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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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初代国王の名前

Side Kaname


便りがないという事は、いいことだ。


よくそんなことを聞く。

実際ここ数日は、何の便りもない。月影からも、フィンレーからも。


一体なぜ、ここに月影の蝙蝠がいるのか。

こんなところに蝙蝠を放っていたら、頭痛でとんでもないことになるのではなかろうか。


蝙蝠化は、常時展開するような魔法ではあるものの、蝙蝠からの情報共有は、常時するものではない。

まず、視界がダブる。それだけで立っていられないのに、一気に脳みそに情報を突き刺してくるのだ。


情報を入れるのではなく、突き刺す。吸血鬼が世間で思われているより諜報として機能しない理由だ。

ただ、蝙蝠化があるから、やっぱり諜報は吸血鬼の得意分野であることは否めないが。


吸血鬼の能力をかなり便利に扱うには、相当な訓練が必要になる。だから、うちは他家と比べて衰退が激しいのだ。次代()が半身もちの強力な吸血鬼だし、今代の始祖(月影)も吸血鬼だから、これからは盛り返していくんだろうけれど。


マクレーン公爵も静かだし、てっきり隠れた新聞社を探すものだと思っていた。

捕まえているマクレーン公爵の下手人も、未だに捕まっている。


世話が面倒だし、さっさと開放したいのが本音ではあるものの、どうせマクレーン公爵が、奴らを殺した後、俺たちがした拷問の所為で、かなり弱っていた。しかも、碌に治療もしていなかったため、屋敷についていた時には取り返しがつかない事態になってしまっていた。

なんて残虐非道なんだ!

とか言ってきそうだ。


「ふーん、マクレーン公爵って、現国王の従弟なのか」

俺は、過去の新聞を読み漁りながら、そう呟いた。


「そうですよ。国王陛下の叔母君が先代マクレーン公爵に嫁いだんですよ」

俺のつぶやきに説明を添えたのは、キリノという女性社員だった。


「そうなのか。つまりマクレーン公爵は、王族の血を引いている、という事になるのか」

「そういうことになりますね」

それなら、別に何もしなくともいい生活は保障されただろうに、なんであんな善人ぶったことをしようとしたんだ?少なくとも、少なくない金は飛んで行っている筈だ。


今回のことで、確実にすべてがパーになっているし。


「ますますわからないな……」

「貴族のことなんか、私たち平民には何もわかりませんよ」

「そうだな。よくわからないな」

吐き捨てるように言うキリノに、表面上だけ同調した。俺も貴族の一人だからな、外国のだけれど。


月影の蝙蝠を見つけたし、聞いてみるのも手か。……たまに抜けてるから、今知る必要がない重要な情報とか、伝え忘れとかありそうだしな。


俺も月影自身も吸血鬼だという事を忘れて、琥珀様に料理を振舞った結果、地獄を見せてしまったからな……。

意地でも弟の料理を完食して、傷つけないようにする配慮はさすがだった。ひきつった笑顔で、うまい、とも言っていた。

……その後、琥珀様は数日寝込んだ。溺愛している弟に看病されて幸せそうだったけれど。


まあ、俺が知っちゃいけない情報を聞く訳にもいかないから、フィンレーが知るべき情報は、月影が自分で伝えるだろう。



「マクレーン公爵の話をしてるのか?」

背後から声をかけてきたのは、ダニエルだった。興味津々なその表情は、この会社を護衛することになってから、よく見る種類の笑顔だった。


「はい、そうなんです編集長!マクレーン公爵は、王族の血を引いてますよね?」

「その通りだぞ、キリノ君。昔からウィリアム家と並ぶ、由緒正しき公爵家だ。――ウィリアム家は今からおよそ百年前、この国に見切りをつけたのだがね」

「編集長、百年前も昔ですよ!」

ダニエルの話に、キリノが反論する。しかしダニエルは、チッチッチと人差し指を横に振って、話をつづけた。


「でもこの国の歴史に比べたら、まるで赤ん坊として生まれた瞬間くらい、新しい出来事さ。今ウィリアム家は――セオドア王国という国を建てているのだがね」

「有名な話だな。確か名前の由来は、ロースタス初代国王、セオドア・ドゥ・ロースティスからとったらしいな」

久遠では、最も最近の戒めとなるお話だ。やらかした張本人(御影様)とよく似ている月影は、耳にタコができるくらいこの話を教師から聞かされていた。


婚約者である俺も、必然的によく聞かされた。一字一句、全てそらんじることができるくらいだ。


「ゆ、有名な話なんですね……。知りませんでした……」

「どちらかと言えば、美姫に心を奪われた三王子の末路として、少し出てくるくらいだから、記憶に残りにくいのかもしれないな」

物語自体は有名だが、もしかしたら子供用に、そこの展開だけ省かれたものが出回っているのかもしれない。


「というか、初代国王の名前、ロースタスという名前ではなかったのですね」

キリノが、ふと思いついたように言う。

しかし、超古代国家はステラやクリスタルパラスという国名変更したのも含め、初代国王の名前からとった国名はつけられていない。


「どこの国も一緒だ。久遠は玲瓏(れいろう)様、オケディアはアーディー様、エネリシアはエイダ様。どれも、悠久の歴史を刻む国だとか、理想郷の国だとか、色々と由来があるらしいから、当然と言えば当然なのかもしれないがな」

「さすがにそれは、この私でさえも初耳だ」

「冒険者として、定期的に各地を巡っているからな。どこかでそんなことを聞いた」

実際は久遠でしていた授業で聞いた。そして当時の俺は、キリノと同じことを思っていた。


「私、ロースタスの初代国王は、ウィリアム・ロースタスか、ロースタス・ウィリアムのどっちかだと思ってました!」

「私もだ。ロースタスには、いたるところにウィリアムという名が使われている。だからてっきり……」

「それは俺も知らないな。ロースタスに、そこまでウィリアムと縁強いなんてな。まあ、尊敬していた人の名前とか、一番仲が良かった人の名前かもしれないな」

「メジャーですものね、その名前は」

「案外そんな理由かもしれないな」

それは授業で習わなかったからよくわからない。

ダニエルとキリノは、俺の推察に納得していた。

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