潜入調査しているペスケ・ビアンケ
Side Xylophone
俺の名はシロフォン。ペスケ・ビアンケの調査員だ!
俺は今、マクレーン公爵家に忍び込んでいる。
交代制で、フレデリックとマリーと一緒に執事やら使用人やらに変装して情報収集をしている。
こういうのって、すごくドキドキするんだよな。こう、ゲームみたいで。
そんな俺たちは、前世知識を生かし、なんと無線を開発したのだ!
元々は、携帯電話を発明したかったよ?でも、メールを送る機能とか、それ以外の機能はつけるのがかなり難しいらしくて、元々あった魔法陣にアレンジを加えた形となる。
……嘘ですすみません、前世知識がいくらあろうとそんな芸当できません。調子乗りました。一度こういうの言ってみたかったんです。
何か、遠くの人と話すことができる魔法陣解かないかな~、とアインの方をチラチラしていたら、大ヒント教えてくれました。
マジ感謝。
俺たちが前世知識で作り上げたものと言ったら、隠れ家くらいなものだ。
特に知識チートをしている訳でもない。それもこれも全てアインが有能すぎるせいなのだが、単純に誰も魔法陣に対する詳しい知識など、持ち合わせていないだけである。
ほ、ほら、洗濯機欲しいな、とか電子レンジ欲しいな、とか言うが、原理が分からない以上、詳しくアインに伝えれる自信がない。
アインが転生者ならよかったものを。
『……聞こえるか?』
「はい」
俺は、手首を耳にあてる。
この声の主は、ギルマスだ。
何故かって?それは普段は袖の中に隠してあるブレスレットに、無線魔法陣が書かれているからだよ!
それはそうと、一体何の用だろう?
『フィンレーと接触する時は気を付けてくれ。どうやら、俺たちの存在をアインから詳しく説明されていないらしい』
「分かりました」
『それと、どんな些細なことでもいい。何か引っかかったことがあったらすぐに報告しろ』
「分かりました」
『じゃあ』
それだけ言うと、ギルマスはさっさと通話を切ってしまった。
俺しか返事はしていなかったが、きっとあとの二人も聞いている。
それにしても、気にかかること、ねえ……。
現時点では、何もない。強いて言うなら、やけに新聞の量が多いな、という事だけ。
あとなんかずっとイライラしているんだよな。
それとフィンレーの暗殺を計画している。
……これ、きちんと録音できればかなり重要な証拠になるんじゃないか?
問題は、その録音をどうすればいいか、という話だが……。
「シロ。交代の時間」
「はいよー」
どうやら、もう時間が来ていたようだ。マリーの言葉に俺は素直に頷き、侍従の恰好をする。
「手の平返し、とんでもないわよね」
「そうだな」
マリーの言葉に、俺は頷いた。
今は止まっているものの、フィンレーがイーストフールに戻ってきてから、マクレーン公爵の評判が落ち始めた。
自領に敵軍を引き入れている、とか、民営の新聞社を襲うように命令した、とか。
実際、マクレーン公爵のしたことは偽善でも、助けてもらったことはあるだろうに。
「許せないんだろうな。あの情報が出回ってからというもの、手の平返しが加速したし」
「あれは、今までの善行でも帳消しにはできないわね」
マリーの表情は、少し複雑そうだ。
実際、身近に善行を積んでいる悪役がいるからだろう。
いい人間なのか悪い人間なのか。――いや、人間じゃないからそこだけは否定できるが。
「ギルマスは、完全に侯爵を蹴落とす気満々だったもんな」
「そうね。気になる情報……」
マリーはそう呟いて、顎に手をついて考えているポーズを取った。
「あの情報以上に、気になるものはないしなぁ」
「クーデターはさすがに気になるわ」
あの情報。それはつまり、マクレーン公爵がイーストフールを支配する気なのだ、という事だ。
正直、直接的な証拠がある訳でもない。
けれど、もし今までの全校が、偽善であったとするならば、マクレーン公爵がこの地を支配した後、自分たちはどうなってしまうのだろうか。
きっと、税率が今より跳ね上がり、かなり苦しい生活になってしまうだろう。
そんなことが、学のない平民でも簡単に分かるように新聞に書いてあった。
更にいやらしいのが、それを直接書かずに、自分で考えてその結論に辿り着くように思考を誘導しているのだ。
これが、マスメディアの恐ろしさ。
ギルマスは、これが事実かどうか、知りたいのだろうか?それとも、他の何か?
「じゃ、俺行くわ」
「がんば~」
今考えても仕方ない。俺は馬鹿だったから、よくわかんねえし。だから、早々に考えることをやめ、マリーから見送られながら侍従の仕事へと向かった。
「おい、茶を持って来い!」
「かしこまりました!」
俺は早々に公爵に捕まり、紅茶を淹れる羽目になった。
侯爵の執務室の隣にある給湯室で紅茶を準備する。その紅茶を、ワゴンで部屋に運び入れ、その場でカップに紅茶を淹れた。
そしてそれを一口飲むマクレーン公爵。
どうやら俺の紅茶の味はお気に召さなかったらしく、紅茶入りカップは俺に投げつけられたが、俺は怯えたふりをしながらも熱いお茶を頭からかぶるという事態を回避した。
そして怯えた演技をしながら、足早に侯爵の執務室から去っていく。
その時チラッと、城の地図らしきものが見えた気が……。流石に気の所為だろ、うん。
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