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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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マクレーン公爵

お待たせしてすみません!

Side Unidentified


「クソッ、クソッ、クソ!!」

男が、地団太を踏む。


その男は、白髪が混ざる壮年をやや過ぎた男で、丁寧に撫でつけた髪や、豪華な服は、乱れてしまっていた。


「クソ平民が!一体この私がどれだけ施してやったと思っている?何もしていない第二王子に、何故この私が負ける?何故、何故、何故――!?」

手には質の悪い紙を使った新聞紙が握られていた。

日付は今日のものだ。


豪華絢爛な書斎の床には、同じような紙の新聞紙が所狭しと散っていた。


日付はすべて同じものは一つもない。そして最も古い日付は、一ヶ月以上前のものだった。


最も古い日付の新聞――それはいくつかある号外のうち一つだ――の内容はマクレーン公爵家の真実を書いたものだ。

当初は、あまり信じられていなかったそれも、段々信じられるようになっていき、今ではほとんどの平民はそれは真実だと信じ切っていた。


「それに、あいつらもヘマを打ちやがって……。いつまであの忌々しい第二王子を殺せない!?後ろ盾もない王子など、葬るのは簡単だろう!?」

そう言って、男は机に勢いよく拳を打ち付ける。

鈍い音が、部屋中に響く。


「ああ、使えない。闇ギルドの連中も使えない。この私がせっかく雇ってやったのに、失敗?それに、邪魔な新聞社もいまだに残っている――。使えない、使えない、使えない!!どいつもこいつもなんで簡単なお使いすらこなせない!?」

この男の敗因は、フィンレーの背後にいる者を見破ることができなかった、というのが大きいだろうが、そんなこと、気づくことはない。


「あの王子が王になると、今までのように甘い汁が(すす)れなくなるだろ……」

横領癒着脱税なんか当たり前。質素倹約な生活を、大々的に公表しつつも、裏では贅沢三昧。

それが、貴族のたしなみだ。


当然、平民は私を崇敬し、貴族は私を褒めそやす。

妻はそんな平民を内心で嘲笑うし、子供たちは平民を家畜としか思っていない。


それが、()()()()の貴族だ。

あの第二王子は、そんな貴族的な生活をしていない。

平民と同じ餌を食らい、平民に慣れ慣れしく接され、威厳というものをすべて失う。


あの第二王子は、家畜になりたいのか?


やはり、家畜の血が入っている王子は考えが違う。



男は、この国の第二王子を嘲笑う。何とか、自分の精神衛生を保とうとしている行動であるという事に、男は気づいていなかった。


この国の王子は三人。その中で、第一王子と第三王子は王妃の子だが、第二王子は国王のお手付きとなったメイドの子だ。

その後、メイドは第二王子を生んだがすぐに死亡。第二王子は、今も自分の本当の母親を知らない、というのは貴族の中ではもっとも有名な笑い話だ。



第二王子が、貴族の中で軽んじられるのも、それが理由だった。



ただ、それでも女に人気だったのは、もはや皮肉でしかない。何せ、国王すら惑わせるほどの美貌を持つ母親。その容姿を受け継いだのだ。


だから、太って醜い第一王子と第三王子より、程よく痩せていて美形な第二王子に群がる女が多い。

どうせ、第二王子に嫁いだとしても、王家の血を引いた子供を手に入れることができるのだ。あとは、政治的手腕だけ……。


だから、この国で最も美しいと言われる女性である、ヴェネッサ・フォン・ミラーが婚約者になるのも、仕方ないのだろう。



それを元々、この男はあまりよくは思ってはいなかった。だが、その女にはいい思いをさせてもらっていた。

普通なら、王家に嫁ぐ女性はだれしも純潔性を大事にするものだが、あそこまで火遊びを楽しんでも許される環境も、なかなかない。


男の妻も、男には逆らえない。

更に、男は若いメイドたちに手を付けていたのだが、その中で妊娠した、と訴える者もいた。


すぐに、そう言うメイドはいなくなってしまったため、誰もそれを覚えていないが。

どうせ、いつかはこの男の化けの皮ははがされる運命になっていただろうが、そんなことは、男は知らない。



ただ、このことが事実だと、広く知られるようになったのは、少なくともその元メイドたちの証言が手助けしていたことくらいは、想像できた。



コンコンコン


ノックの音が響く。男は、さっと身なりを簡単に整え、溜息を吐いてドアの外にいる人物に呼び掛けた。


「失礼します」

そう言って入ってきたのは、老齢の執事だ。銀色のトレーの上に、紙をのせてそこに立っていた。


「なんだ」

「旦那様、シュトライ村から抗議文が――」

「クソッ、誰も彼も平民の癖してこの私を見下しやがって!」

男は、癇癪を起した。それは、誰にでも優しい、清廉潔白な公爵様、という雰囲気は微塵もなかった。


「おい、あの男を連れてこい」

「あ、あの男……ですか?」

「あの男はあの男だ!さっさと連れて来い!!」

「し、失礼しました!!」

男は、老執事が持っていた金属のトレーを叩き落し、そう叫んだ。

老執事は、悲鳴のように謝罪を口にして、すぐに男が言う、あの男という人間を、探しに行った。


それから、男は執務室で暴れた。書類が宙を舞い、インクが零れ、机と床が黒く染まる。

それでも、男は止まらない。


この抗議文が届いたのは、一度や二度ではない。もう何度も、送り元はバラバラで届いていた。

それが何を意味するのか。もはやこの場には、男を止めるものは何もない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



それを天井裏で見ていた俺は、冷めた目で男を見ていた。


男の名は、ビルバーツ・フォン・マクレーン。


俺は、今ペスケ・ビアンケの依頼で潜り込んでいる。

事前情報からの乖離に、俺は戸惑いしかわかなかった。


だが、これは確実に失脚するな、と前世知識から想像する。

いや、失脚して貰わなきゃ困るか……。


俺は、そんなことを思いつつ、今はひとまず情報を集めることにした。

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