

「キーキーキー」

「お前な……。そういうことは先に言えよ。いつもいつもなんで言わないんだ」

「キーキーキー」

「無視するなよ。――まあとにかく分かった。それで奴らは一体?」

「キーキーキー」

「へえ、スーを?それは礼をしておかなきゃな」

「キーキーキー」

そう言って、蝙蝠は要の手の上から飛び立ち、そのまま扉の方へと飛んで行ってしまった。


「あ、おい、お前が来たのは窓から――っていなくなったな」

「気にするな」

「あの、イアンさん、先程は何を……?」

「ああ、少し伝達事項があってな。明日以降に教える。――じゃあ俺はここで」

そう言うや否や、要はさっさと窓の外へと身を躍らせた。


要は空を飛ぶことができない。だから、四階から飛び降りた要に、度肝を抜かれたが、慌てて駆け寄って、窓の下を見てみると、そこにはここから歩き去る要の後姿があった。


「すごいですね……。流石A級冒険者」

そう言えば要は吸血鬼だった。蝙蝠化で、ダメージは無効化できる。恐らくそれをやったのだろう。

まさか、それもなしに飛び降りて、そして無事なんてこと、思いたくもない。

要と蝙蝠の会話。( )は蝙蝠の話してた内容。


「キーキーキー」(会って欲しい人がいる)

「分かった。いつ行けばいい?」

「キーキーキー」(夜十一時。場所は冒険者ギルドのイーストフール王都支店前)

「分かった。他には何か?」

「キーキーキー」(彼らは、マクレーン公爵家に潜入している調査員だから、そこは把握しておいて)

「お前な……。そういうことは先に言えよ。いつもいつもなんで言わないんだ」

「キーキーキー」(なんか気になることがあるんだって。今ここで言ってもいいけど、そのままマクレーン公爵家に蝙蝠持って潜入して貰って、実際に見た方が早いって)

「無視するなよ。――まあとにかく分かった。それで奴らは一体?」

「キーキーキー」(情報ギルドのペスケ・ビアンケ。僕たちがセオドアを離れている時、スーさんの護衛を任せたことがあるよ)

「へえ、スーを?それは礼をしておかなきゃな」

「キーキーキー」(そういうことだから)



星、評価、感想お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ