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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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清廉潔白勝負

Side Finlay


翌朝。俺は穏やかな目覚めを体験していたが、それと同時に騒がしい所もあった。


そう、マクレーン公爵家だ。

要が向かった新聞社――民衆新聞の朝刊に、清廉潔白の代名詞、マクレーン公爵家の衝撃的な真実!という興味を引かれる見出しと共に、衝撃的な事実が掲載されていた。


それは、マクレーン公爵家の清廉潔白は、作られたものである、というものだ。


元々、マクレーン公爵家が清廉潔白だと言われたのは、あの悪名高いチーズル帝国の手先を、私兵で追い返したことからだった。


この国の貴族は、私兵を領地の平和のためには使わない。

だから、高位貴族であるマクレーン公爵家が、領地の平和を守るために私兵を投じたのは、かなり衝撃的だったのだ。


当然、これに民衆はいい反応を示す。

領主が領地の治安維持に乗り出ているという事は、自分たちの暮らしが安全になる、という事になるからだ。


だから、この先もマクレーン公爵家が賊を追い払う度、人々はマクレーン公爵家を称賛した。


他にも、よく炊き出しを行っていたり、孤児院に多額を寄付していたりなど、新聞を見る人々も見ない人々も、マクレーン公爵家の美しい心は、誰もが知っている。


それが、全て嘘だった、という記事を見て最初は誰もが信じずに新聞を丸めて捨てた。

しかしその中には、民衆新聞社が襲われた、という文言が目に入った者がおり、ただの好奇心でその民衆新聞社を訪れることにした。


すると、そこは確かに襲撃にあったように、破壊された正面入り口があったのだ。


それを見た民衆は、また一人、また一人と、実は記事に書かれていたことは事実なのでは、と疑い始めた。


末尾に、我々はフィンレー第二王子殿下を支持いたします、という文言があったのも、マクレーン公爵家への疑惑を持たせる要因になったかもしれない。


しかし、フィンレー第二王子殿下は、一度は民衆に期待され、そして失望された王子。

まだ、マクレーン公爵家の方が信頼度が上なのは、仕方ないことだった。



「おはよう」

だからこそ、俺は模範的な生活をする。


朝早くに起き、朝食を食べた後は散歩する。出会った使用人たちとは愛想よく話し、メイドに迫られたとしても、婚約者に申し訳ないと、絶対に応じない。


散歩が終われば、乗馬やダンスの練習をする。


そして昼食を取り、その後は座学。


アフタヌーンティーの時間まで続け、その後は本を読んだり街に降りて民衆と触れ合ったり。

たまに公務として、孤児院の子供たちと戯れることがあった。


その後は王族の仕事で、山積みの書類を片付ける。


一体、どれくらいため込めばこうなるんだ、という文句がでそうになるほどの書類を一部片付け、夕食へ。


その後は寝る直前まで書類と格闘し、就寝。

ケイとヌルに守られてぐっすりと眠り、また翌朝起きる。


そんな生活を続けること一週間。


最初は腫物に触るような反応だった民衆も、そこそこ打ち解けてきた。


元々、心が折れる前もこうしていた。だから、俺の苦しみを分かってくれ、慰めてくれたりまた見直してくれたりする者が多く、とてもありがたかった。


前も、こうして民衆に問題にならない程度に愚痴ってストレス発散すればよかったかな、と反省もした。

段々と顔色が悪くなる俺を見て、彼らは心配してくれていたらしいが、俺は王子で彼らは平民。

この国では、王族の機嫌を損ねたら、死刑一択だ。そのため、言いたくても言い出せなかったらしい。


そんな優しい彼らと共に、食事をとることもあった。

その際、俺は留学先のセオドアのことについて、色々と話した。


そこには学園というものがあり、一ヶ所に同年代の子供を集めて、同時に授業をする場所であること。

セオドアの第一王子は唯我独尊を地で行く王子であるという事。

彼の婚約者は素晴らしい立ち振る舞いにより、同年代の貴族子女からは尊敬され、憧れの対象になっている事。

そして彼の専属護衛はステラという国の軍人であり、そしてこの国の冒険者が束になっても敵いやしないほど強い事。


民衆は、俺の話を興味深そうに聞いていた。

俺は、それが嬉しくなって、更に話す。

ただ、冒険者の話の下りで、実際に自分が強いという自負がある冒険者たちを怒らせてしまったが、同時にそんな奴がいるならぜひとも手合わせしたいなぁ、と血気盛んに話していた。

男性恐怖症らしいから、多分不戦勝することになるだろうけど。流石に、アインの名誉のためにそこは言わないでおいた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そんな毎日を過ごし、早二週間。


民衆は皆、マクレーン公爵家への不信感を、内心に秘めるようになっていた。


案外早かったな、と思いつつ話を聞いてみれば、彼女――冒険者ギルドの食堂のおばちゃんは、旦那が民衆新聞社に勤めている編集担当らしい。


元々、近々誰かが来る、という話はぼんやり聞いていたものの、どうせすぐにやめるでしょ、と思いすぐに忘れてしまっていたとか。


そして今から二週間前――俺がイーストフールに帰ってきた初日のこと、A級冒険者のイアン・ネルソンという人物が新聞社の護衛をするとかで、やってきたらしい。


その時は、興奮して彼を質問攻めにしていたが、その夜、実際にマクレーン公爵家の手先が現れたらしい。

それをあっという間に成敗し、社員一同無傷で守り切った。

更には、誰の手先か、というのもスマートに聞き出し、颯爽と誰かを守るためにどこかに行ってしまった。


翌朝帰ってきたため、拘束状態だったマクレーン公爵家の手下と一緒に、別支社へと移ったらしい。


その話を聞いていたから、彼女は元からマクレーン公爵家に疑念を抱いていたらしい。


ここら辺一帯は、彼女がそのことを話したおかげで、マクレーン公爵家に疑念を抱くようになったのだとか。


「そうなんだな、それはありがとう」

「いいってもんよ。それに、あたし知ってるんだからね。イアンという色男と、あんたが一緒にいるところをさ!」

そう言って、おばちゃんは俺の肩をバシバシ叩く。こういう、気安い関係が、今はなんだか落ち着く。


「俺が連れてきたんだからな、当然だろ。だが、あの人結構愛妻家だから、ここに来るのも物凄く渋ってたんだ」

「あらそうなの。うちの旦那も、あれくらいイケメンでかつ、愛妻家だったらなぁ」

「でも、愛してるんだろ、旦那さん」

「当然さ!もう何年連れ添っていると思ってるんだい」

そう言って、おばちゃんは笑う。俺も一緒に笑う。


「にしてもあんたも、随分と色男に育ってなぁ。今の婚約者とはさっさと別れて、もっと別嬪でいい子を嫁に迎えるんだよ」

「これでも政略結婚だから、難しいんだ」

「そうなの、王族や貴族は大変ね」

「それでも、いい思いはさせてもらってるから、それくらいは働かないとな」

「あら!じゃあもっとこの国のために頑張ってちょうだい!――ほら、これサービスだよ!」

そう言って、おばちゃんは鶏もも肉のステーキを持ってくる。


「いや、いいよ。これ高いだろ?別のものをサービスとしてもらうから」

「いーや、変な気づかいはよしな。他の客から、たんまり巻き上げるから、問題ないってもんだよ!」

おばちゃんは、強かに笑った。過度な遠慮は失礼にあたる。


「なら、遠慮なく……」

俺は、その鶏もも肉のステーキを食べた。その味は、城で食べるよりも、美味しい気がした。

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