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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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裏方の要

Side Kaname


「ふーん、マクレーン家ねぇ……本当か?」

「ああ、本当だ!証拠もある!」

そう言って、隊長らしき男は、自分の懐を探るように言った。

俺は、仕方ないので懐をまさぐった。しかし、それっぽいのはなかなか見つからない。


「油断したなァ!」

「――あ」

そう言って、男は俺に魔法を、至近距離で顔面に叩き込んだ。

火属性魔法が、俺に炸裂する。見事成功した魔法に、満面の笑みを浮かべる男。


「――何かしたか?」

「は……?」

俺が、全くの無傷であることに、男は茫然とした。


「そんなしょぼい魔法、誰が怪我するんだ?」

俺は、笑顔を浮かべる。別にやせ我慢ではない。一瞬で水属性魔法を使い、火を消した。


「一体誰を相手取っているつもりなんだ。――まあ、俺はこんなところにいるとは、思えない人物だろうが、お前らが考えていることくらい、お見通しなんだよ」

「ぐ……」

俺の言葉に、男は呻いた。他の襲撃者も、悔しそうに俺を睨んでいる。


「さて、このまま拘束させてもらう」

「か、監禁だぞ!」

「いや?威力業務妨害だしな。俺は冒険者として、依頼を達成する必要がある」

月影に依頼をしてもらってよかった。元々、冒険者ギルドという場所が苦手なのに、わざわざ自ら出向いている。

人に任せればいいのに。


そうは思ったものの、結局自分でやる方が、情報が漏れにくいため、自分でやるしかない。月影はあまり、俺とのつながりを人に話したくなさそうだ。

一発でアイン=月影がばれるからだろうが。


「ここを守れ、という依頼だからな。つまり、やりすぎなければ、何をしてもいい、という訳だ」

そう言って、俺はこの部屋から外に出る。


「おい!どこに行く気だ!」

「少し用事がある。――忘れなければ、翌朝に飯でも持ってきてやるよ。流石に、死なせる訳にはいかないからな。よかったな、ここにいたのが俺で。別のやつだったら、お前らの頭は、胴体から泣き別れだったかもな?」

「……ヒ」

俺の笑顔での脅しに、奴らはようやく黙った。


部屋の外に出て、階段を上る。一階には、俺を心配そうに見つめる社員たちがいた。


「大丈夫ですか……?」

「ああ。――この部屋を開けるなよ、危ないから」

「分かりました!」

「それにしても、激しく壊れたな……」

俺は、完全に破壊された入り口のドアを見て、溜息を吐いた。


「元々、老朽化していたので……」

「そうだな。――直す他ないな」

「ここも危険だ。よし!支社に移動しよう!そっちは、まだ場所がばれていない筈だ!」

「こことは別に、会社があるのか……。そっちがいいな。流石に、これ以上危険に巻き込む訳にはいかない。いくら俺でも、完全に守り切れる自信がない」

戦い、たとえ勝ったとしても、建物が崩れてしまえばすべてが終わり。そして、俺はそこまで丁寧な戦い方をしている訳でもないため、建物は確実に壊れてしまうのだろう。


「じゃあ、俺は行く場所があるから、また」

「待ってください!流石に怖いです!」

「なら、罠をおいておくか――爆雷。ここから先に出たら、下手したら死ぬ。だから、ここには今夜、誰も入ってこられない。今夜は安心して眠るといい」

そう言いながら、俺は横一線に剣で跡をつける。


俺は、月影が習得している精霊剣術。それの一部を習得している。

俺が使っている剣は、偶々調査で入った遺跡で見つけた魔剣だ。この剣は、風属性の攻撃の威力を上げてくれる。


それもあって、俺は好んで風属性の剣術を使っている。

少し扱いにくいのが難点だが、汎用性は高い。


「じゃあまた明日」

「あ!」

俺は、さっさと新聞社から離れ、フィンレーがいる王宮に向かった。


フィンレーにつけていた蝙蝠から、現在位置を割り出し、急ぐ。蝙蝠から情報を貰うのに、かなり手間取ってしまった。いつ暗殺者が来てもおかしくはない。

蝙蝠自身も、少しは戦えるから、俺が駆けつけるまではきちんと持ちこたえれる筈だが。


「よし、着いた。――間に合ったようだな」

俺は、窓の外に待機した。いつでも、中に入ってこれるように。


中では、フィンレーがすっかり寝入っている様子が見える。

すると、そこに暗殺者が来た。

いかにも怪しい人間だが、なんだかやけに戸惑っている。もしかして、暗殺には慣れていないのか?俺も、こそこそなんてあまりしたことないが。


ひっそり息をひそめていると、フィンレーが起きてしまった。


暗殺者は、驚いて咄嗟にフィンレーを拘束した。俺は魔法を構築し、いつでも発動できる状態にしておく。


「おい、それを置け。今貴様が何をしようとしているのか、分かっているのか!?」

「――どうやら、お前が生きていると都合が悪い人間がいるらしくてな。だから、死んでくれよ」

暗殺者はフィンレーに刃を向ける。俺は、その刃を振り下ろす前に部屋に侵入する。そう思っていたのだが、暗殺者は一切フィンレーを殺そうとしない。


「俺を殺しても、何の意味もないぞ……。この国は、久遠によって攻め滅ぼされる。きっと、お前も、そしてその依頼主も、きっと久遠によって殺される」

フィンレーの言葉は正しい。久遠は決して、今の王族を許さない。今の王族がいるのは、唯一まともな王になれる可能性がある、フィンレーがいるからだ。


「そうなる前に逃げればいいだろ」

「逃げ切れればいいがな」

無理だな。月影レベルでない限り、本気で追う久遠からは逃げることはできない。

俺は、特に久遠――皇家から探されていないため、こうして平穏に過ごせているくらいだ。


フィンレーをすぐに殺せない程度の暗殺者が、久遠を敵に回して無事でいれる訳がない。



――にしても、遅いな……。



事前に呼び出していた人物が来ないことに、俺は面白くなかった。


「お前を殺せば、法外な報酬を貰える。だから――」

「待て」

「なんだ?命乞いしたくなった――」

「法外の報酬ってなんだ」

「は?」

なんだか、雲行きが怪しくなってきたな。


「この国には、法外の報酬を払えるくらいの金なんか、ない筈だ。だって、収入と支出が全く釣り合ってない。それに、大臣たちが横領して、そもそも帳簿すらあっていないというのに……」

「ま、待て。まさか俺は――」

「お前、法外の報酬と言われたが、どれくらい払うと言われたんだ?」

「は?そんなん金貨百枚に決まってるだろ」

「……はあ」

「お、おい!なんだよ!」

フィンレーはすっかり呆れてしまった。俺も、呆れている。

金貨百枚なんか、立派な家が建つだけだろ。


なんだか、暗殺者はフィンレーを殺さなさそうだな。


そんなことを思っていると、ドアが爆発するような音を立てて開かれる。


そこにいたのは、俺が手紙を送った相手だ。

蝙蝠に手紙を届けさせ、フィンレーが暗殺者に狙われていることを知らせる。


フィンレーの過去を洗ったとき、出てきた騎士だ。手紙を届ければ、来ると思ったが、ここまで遅いとは。


もしかして、蝙蝠が道に迷ったのか?

いや、まさかな……。


その後、俺が手紙を届けさせた蝙蝠が、フィンレーの顔にダイブしたり、案の定迷子になっていたのを知り、頭を抱えることになった。

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