表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/282

王太子、マティアスの毎日

マティアス様の日々のルーティーンは決まっている。午前は剣術や乗馬の訓練をし、午後は魔法の訓練や、教養を養う。王太子なため、更にハイレベルなものを求められる。


日々忙しそうにしている。そんなマティアス様の一助になりたいと思ったが、どこにもそんな隙はないようだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さて、今日は世界の情勢について学習していきたいと思います。世界の情勢は日々変わるものですからね。最近で有名なのは、「星の革命」でしょうか」

そう言って、マティアス様に勉強を教えている講師が僕の方をチラッと見た。


星の革命は、九星が由来だ。大国の一つであるオケディアが革命によって倒れた、というニュースは、世界に激震が走った。


つい最近までは、他ならぬ九星がオケディアの手の者として他国を侵略していたのだ。オケディアの忠犬だと思っていた矢先の革命である。余計に話題になるだろう。



「そもそも、何故ステラは国際的な立場があるんだ?一目置かれる存在なのは分かるが、まだ建ったばかりの国だ」

「それは……大国リセーアスを始めとする影響力の強い王たちがステラを一目置いているからです。なぜ置いているのかは……私にもわかりかねます」

「そうなのか。父上も、その一目置いている王だよな?」

「そうでありますね。何故、陛下はあの新興国を重要視していらっしゃるのでしょう?」

それは、貴族では知りえないことだ。それにしても、セオドアの王が知っているのは、少々意外だ。


オケディアが腐っていたのは、軍であって政府ではない。政府は無能だっただけで腐っては決してなかったのだ。それでも、大国であるオケディアを統治する者。ある程度の口の堅さもあった筈。それは他の国についても同様の筈。まだまだ国としては新しめのセオドアが、どこで知ったのかが気になる。



――まだノア兄さんですら知らない筈なのに……。セオドアの王はやり手とは思ってはいたけれど、ここまでとは思わなかった。



「それは後で父上に聞くとしよう。講義を続けてくれ」

「はい、わかりました。まず、この世界であまり残虐非道なことが行われていないのは、久遠という、魔族国家があるからです」

「久遠?確か、世界で最も面積が大きい?」

「そうです。ちなみに、魔族は基本その国出身です。違う国出身もいるようですが」

「いるのか」

「らしい、というかいます。王太子殿下の護衛もそうですよね?」

「僕は、どこで生まれたのかはわかりません」

「恐らく、ステラ出身でしょう。異能力は、ステラ出身しか発現しません」

ふーん、とマティアス様が頷いた。



「話を戻しますが、今も昔も変わらないのは、久遠一強な所でしょう。久遠は鎖国気味で、あまり表立って動くことはありませんが、過去にあまりにもやりずぎた国は、久遠の王族がが直接制裁に動いたことがあります。

王太子殿下も、ないとは思いますが、あまりにも残酷な政治を行っていると、久遠からの制裁が来ます。お気を付けください」

「ああ。まずそんな政治をすることはないが。その忠告を心に留めておこう」

「感謝いたします。では次に、セオドアと世界の関係です。セオドアは、今現在、セオドアの西側に位置するリセーアス、ステラとそれぞれ同盟を組んでいます。

他にも、セオドアの周辺国家とは、不可侵条約を結んでおり、頻繁に戦争は起きません。しかし、仮想敵国も多数存在しており、決して平和な国とは言い難いです」

「ああ、そうだな。所で、リセーアス、ステラとは確か、不可侵条約の他、一方の国が一方的に戦争を仕掛けられたら、もう一方が同盟国の味方として援助をすること。

それと、一方が戦争をしている場合、もう一方は中立または味方であるを確約すること。


それに加えステラには九星の存在を認め、それを軍事的に使うことを要請しないこと。

そして最後が不思議なんだが、皇月影の保護を何よりも最優先にすること。これに何の意図があるんだ?皇姓は確か久遠の王族ではなかったか?」

「その通りです。私も謎ですが、向こうから提示され陛下がお認めになった内容です。双方に何かしらのメリットがあるのでしょう」

「デメリットは確かにないが、特に目立ったメリットもない。しかし、これは父上も教えてくださらなそうだ」


同盟の内容は僕も知っていた。セオドアには、提示するメリットは皆無とは言い難いがかなり薄い。


皇月影は行方不明の久遠の王族で、最も彼を保護したいのは久遠の筈だ。ノア兄さんのことだから、久遠に媚を売りたい、という理由で月影の保護を同盟の内容に入れるとは思い難い。

だとすれば何故か。恐らく、月影がそうだと知ったからだろう。今行方不明な理由もある程度推測しているのかもしれない。


まあ、一万分の一もないが或いは、セオドアを試しているのかもしれない。そうだとしたら色々と疑問はあるが、その線も一応思考の片隅にでも入れておこう。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Matthias


皇月影、か。父上にダメもとで聞いてみたが、やはり教えてくださらなかった。叔父上にも聞いてみたが、久遠の第九魔王子で、生粋の天才としか知らないらしい。後は、先祖返りの吸血鬼という事だ。

身近にも吸血鬼はいるが、年が違いすぎるし、そもそも出身地はほぼステラで決まりだ。別人(?)なのだろう。


「アイン、皇月影について知っていることはないか?」

「すみません。僕も、シリルさんと同じくらいしか知りません。追加できる情報とすれば、ステラに皇月影の論文があるという事ぐらいです」

「それは本当か!?」

まさかの情報に、俺はアインの肩をガシっと掴む。


「え、ええ。本当です。軍の施設にある本棚に隠れるように。中を見たこともありますが、何者かの書き込みもありました」

「書き込み?」

「ええ。色々と。書き込みの内容から判断すると、皇月影が書いたものかもしれません」

「なぜ、そんなものがステラにあるんだ?」

もしそれが本当だとすると、皇月影はオケディアにいたことになる。久遠とオケディアは遠く離れている。他国の王族が人知れず軍の中にいた……。オケディアは大丈夫なのか?……ああ、ダメだったから革命されたのか。


「シリルさんがおっしゃっていましよね?皇月影は精霊学研究の第一人者であるという事を。そして、僕たちの人体実験には、その精霊学が多用されています。恐らく、実験の主要メンバーの一人が皇月影なのでしょう。

――もしかしたら、ノア兄さんはそのことをどこかで知ったのかもしれません」

ああ、それでか。ノア王は人体実験が原因の弊害を直したいのかもしれない。それで、皇月影の保護。一応筋は通る。


「人体実験によって起こった弊害はないか?」

「ありませんね。別に人体実験を受ける前に戻りたい、とかもないです。今の方が強いので」

「そうか……。ますます謎だな」

保護、という言い方も謎すぎる。もし保護した後、リンチするのであれば、保護という言い方はあまり相応しくない。捕獲が正しいだろう。前に父上たちが話していた内容を思い返すに、オケディアの人体実験はあまり褒められたものではなかった。だからこそ、被害者であるステラ王と久遠の第九魔王子では、前者の方が立場は強い。


「いくら考えても分からないものは分からないな。情報がなさすぎる」

「そうですね。僕の方で少し探りを入れてみます」

「ああ、任せた」

有能なアインのことだ。情報収集はお手の物だろう。ゲームの中でも、離せないが情報量は桁違いだった。あまり『白愛』について知らなかった頃はかなりお世話になった。

その情報収集スキルで、皇月影について調べたら、かなり情報が出てくるだろう。俺はその後、皇月影を頭の中に思い浮かべることはなかった。



しかし、そんな俺の考えはとても甘かったことを思い知らされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ